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挑戦者たち
―Redefining Professionalism― 育成

上司は和尚?!
ビジネススキルよりも大事なことがある。
~“人間力強化”に力をいれる、なにわのプロジェクトリーダー~

アクセンチュアの働き方改革Project PRIDEの取り組みの1つ、生産性向上の具体事例を社内に紹介する『挑戦者たち』シリーズを社内に発信しています。その一部をご紹介します。

アクセンチュアの働き方改革 挑戦者たち 育成

「挑戦者たち。」、今回は「育成」をテーマにお届けします。“人が資産”であるアクセンチュアにとって、人材開発は永遠のテーマ。特に上長からチームリーダーへ、リーダーからチームメンバーへ、といった組織の上下関係に沿ったスキル伝承型の“育成”は、基本的な成長のステップとしてなじみがあるものでしょう。

今回は禅や東洋思想などを取り入れた独特のスタイルで、日々を振り返る思考法を伝え、人間力強化に重きをおいた育成に取り組む、シニア・マネジャーをご紹介します。

“ビジネススキルよりも人間力をあげていくことが、結果として仕事を円滑にすすめていくためのポイント”と語る彼の想いの根底にあるものとは何なのでしょうか?

地方での案件ならではの課題に向き合う

あるシステム会社に常駐してチームを率いているH.Hさんは、長年現場を引っ張り、メンバーの育成にも力を入れて取り組んでいるリーダーだ。担当しているお客様は東京と大阪に拠点を持っているため、アクセンチュアのチームも戦略担当は東京と大阪、運用担当は大阪といった分散体制。2005年からプロジェクトをスタートさせ、アプリケーションアウトソーシングのサポートを皮切りに、のちにインフラ領域にも拡大。2013年に始まったシステム改革はコスト構造の劇的な改善や人材育成などの面で大きく貢献している。

地方ジョブのため、アクセンチュアメンバーは、どうしても東京とは疎遠になりがち。メンバーの意識やモチベーションをいかにして保つかが課題だった。この状況を、H.Hさんは端的に次の3つの言葉に表す。

ちゃんとせなアカン――大阪にいながらも、アクセンチュアのメンバーとしてのアイデンティティーを保つこと。
のまれたらアカン――お客様側の文化に染まりすぎないこと。
やめたらアカン――サービス品質低下のリスクに直結するため、離職率を下げること。

これら3つのアカンことは、お客様に提供する価値だけでなく、メンバーの育成にも負の影響を与える。特に関西では、スタッフの退職はマネジャー層にとって最重要課題だったのである。アサイン前のマッチングをしっかり行うのはもちろんのこと、メンバーが集まる場では上記3つを念頭にメンバーと接するようにしているそうだ。

社内の意識調査の分析結果から、“仕事の達成感や満足度が低い”、“リーダーの課題がスタッフ層にうまく伝わらない”といった状況が浮き彫りとなったことから、H.Hさんらマネジャー層はチーム内での表彰制度や定期的なニュースレターの発行、グループの垣根を超えたコミュニケーションの実施などの取り組みをスタートしていった。

苦労と不安を乗り越え、マネジャーへの道を駆け抜けた日々

そんなH.Hさんは上昇志向の強いエンジニアとして“その道”を走ってきた。だが、道のりは平坦ではなく、苦労と不安の連続だったという。

「20代で転職を3回しており、アクセンチュアは4社目です。新卒では日系企業に勤め、通信系の組み込みソフトウェアの開発に携わりましたが、“エンジニアとして食べていく”ことへの不安がつのり、2年で転職を決意しました。その後、ネットワーク製品大手の会社で経験を積んだのですが、周囲のエンジニアの実力と自分のレベルにギャップを感じ、“このままでは置いて行かれる”という危機感ばかりが先行して思うよういかない自分に焦りがありました。

3社目は通信機器メーカー。海外のエンジニア関わることが多く、彼らのレベルの高さを肌で感じました。差を見せつけられ、同じ水準に自分が達するのは到底無理ではと思えてなりませんでした。」

今後のキャリアに悩む中、H.Hさんは、次の会社では専門的なスキルに加えマネジメント能力をしっかり身につけたいと考え、2001年にアクセンチュアへ転職。コンサルタントでキャリアを再スタートさせた。だが、アクセンチュアはマネジメント能力が抜群の人材が多く、仕事や企業文化にキャッチアップもしながらかなりハードな時期を過ごしたという。

お客様の入居するビルの前で

お客様の入居するビルの前で

「若いときは転職のテンポが速すぎた。アクセンチュアでストレッチして、マネジャーになれなければ自分はここまでかと思っていました」と振り返る。「なんとかマネジャーになれるまで頑張ろう、マネジャーの仕事を経験するまでは辞めない」と当時のH.Hさんは心に誓った。

努力で成長を維持し、念願のマネジャーになった頃のことだ。新婚ほやほやな時期だったにも関わらず、当時は多忙すぎて帰宅が深夜になることも少なくなかった。土日も呼び出されることもあり、新婚生活を味わうことがまったくできない。思うように価値を提供できていないという焦りもあった。気力も体力も限界に達し、退職の2文字が頭をかすめる。

しかし、その当時の上司がH.Hさんの奥さんへ花を贈り、「うちのエースなのでもう少し辛抱してほしい」とメッセージが添えられていた。「ここまでされてはさすがに辞められません(笑)。その後も、なんとか家族のバックアップを得ながら続けることができました。」と話す。

そんなH.Hさんは今では4人の子どもを育てる父親。大学では物理を専攻していたというが、趣味は学生時代に始めたヴィオラで奥さんとの出会いも音楽を通じてとのこと。アクセンチュアの部活動の一つである室内楽団の創設メンバーでもあり公私共にアクティブな様子が伺える。

“人間力強化”でチームメンバーを育成

苦労人でもあるH.Hさんが大事にしている育成のポイントは、3つある。

1. 禅や東洋思想を用いた独特の“レクチャー(説法)”

滝修行をするH.Hさん

滝修行をするH.Hさん

月次で行われるチーム会議では、一風変わった光景が繰り広げられる。風貌も一見すると“和尚”を思わせるH.Hさんだが、全体が集まる場では、禅や東洋思想をベースにした講義が開かれるのがお決まりだ。

10年目のリフレッシュ休暇で“お寺での断食修行”を体験したのをきっかけに、禅での学びをとおして“日々自分のことを振り返る時間を持つこと”の大切さを痛感したというH.Hさん。

「千葉の成田山新勝寺で3日間、水しか飲まずに過ごす断食修行を経験。最初のきっかけは暴飲暴食と決別して、ダイエットを兼ねられればと気軽に申し込んだのですが、参加してみると日々のことを省みる良い機会になり、日常で当たり前とされることをそのまま真に受けるだけではなく、なぜだろう?と考えを突き詰める癖がつきました。

その後もお百度参りや滝修行、お遍路参りなどを重ね、禅や東洋思想への興味が深まったという。会議の場では、お寺での修行を通して“物事をどうとらえるのか”のヒントをメンバーに話すという。例えばAIをテーマにする場合でも、単なる技術紹介ではなく、“AIにできない仕事は何か?”という視点で考える。AIは蓄積した過去の知識を使うが、AIが“新しいこと”を思いつくことはない。そこに人間の仕事がある、といった具合だ。

また、時には十牛図(※)などを紹介しながら仏教や東洋哲学の知恵を教養として紹介したりしている。

十牛図(じゅうぎゅうず):“悟り”に至るまでのプロセスを、牛をテーマにして表現した10枚の絵画。様々な画家によって描かれているが、宋時代の禅僧・廓庵禅師(かくあんぜんし)によるものが特に知られている。

さらに、アメリカのビジネス思想家、ジム・コリンズの“窓と鏡の法則”(上手くいった時は窓の外を見て、上手く行かない時は鏡を見る。すなわち成功は外部要因に求め、失敗原因は自分の能力不足を反省し、失敗から学ぶことを説く)を紹介したり、「不安なことを自分自身に問い、何が不安なのかを考えてみよう」といった自問自答を投げかける時もある。

独特な“説法”のようなレクチャーの評判を聞きつけたお客様の新入社員研修の場で、講師を頼まれたこともあったそうだ。

2. How to ではなく方向性を示す

マネジャーになりたての頃は、メンバーにHow toや業務の組み立て方を教えていたという。だが今は“方向性は示すが、細かい指示は与えず、自分で考えて組み立てることに重点を置く”アプローチを意識している。こちらの期待のみ伝え、細かすぎる目標設定で縛らないようにしているそうだ。

実際の業務での目標設定を補完する意味でも活用するのが、“ミーニングフル・カンバセーション”だ。

52のQueカードを紹介し、問い、考え、語る といった切り口から、日々の想いを説いてみることを薦める。

例えば、“あの人が苦手”、“給料が低い”、“この先どのスキルを磨くべきかわからない”など。そうした問いを繰り返すのだ。

「不満や愚痴を“問い”にして自分に問いかけてみることで、それは普遍的な問いになる。自分が何を大切にしていて、何が嫌/苦手なのかが見えてくる。難しいテーマを一方的に解説するだけでなく、肩の力を抜いたカジュアルな質問やツッコミを入れるなどして進めています。なぜそう思うのか、どうやったらクリアできるのか、など思考を掘り下げる習慣をつけてもらいたいと思っています。」

3. ビジネススキルよりも“人間力”を伸ばす

仕事において、ロジックはもちろん重要。しかし、お客様や一緒に働くメンバーから“面白い人間”だと思ってもらいたい。こうしたことは信頼関係につながる。業務中は“合意”が不可欠だが、信頼関係を築くと、より短い言葉で伝え、理解してもらうことができるようになる。結果的として余計なやり取りが減り、生産性も向上するのでは、と話す。

「つまり、損得勘定で仕事をするよりも、コミュニケーションを重ねることによって“(当事者間の)マイルを貯める”ような考え方です。特に若いメンバーにはビジネス書を読み漁って頭に詰め込むよりも、“人間としての底力”を高めてもらいたいと思っています。

一般教養を知る者は、人間としての深みが違う。素養やモノの考え方といった基礎を学んでほしいですし、先にあげた“自らへの問いかけ”がそれには欠かせないのです。」

対立(摩擦)が生じた際の立ち振る舞いに悩む

レクチャー(説法)中のH.Hさん

レクチャー(説法)中のH.Hさん

一方で、メンバー育成で今でも頭を悩ませていることもある。業務を進めるうえで対立(摩擦)が発生した際の対処法で悩ましいのは以下の3パターンだとH.Hさんは言う。

1)摩擦を飲み込む人…気持ちよく仕事を引き受けてしまうので頼りにされるが、反論も肯定もしないため、いっぱいいっぱいになり、結果的に病んでしまうことも。

2)線を引いて自分はここまでとして突っぱねる人…自分のスタンスに固執し、壁を作ってしまうのでチーム内で孤立してしまいがち。

3)摩擦を“なあなあ”にして突き進む人…物事をはっきりさせたり解決していなくても、自己評価では“うまく立ち回れている”と誤解してしまうケースが多い。

相手がお客様でもチームメンバーでも、コミュニケーションが大切なことに変わりはない。相手に嫌われたくないという気持ちから自分の欲求を抑え続けると、どんどんやる気を失う。自分の欲求を口に出すと相手とぶつかるが、そうやって欲求をぶつけながら、それでもお互い喜べる道を見つけていくコミュニケーションが大事。相手に直すべき点があれば、気づいてもらえるように指摘するが、問いかけに気づいてもらえない時もあり、そんな時は自分の伝え方に問題がなかったか自問自答を繰り返す。

「その場を乗り切るためであれば、メンバーにHow toを教えればいい。ですが、それではつまらない。人間力を身につけ、問いかけが響く人材になってほしいと願い、メンバーには言い続けています。」とH.Hさん。

H.Hさんが大切にしていること

人間力を高めることに何より重きを置くH.Hさんが日頃からチームメンバーに言っているのは、「失敗を恐れるな。深刻になるな。真剣にやれ」という言葉だ。

「真剣にやれば知恵が出る。中途半端だと愚痴がでる。いい加減だと言い訳ばかり。これをグループ内で常日頃伝えています。今の自分は誠を尽くしているか?を自分に問いかけながら仕事に取り組んでほしいというのが私の希望です。」

そんなH.Hさんの好きな言葉は、「日々是好日」。毎日が最高であるという意味の禅語で、H.Hさんは“肩の力を抜いてやろう。良い日だと思える一日を送ろうということ”だと解釈している。

一日一日を丁寧に、かつ真剣に生きていれば、毎日が最高の日々になる。目の前の仕事を“どう処理すべきか”に迷ったら、“自分自身はどうしたいのか、何を考え、何を大切にしいるのか”という原則に立ち返ることをH.Hさんは提唱している。

そんなポジティブなH.Hさん流の“育成の考え方”を参考にしてみてはいかがだろうか。

今月のPRIDE川柳

※OT…overtimeの略、残業を指す社内用語

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生産性向上の具体事例