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ビッグデータ時代のデータサイエンティスト像、 最も重要な能力とは?

女性のためのアナリティクス基礎講座:開催レポート(1)

概要

データサイエンティストの仕事に興味がある。また、多様な人材が持続的に働ける環境やワークスタイルの実現に積極的にかかわり、貢献したい――。そのような女性を対象に、アクセンチュアのアナリティクス部門は2014年5月、無償セミナー「女性のためのアナリティクス基礎講座」を東京都内で2日間にわたって開催。製造、金融、情報サービス、通信、流通などさまざまな業種の企業や、中央官庁、地方自治体、医療機関、NPOなどで活躍中の36名が参加しました。

この連載では、このセミナーで取り上げた4つのトピックを順番に紹介していきます。第1回目の本稿は、データサイエンティストに求められる要件と能力に焦点を当てます。

「ビッグデータ」「データサイエンティスト」「アナリティクス」……。ここ数年、データ分析にかかる言葉を耳にする機会が急激に増えています。コンピュータの性能や通信ネットワーク速度の驚異的な進化によって、あらゆる産業においてデジタル化が進んだことが背景にあるのは周知の通り。企業では、顧客や営業情報など社内データだけでなく、ソーシャルメディアをはじめとした急増する社外データも合わせて活用する取り組みが始まっています。

社外データの中でも特に、さまざまなセンサーが生み出すデータの種類と量が急激に拡大しており、これまではアンケートやヒアリングでしか取得できなかった心理学的属性(サイコグラフィック)までも推定することが可能です。位置センサーの役割を果たすGPSやWi-Fi(無線LAN)、脳波計や心拍計などの生体センサー、ビデオカメラなどの画像センサー、タッチパネルや加速度計などの力学センサー。これら通じて、人の動線、体温、心拍数、脳波、表情、視線、操作履歴、活動量などの情報を吸い上げれば、そこから思考、感情、趣味、嗜好、ライフサイクルなどを推定できます。

例えば、脳波を測定し、集中している状況を記録。集中力が低下したときには集中力アップに向けた改善策を提示し、改善策を実行したことによる回復有無の結果から「集中のクセ」を把握する。分析結果から、どのような状況だと高い集中力を継続できるのかアドバイスすることまで可能な時代です。

2012年のアメリカ大統領選挙でのオバマ再選に当たっては、「選挙資金をどうやって集めるか」という課題に対して、ビッグデータが活用されました。オバマ氏の支持者や投票者のリストを18カ月かけて統合。資金提供候補者の情報やセレブ好感度調査、最新支持率、演説後のSNSの反応などを分析し、各州での勝率シミュレーションを毎晩6万6000回も行い、リソースの最適化や効率的なキャンペーンを実施したといいます。

それにより、たとえば、資金提供ターゲット層である西海岸の40代富裕層女性に影響力があるセレブとして予測された俳優ジョージ・クルーニーをホスト役にすえた資金集めパーティーでは、一晩で1500万米ドルの寄付を集めたと報じられています(参考:Inside the Secret World of the Data Crunchers Who Helped Obama Win)。

また、オバマ氏のキャンペーンWebサイトにはアナリティクスを活用。サイトの各パーツを変更した場合について、アクセス数やメーリングリスト登録者数、寄付金額がどのように変化するかを分析しました。その結果を元にトップページの写真をオバマ氏単独から家族で写ったものに変更し、デザインを最適化したところ、寄付金額が40%も増加したとされています。(参考:How Obama Raised $60 Million by Running a Simple Experiment

女性のコミュニケーション能力がビッグデータに活きる

ビッグデータの活用に取り組まなければ、早晩、競争で取り残されることになる――。業界を問わず、こうした危機感が企業の間で高まっています。

データ分析において主導的な役割を担う「データサイエンティスト」のニーズが年々高まりを見せる一方で、問題になっているのが人材不足です。一説では、現在日本に存在するデータサイエンティストの数は1000人程度にとどまります。政府はビッグデータ関連ビジネスの経済効果を7兆円と試算しており、それを前提とすれば、将来的にはデータサイエンティストが25万人も不足すると見込まれます。

アクセンチュア・アナリティクス日本統括の工藤卓哉は、国内外での豊富なアナリティクス経験をもとに、データサイエンティストに必要な能力を次のように説明しました。

「データサイエンティストとは、経営層から持ち込まれた課題を定義し、仮説を立てて、分析設計を行い、施策立案するという一連の流れの中で、経営と現場を“つなぐ”役割が求められます」。

その上で、「テクノロジー革新についての理解が必要なのはもちろんだが、経営と現場の連携に当たっては、何よりコミュニケーション能力が重要です。客観と主観の両方の立場から見て、相手の立場に立ち、独りよがりにならない判断基準が必要になるでしょう」と指摘しています。

図1 データサイエンティストの要件と最も必要な能力 データサイエンティストには、テクノロジー革新についての理解が必要なのはもちろんだが、経営と現場の連携に当たっては何よりコミュニケーション能力が重要

ビッグデータ時代のデータサイエンティスト像

基軸となるビジネス視点に加え、統計的根拠に基づいたデータ解析力と、データソースの広がりを押さえるトレンド知識まで必要になる。データサイエンティストの要件を最大限に発揮し、「つなぐ」力を持った人材となるために最も必要なスキルは「コミュニケーション能力」であり、データサイエンティストは女性の持つ高いコミュニケーション能力を活かせる職業である。

脳科学の研究では、女性は男性に比べてコミュニケーション能力が高いと報告されています(参考(1)参考(2):Sex differences in the structural connectome of the human brain)。また、消費財の重要購買層のうち半数以上を女性が占めるという事実もあります。したがって、分析やマーケティングの多様な視点を求めて女性のデータサイエンティストを登用するのは必須といえるでしょう。

一方で男性は、思考プロセスにおいて理論を積み重ねて結論に向かうことが得意なため論理的だと言われますが、その半面、物事に集中すると周囲が見えにくくなる傾向が強いともプリンストン大学のある研究結果で示唆されています。このため、「男性と女性がタッグを組むことで、分析の視点を多様化するという意味においてバランスの良いアナリティクス・チームになるでしょう」(工藤)。

ビッグデータの活用が一過性のブームに終わらず、企業の経営判断の核として根付くかどうか。それには、女性データサイエンティストの人材育成がカギを握りそうです。