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Smart Manufacturing
顧客起点のものづくり

ますます多様化し先鋭化する顧客ニーズ。それに応えるために、製造業各社はプッシュ型の製品販売型から顧客起点の企業への変革が求められています。

先鋭化する顧客ニーズ

デジタルコンサルティング本部
モビリティ サービス グループ統括
マネジング・ディレクター
丹羽 雅彦

モノが売れない時代と言われています。筆者の周辺でも若者を中心にモノへの消費が減っていると実感できます。子供に欲しいものを問うてみても「特にないです」と返されることが多くなりました。しかし話を聞いてみるといわゆるコト消費にはお金をかけ、イベントのアイテム購入など体験を豊かにするための商品購入は躊躇していません。モノが売れないのではなく、買いたい商品が先鋭化して自分に合ったモノしか欲しくない、もしくは企業の提供する製品のままでは買いたい商品が存在しないのです。このような環境下において製造業は大量生産ではない、顧客の多様なニーズに合致する製品の提供が求められています。

十人十色のニーズを満たすため、製造業はマスカスタマイゼーションに取り組んできました。多くの企業ではサプライチェーンの工夫により実現しています。例えば電機メーカーではQA済みの半製品を在庫し、顧客オーダーが入ると最終組立やコンフィグレーションし、出荷する手法を採用しています。一定の効果があがるものの在庫増などサプライチェーンに負担がかかり、またカスタマイゼーションの範囲が限定的であるとの課題も存在します。これに対し抜本的な生産手法の改革によりマスカスタマイゼーションを実現する企業も現れています。ハーレーダビッドソンでは1300種類の選択肢の中から自分の好みに合わせたバイクを発注できます。米国内の工場がデジタル化され、受注から生産計画反映、製造管理、センサーによる機器状態の情報がすべてネットワーク接続され、生産の6時間前まで計画変更ができるような短納期生産を実現しています。*1

これからの製造業に必要とされるのは、顧客が満足する製品を提供するために顧客起点でのものづくりを実現することです。顧客が製品仕様を決定し設計に関与できる、また製造工程においては注文した商品のステータスがわかり、出荷のぎりぎりまで仕様変更をうけつける、そのような製造業の実現が求められます。顧客起点のものづくりを実現するためには企業は何をすべきなのでしょうか。

分散化による柔軟性の確保

大量生産の時代には一極集中生産体制が有効であり、企業は企業城下町を作りサプライヤも工場の周辺もしくは生産施設の中に誘致しました。大規模で集中的なサプライチェーンを作り上げ高効率な生産体制を実現したのです。しかし多様化したニーズを取り入れるためには、製造業の各機能が有機的にオープンにつながる分散型ネットワーク構造をもつ企業体も解の一つとなります。例えば1990年代に一部の日本の製造業はこれまでのライン生産を廃し、セル生産を導入して柔軟性を担保しました。多品種への小ロット生産に対応し、生産工程を容易に組み替え、高い需要の変動への追従能力を持ちました。しかしセル生産では、多能工と呼ぶスキルと意識の高い生産者を時間をかけて育成する必要があります。これに対して、ノンプログラム型の多機能ロボットを活用する動きが広まっています。ロボットが人の作業を簡単にマネできるため、個別の特殊な作業をロボットができます。電気自動車大手のテスラモータースの工場では、自動車組立工場の風景とも言えるラインを廃止し、多機能ロボットにより日常的に生産工程を組み替えて生産効率を日々進化させています。この活動はトヨタとGMの合弁であった北米のNUMMIを買収した工場で実践されています。北米におけるトヨタ生産方式の拠点であった場所で新たな取り組みがなされていることに感慨を覚えます。

また人材の確保でも新たな動きが出ています。欧州の大手機器メーカーでは、ウェアラブルグラスを活用してエンジニアに情報を提供し、経験の浅い作業員でも機器の保守をできるようにしました。この企業における機器の保守は季節性があったため作業員の稼働率のばらつきに課題を抱えていましたが、誰でも作業ができるようにし、クラウドソーシングにより必要なときに要員を集められるようになりました。

設計の領域でも分散化の流れは進んでいます。優秀な人材の確保が自国だけでは困難になっているなか、国毎に特色ある技術をとりこんだり、地域のニーズをいち早く製品に反映させることを目的に研究開発を地域分散する動きは高まっています。Appleも横浜に研究開発センター開設準備しています。さらには一歩進んで社外の知見を取り入れるべくオープンイノベーションに取り組む企業も現れています。情報システムの世界では、オープンソースソフトウェアの活用が一般的になりました。ハードウェアを伴う製造業も開発プラットフォームを公開し、社外のエンジニアが自由に開発できる環境が整ってきています。例えば米国の自動車ベンチャーであるローカルモータースは、オンラインコミュニティにおいて、世界中の自動車ファン、世界中のユーザー、エンジニアが共同でアイデアをもちより仕様を決定しています。生産者と消費者が一緒になったいわゆるプロシューマーが製品開発において重要な役割を担っているのです。

3Dプリンターなどのデジタル技術を活用して、設計から製造までを高速につなげる動きも高まっています。アディダスは24年ぶりにドイツ国内に工場を新設しました。このスピードファクトリーでは3Dプリンターやロボットを活用して企画、設計から製造までの速度を従来の1年から1週間にまで縮めることに成功しました。高度に自動化しているため人件費の影響を受けず、顧客に近いドイツ国内での生産を可能にしたのです*3

製造とビジネスプロセスの統合

もうひとつの要求される進化は、工場内に閉じていた情報を工場の外に持ち出し、販売、設計などのプロセスと統合し価値を生み出すことです。これまで製造業各社は、工場においてMES(Manufacturing Execution System)を中心に高効率なオペレーションを構築しましたが、機器データなどの情報を工場の外に持ち出す機会は多くなく、改革が工場内に閉じていました。しかし製造設備のセンサー技術や端末の進化や現場とシステムをつなぐネットワークの選択肢の増加、さらにはクラウドの発展に伴いデータを工場の外に持ち出す技術的なハードルは下がっています。工場のデータが企業全体のデータと融合したとき大きな力を持ちます。

マスカスタマイゼーションを例に取ると、顧客オーダーに対するカスタマイズの原資が従来はERP内に存在する在庫および生産計画であったため、その範囲内でしか顧客のニーズに応えられませんでした。生産計画に影響を与えるようなカスタマイズをすると納期が大きく遅れます。実際にこの原稿を書いているPCをネットでオーダーしたときも、付属品やプリインストールアプリレベルの変更では納期が数日だったものが、CPU、メモリの変更をすると納期が3週間後になる経験をしました。付属品、アプリであれば出荷前の最終工程で対応できますが、オンボードに実装されたCPU、メモリの変更は回路基板生産レベルでの対応となるためと想定されます。これに対し販売と生産が融合した新たなプロセスではERPとMESが連携し、ERPの顧客オーダーが自動でMESの製造オーダーに変換され同時に生産スケジューリングが自動で再計画されます。この仕組みによって、より上流工程の生産工程までカスタマイズの原資とできるため顧客ニーズにあわせた複雑な仕様の変更が短納期で可能になります。さらには製造工程が可視化され販売情報と連動し納期回答が正確になります。さらには設計工程と融合し、顧客が設計したオリジナル製品の製造も実現するでしょう。

製造とビジネスプロセスの統合
製造とビジネスプロセスの統合

不具合が発生した際のトレーサビリティの強化もERPとMESの連携の効果に挙げられます。製品の出荷後のトラッキングに加えて、使用部品や製造ロットに製品を紐付けてトラッキングできるため、不具合発生時の製品の影響範囲を局所化できます。また品質情報とも紐付けされるため設計や製造の改善にもつながります。

自己組織化する工場

最後に少し未来の工場の形として自己組織化をとりあげましょう。自己組織化とは個々の要素が互いに作用し新たな秩序を持つ構造が自発的に現れる現象で、雪の結晶の形成などがその一例です。スチュワート・カウフマンは「自己組織化と進化の論理」で、突然変異と自然淘汰に代わる生命の進化の原動力として自己組織化をあげています。

製造業は製品を生産するために、販売計画、生産計画、調達計画、要員手配計画、生産スケジューリングなどトップダウンで多くの計画を立案しています。そのため変化への対応には多くの時間がかかっています。自己組織化された工場では、五月雨で発生する顧客の要求に対して、生産計画を再立案することなく自発的に適切な設備、部材、物流手段を見つけ、顧客に商品を届けます。工場が計画レスに自律的に動き出すと、製造工程の柔軟性が格段にあがり多様な顧客嗜好にあわせた製品を提供できるようになります。製造機器に不具合が発生し納期遅延が起きそうなときも、機器からの自発的なレポートを元にして、MESが自動で納期遅延となるボトルネック工程や代替手段のコストを分析し、代替の製造手段を自動で構築し納期に間に合わせます。予定外の稼働率の低下を防ぎ、顧客にいち早く製品を届けられます。

製造設備、部品や半製品、製品、サプライヤ情報、マーケット情報など製造に必要な資源がネットワークでつながることで相互作用が増し、末端の端末が頭脳を持ち始め、現場で自動判断ができるようになります。その結果、自己組織化された未来の工場が現実のものとなり、顧客起点のものづくりが実現するのです。

1: マス・カスタマイゼーション(一品大量生産)をIoTで実現したハーレー・ダビッドソン SAPジャパンブログ 2015年2月9日
2: 日本経済新聞 2017.4.11
3: 日経ビジネス2017.1.23



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