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IoT時代の組込みソフトウェア開発におけるALM導入による企業競争力強化

デバイスの機能が一層高度化する中ますます重要な役割を担う組込みソフトウェアの開発において、今、企業に求められる対応とは。

IoT時代の組込みソフトウェア開発に求められるのはもはや高い開発効率と品質・信頼性だけではない


製造・流通本部
マネジャー
松浦 裕之

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X.0を味方につける

2011年にドイツで誕生したインダストリー4.0というコンセプトに端を発し、IoT化が急速に拡大し、今後も加速度的に進んでいくことは誰もが疑う余地は無いでしょう。その波は、設備の遠隔監視を通じた予測保全(*1)や、AR (拡張現実)技術を活用したフィールドワーカー作業の効率化(*2)などといった、企業内活動のデジタル化・スマート化にとどまらず、私達の身近な生活の中でも実体験として感じられるようになりました。
いくつか例を挙げると、服飾店舗では顧客が商品のタグをショッピングカート上のセンサーにかざすと搭載されたモニタ上に商品情報や在庫状況、コーディネート例や商品レビューが表示され(*3)、雪国ではGPSを搭載した除雪車が除雪した経路を地図上で可視化する市民サービスが提供される(*4)など、私達の生活の利便性や快適性を向上するものとしてIoT化は広く認知されています。


企業内活動や私達の生活により良いサービスを提供するために、デバイスの機能はより一層高度化され、それに伴い、組み込まれるソフトウェアが担う役割の重要性は増し、大規模化・複雑化の一途を辿るばかりです。


その一方で、企業は製品を低コストでタイムリーに市場に投入するため、その開発現場では、納期遵守は当然のことながら、限られた期間・リソース制約下での開発効率の向上と、より高い品質・信頼性の両立が求められています。更には、車の自動運転技術のように、デバイスが外界や人・モノ同士とつながり情報を授受しながら自律的にその機能を発揮し、人の生命・財産を守る役割を担うようになると、企業は製品の安全基準の遵守と共に、有事の際に、そのアカウンタビリティ(説明責任)を果たすための備えも必要になります。


*1)「腐食管理 高度なデジタルソリューションにより、損傷後の解決ではなく、事前検査やリスクの予測管理を実現」
https://www.accenture.com/jp-ja/service-accenture-corrosion-management-services
(最終閲覧日:2019年1月27日)

*2)「インダストリーX.0事例紹介」
https://www.accenture.com/jp-ja/Careers/digitalindustryx-interview
(最終閲覧日:2019年1月27日)

*3) 2017年8月25日付 流通ニュース 「ジーユー/横浜に先端IoTを導入した大型店オープン」
https://www.ryutsuu.biz/store/j082501.html
(最終閲覧日:2019年1月27日)

*4) 2018年8月29日 「市民とつながる行政サービス」
https://www.accenture.com/jp-ja/insights/digital-citizen-platform
(最終閲覧日:2019年1月27日)

IoT時代の組込みソフトウェア開発において企業が果たすべきアカウンタビリティとは

さて、ここでいう「企業が果たすべきアカウンタビリティ」とは具体的にはどのようなことを意味しているのでしょうか。それは以下のようなことが、企業として説明可能であること、と言えると考えられます。

  • 製品(システム全体)としての振舞いを満たすためのシステム要件が、ハード、エレキ、ソフトといったサブシステム並びに各サブシステムを構成するコンポーネントやユニットレベルに分解され、それらに対する機能要件として割り付けられ、それらの設計仕様の確からしさが検証されていること。

  • コンポーネント・ユニットの開発結果が設計仕様を満たしていることが検証されていること。

  • 各サブシステムが機能要件を満たしていることが検証されていること。

  • 各サブシステムを組み合わせたシステム全体が当初のシステム要件を満たし、製品として振舞いの妥当性が確認されていること。

  • 検証・妥当性確認の過程や、製品の市場投入後に抽出された不具合や変更に対する解析・対応の経緯とその結果が明らかになっていること。

「企業として」説明可能である、ということは製品の要件分析・設計・開発・検証・妥当性確認・不具合対応・変更対応に実際に携わった当事者でなくとも客観的な事実(エビデンス)をもとに説明できる必要があるということも同時に意味します。従い、企業は製品のライフサイクル全体を通して、その要件分析から設計・開発・検証・妥当性確認・不具合対応・変更対応に至るまでの情報を、トレーサビリティ(因果関係・関連性)を持った形で一元管理し、必要な時にいつでも参照して説明できるケイパビリティ(能力)を備えておく必要があるのです。

企業のアカウンタビリティを果たすイネーブラーとしてのALMという考え方とその導入メリット

製品のライフサイクル全体を通して一元的に情報を管理する、ということはPLM(プロダクトライフサイクルマネジメント)の仕組みそのもの(*5)にほかなりません。その管理対象をアプリケーションやソフトウェアとしたものをALM(アプリケーションライフサイクルマネジメント)と呼びます。その仕組み自体は決して新しいものではありませんが、IoT化が急速に進み、今後もその加速的成長が明らかである中、より一層導入の必要性が高まっています。ALMという仕組みの導入は、企業としてのアカウンタビリティを果たすケイパビリティを持つための備えという、いわば守りの側面以外にも、攻めの側面では以下のようなメリットを企業にもたらします。


  • 要件に対する設計・実装・検証・妥当性確認の抜け漏れを抑制し後戻りを減らすことができる


  • 不具合の原因箇所の特定がしやすくなり対策を早めることができる


  • 不具合の影響箇所の特定がしやすくなり対策の抜け漏れを抑制し後戻りを減らすことができる


  • 変更に伴う影響箇所が特定しやすくなり対応の抜け漏れを抑制し後戻りを減らすことができる


  • 不具合・変更に伴う影響箇所が特定しやすくなり回帰テストの範囲を最適化することができる


  • 製品の要件に対する設計・実装・検証・妥当性確認並びに不具合・変更に対する経緯をノウハウとして蓄積することで次の製品への教訓として活かすことができる


つまり、ALMの導入は、開発リードタイムと開発コストを抑制し、価値ある製品を低コストでタイムリーに投入しうるという攻めの側面と、その開発の妥当性・合理性を説明しうるエビデンスを残すという守りの側面の両面を併せ持つため、まさにIoT時代の組込みソフトウェア開発企業の競争力強化に直結するものと考えることができるのです。


*5) 「PLMによる製品開発・生産バリューチェーンのデジタル化」
https://www.accenture.com/jp-ja/insight-digitization-product-development
(最終閲覧日:2019年1月27日)

ALM導入成功の要諦 - 先進企業での取組み姿勢に学ぶ -

それでは、これからALMを導入するには何から始めれば良いのでしょうか。ここでは先進企業が導入の初期段階で特に強く意識されていた点について、いくつか例を挙げて紹介します。


  • トップダウンで動機付け、ボトムアップで小さく地道に展開
    PLMプロジェクト成功の要所(*5)同様、ALM導入の必要性・重要性を企業の経営戦略と紐づけて明確にし、全社取り組みとして位置づけ推進する必要があります。その上で、戦略的な目的・目標に従ったテーマと優先度、並びに各テーマの依存関係を整理し、導入ロードマップに落とし込みます。その後、ロードマップに従い、ボトムアップ(現場主導)で小規模に導入を開始し、小さな成功体験を積み重ねながら地道に定着していくことで、次テーマへの展開の際、成功の前例があることで安心感を持って取り組むことができます。

  • プロセス成熟度・能力評価モデルを参考に自社のプロセスを作りこむ
    CMMIやSPICEなどには、組織がプロセスをより適切に管理するケイパビリティを持つことを目的とし、ソフトウェア開発において企業が最低限行うべき基本的な活動の観点・成果が体系的にまとめられています。ただし、それらは教科書的なものであり、そのまま採用し実行することはできません。従い、企業のプロセスの中にそれらの要素を組み込み、自社の実行可能なプロセスとして作りこむことで、比較的スムーズな導入が可能となります。また、これらは欧米企業で積極的に導入が進められている考え方なので、オープンイノベーションによる協働開発や、一部業務のアウトソースをする際の企業間のチェックリストとして活用が可能です。

  • 定期的な振り返りを通じてプロセス改善ポイントを確認
    作りこんだ自社プロセスの実行結果に対し、定期的に振り返りを行い、出来ている部分とそうでない部分の確認を行います。出来ていない部分は改善ポイントとし、次の実行サイクルで対応を行います。このサイクルを繰り返してプロセス適用のレベルを組織として上げていくことが重要です。この際、出来ていないことに目を向け過ぎずに、出来ていることにも焦点を当て、出来ることをより増やせるような改善ポイントを見出すことも必要です。

  • データ登録はアウトソースの活用やツール・RPAによる自動化も視野に
    組込みソフトウェアのライフサイクル全体にわたる情報のデータ化とシステム登録作業を限られた期間・リソース制約下で日々の業務に追われている現場に行わせるのは非常に難しいと思われる企業も多いのではないでしょうか。その際、データ登録作業をノンコア業務と位置づけて現場と切り離し、低コストのアウトソースを活用しているケースもあります。データ登録作業が定型化できる場合にはツールやRPA(Robotic Process Automation)の活用によりデータ登録作業自体を(半)自動化することも可能です。
    活用可能な体系だったデータ登録にはそれなりの労力・コストを必要としますが、ALM導入にはそれを補って余りあるメリットがあるのです。


以上、先進企業において強く意識された点について紹介いたしましたが、先進企業でもその取組みの対象は限定的であり、企業全体への浸透・定着には引き続き地道な活動継続が必要であり、一朝一夕には行きません。

だからこそ、ALM未導入の企業はその必要性・重要性を強く認識し、今後の企業競争力強化・さらなる成長のために今すぐアクションを取るべきなのです。

アクセンチュアではALMの導入をお考えになる企業のトランスフォーメーションを支援しています。

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