モノが売れない時代と言われています。筆者の周辺でも若者を中心にモノへの消費が減っていると実感できます。子供に欲しいものを問うてみても「特にないです」と返されることが多くなりました。しかし話を聞いてみるといわゆるコト消費にはお金をかけ、イベントのアイテム購入など体験を豊かにするための商品購入は躊躇していません。モノが売れないのではなく、買いたい商品が先鋭化して自分に合ったモノしか欲しくない、もしくは企業の提供する製品のままでは買いたい商品が存在しないのです。このような環境下において製造業は大量生産ではない、顧客の多様なニーズに合致する製品の提供が求められています。
十人十色のニーズを満たすため、製造業はマスカスタマイゼーションに取り組んできました。多くの企業ではサプライチェーンの工夫により実現しています。例えば電機メーカーではQA済みの半製品を在庫し、顧客オーダーが入ると最終組立やコンフィグレーションし、出荷する手法を採用しています。一定の効果があがるものの在庫増などサプライチェーンに負担がかかり、またカスタマイゼーションの範囲が限定的であるとの課題も存在します。これに対し抜本的な生産手法の改革によりマスカスタマイゼーションを実現する企業も現れています。ハーレーダビッドソンでは1300種類の選択肢の中から自分の好みに合わせたバイクを発注できます。米国内の工場がデジタル化され、受注から生産計画反映、製造管理、センサーによる機器状態の情報がすべてネットワーク接続され、生産の6時間前まで計画変更ができるような短納期生産を実現しています。*1
これからの製造業に必要とされるのは、顧客が満足する製品を提供するために顧客起点でのものづくりを実現することです。顧客が製品仕様を決定し設計に関与できる、また製造工程においては注文した商品のステータスがわかり、出荷のぎりぎりまで仕様変更をうけつける、そのような製造業の実現が求められます。顧客起点のものづくりを実現するためには企業は何をすべきなのでしょうか。