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挑戦者たち
―Redefining Professionalism― プロフェッショナリズム

プロフェッショナリズムを創り出すのは、仕事だけじゃないー。将棋を通して得た、“先読みする力”と“決断力”


アクセンチュアの働き方改革Project PRIDEの取り組みの1つ、生産性向上の具体事例を社内に紹介する『挑戦者たち』シリーズを社内に発信しています。今回は“趣味”の世界を持つことで視野を広げ、仕事にも活かせる力を自然と身に着けているアクセンチュア将棋部のインタビューをお届けします。

挑戦者たち Vol.4

 

仕事でパフォーマンスを出すために、日々創意工夫や経験を積むことで、より高いスキルやマインドを身に着け、プロフェッショナルへの道を歩んでいくのは言うまでもありません。一方で、仕事以外で自分が没頭できる場所、例えば“趣味”の世界を持つことで視野を広げ、仕事にも活かせる力を自然と身に着けている人たちも多くいます。

本業と無関係に打ち込める“趣味”を持つことは、ビジネスパーソンの仕事の質を磨き、人生をより豊かにすると古今のリーダーたちは述べています。

今回は、プロフェッショナルの1つの在り方として、仕事と趣味の2つの世界を行き来しながらパフォーマンスを発揮しており、また社会人大会などでも強豪として活躍しているアクセンチュア将棋部のインタビューをお届けします。

「将棋」をすることで肌に感じる、世界の最先端

プロフェッショナルは、常に生産性の高い働き方をし、アウトプットを安定して出し続けることが求められる。真のプロフェッショナルが多趣味であったり、仕事以外の分野でもハイパフォーマーであったりすることは決して偶然ではない。

趣味から得られるフィードバックや相互作用を大切にし、仕事のパフォーマンスにも繋げている人たちは、どのようにそれに日々向き合っているのだろうか。今回は、将棋に没頭する2人の男性社員を紹介する。

昨今、将棋は空前のブームに湧いている。史上最年少でプロ棋士となり、公式戦史上最多連勝を樹立して日本中の関心の的となった藤井聡太四段の活躍を知らない人はほぼいないだろう。

将棋はプロの競技としての伝統も長いが、アマチュアとして楽しんでいる人口も530万人以上(出典:公益財団法人日本生産性本部『レジャー白書』)おり、“趣味”の世界として確立されている。娯楽としてだけでなく、将棋は知的頭脳ゲームであり、学べることも多い。

長い伝統を誇る将棋界だが、一方でコンピューター将棋の世界では長きにわたって“強いプログラム”が研究されている。あらゆる棋譜(対局者が行った手の順番の記録)がインプットされた将棋ソフトウェアは、独自の戦い方を身に着けてきた。しかし、AIの登場と普及で、ここ数年は「もはや人間はコンピューターに勝つことができない。」と言われるようになった。

AIの目覚ましい進化が注目される、IT×将棋について最近のトレンドに加え、将棋を通して得たことについて、アクセンチュア将棋部のS.Kさん(アクセンチュア・テクノロジー、 アソシエイト・マネジャー、アマチュア四段)とT.Mさん(アクセンチュア・テクノロジー、 アソシエイト・マネジャー、アマチュア三段)に話を伺った。

アクセンチュア将棋部

情報化とツール(ネット、スマホ)が将棋を変え、棋士は強くなった

――将棋を初めたきっかけを教えてください。

S.Kさん(日本将棋連盟の特別対局室にて)

S.Kさん(日本将棋連盟の特別対局室にて)

S.Kさん ルールは小学生の時から知っていましたが、のめり込んだのは中学生時代。部活に所属していたのは高校からですが、実力が付いたと実感したのは大学生の時です。

中学生のときに地区大会で全敗し、とても悔しかったことがのめり込んだ理由です。アクセンチュアに入社した時に将棋部を見つけ、すぐに入部しました。

T.Mさん 私の場合は父がアマチュア初段を持っていて、それをきっかけに小学4年生の時にルールを覚えました。小5の頃に父を追い抜いてしまったのですが、当時はまだインターネット対戦もなく、将棋道場に頻繁に通うのも難しかったため、社会人になるまではブランクがありました。

将棋部が結成された2009年に入部して将棋を再開したのですが、部員は皆さんとても強くて勉強になります。現在は主に年に2回の企業別の団体戦の大会前後に集まって集中的に練習しています。

部員以外との対局では、将棋道場の他に、プロも顔をだす将棋酒場に通っています。普通の居酒屋でも隣のテーブルの人が将棋の話をしていると話しかけて、スマホを使ってその場で対戦することもあります(笑)。

S.Kさん 私も通勤時間はスマホで同じレベルの人とオンライン対戦をしたり、プロの対局の棋譜中継(リアルタイム配信)を見たりしていますね。毎日欠かさずアプリでトレーニングしています。

将棋のプロ・アマの強さをゴルフスコアに例えると、アマ四段の私は80をぎりぎりきれないくらい、アマ三段のT.Mさんは90くらいでしょうか。プロ棋士は72以下だといわれています。トッププロの羽生善治さんは65、藤井総汰さんは67くらいだと推測できます。

T.Mさん 昔は将棋をするにあたって同レベルの対戦相手を探すこと自体が大変でしたし、勉強するには市販の詰将棋の本を解くほか、数少ないTV・ラジオ番組や新聞の将棋欄、いくつかの専門誌を見るしか手段がありませんでした。しかし、今はインターネット対戦でいつでも強い相手と対局でき、スマホでプロ棋士の最新の棋譜をリアルタイムで見ることもできます。いくらでも勉強でき、毎日実戦が積めます。この変化は非常に大きいです。

将棋界を直撃した、一足早いシンギュラリティ

――AIが人間を超越し、働き方や日常生活などあらゆるものに変革が起きると予想されているシンギュラリティ(技術的特異点)は2045年だと言われています。AIの台頭で、ここ数年「もはや人間はコンピューターに勝つことができない。」と言われるようになってきましたが、将棋の最前線はどのようになっているのでしょうか?

T.Mさん(将棋部の活動中)

T.Mさん(将棋部の活動中)

T.Mさん かつてのコンピューターは、プロ棋士の膨大な棋譜をインプットして、良い手・悪い手を判断させる材料とし、その判断基準をベースにしてコンピューターの演算能力を駆使して“しらみ潰し”に次の手を考えるという、文字通り“機械的に”戦っていました。

しかし、最近はディープラーニングを使い、人間のインプット無しでコンピューター同士の対戦によって経験と学習を積み上げさせるという方法を取っています。ゼロベースからの機械学習であらゆる可能性を網羅し、人間が一生かかっても実現できないほどの対局数を繰り返して自らを強化しているのです。

従来、人間の棋士は伝統的に受け継がれた定跡(最善とされる定番の戦い方。囲碁では「定石」)に基づいて形勢の良し悪しを判断していました。しかしディープラーニングを経験したAIは定跡にこだわらず、人間であれば使わないような手を指すことがあります。

人間は思考するとき、はじめから選択肢を絞り込み、悪い手と思われる道筋は早い段階で切り捨て、「考える必要がない。」と思っているのです。しかしAIによって、そうした手の中にもまだまだ常識を覆すような手が眠っていることがどんどん分かってきました。

S.Kさん こういった将棋ソフトを設計したプログラマー自身にも、ソフトウェアが繰り出す次の手は予測できません。

AI同士が対戦する将棋の大会としては「世界コンピュータ将棋世界選手権」などが知られていて、ドワンゴ主催の「電王戦」が始まってから注目度が一気に高まりました。直近2年間、人間の棋士はAIに勝てていないほど将棋ソフトは強くなりました。将棋の世界では、すでにAIは人智を超えた領域に突入していると言えます。

AIと戦うのではなく、AIから学び、人間の実力向上のツールとして活用する

――AIの将棋から人間は何を学べるのでしょうか。

T.Mさん この5年間で、AIは人間の実力を一気に抜き去りました。かつては「さすがに人間を上回ることはできないだろう。」と考えられていたのですが、AIの強くなるスピードは驚異的で、人間がコツコツとしか強くなれないところを、一瞬で置き去りにした印象です。AIがどれくらい将棋に強くなれるのか、もはや人間には正確に計測できないと言われています。

つまり、AIの発展によって、人間がこれまでに解明していた将棋の世界は“広い将棋の宇宙のほんの一部”だったということが判明したのです。

AIが台頭するまでは、私も「プロ棋士というのは限りなく将棋の真実に近いところにいるのではないか。」と考えていたのですが、実はそうではなくて、将棋の世界は解明されていないことだらけだったということがわかったのです。

S.Kさん 昨今では、AIの将棋の棋譜を見ても理解することすら難しくなってきているのです。“なぜAIはその手を指したのか?(=なぜそのような判断をしたのか?)”を考えるのに時間がかかります。まるで人間が直感的に将棋を指しているような状態に近くなっているのです。

T.Mさん こうしたことから、最近ではAIを“人間の実力向上のツール”として活用する流れになってきました。これは将棋界で起きていることですが、将来的には様々な分野で起きうる現象ではないかと思っています

将棋で身に着けた”先読みする力”と”決断力”

――将棋はどのように仕事に活きていますか?

S.Kさん “臨機応変に考えなくてはいけない”、“常に冷静でなければいけない”。これが将棋です。仕事にも役立つマインドとして、臨機応変に考えるという習慣と、常に冷静でいられるという点を将棋で身に着けました。たとえば、将棋の面白さともリンクしますが、次のようなことが言えます。

  • 先の展開を読み(予測して)、そのさらに“先の先の手”を指すが、相手は必ずと言っていいほど自分が考えていない手を出してくる。考えすぎても仕方がなく、限られた時間で答えを出さなければいけない点=仕事において決まった時間内で最大のアウトプットを出す点が共通している。
  • 冷静な意識を常に持つ。カッとなると先の手が読めなくなるので、客観的に状況を把握し続けるマインドも、仕事に置き換えることができる。

実際、仕事の最中に、私の中では感情的になりそうな場面でも、プロジェクトメンバーから見ると落ち着いて見えることが多いようです。頭に血が上ると肝心の“先読み”ができなくなるため、将棋を通して体得したスキルだと思っています。

T.Mさん S.Kさんは、わりと世間一般の人が考える“将棋をしている人”に近いと思いますね。統計だった考え方や理系的な思考をする人という意味です。

実際、若手棋士にはS.Kさんのような“細身でメガネをかけたインテリ”タイプが多いですが、年配の棋士はプロ・アマを問わず勝負師の気風の漂う人が多いように思います(笑)。

S.Kさん 理系思考になるのは、将棋には運の要素がないことも影響しているでしょう。自分の手の結果がすべて。自分のやったことからしか、結果が出ない。全責任が自分にある点も、将棋の魅力だと思います。

T.Mさん 確かに、将棋には考えても考えても尽きることのない場面がよくありますが、考え抜いても複数の選択肢が消せない。でも、自分がどれだけ追い込まれても決断を下し、またその決断によって勝つか負けるかに直結するところが面白いですし、仕事でも相通じるものがあります。

決断するには、何かしらの基準を設けなければいけません。その決断の指標の持ち方を将棋で学びました。

将棋では、私は積極的に攻めるタイプだと言われています。実際、決断に迷ったときは、“攻めても守っても五分五分なら攻めよう”と決めています。一方で、“守ったほうが良さそうという勘が6割なら守ろう”といった決断の基準も持っています。実際、仕事でも私はストレートだと言われます。仕事でも将棋でも、もっと懐の深さを磨いていきたいとは思います。私とS.Kさんは将棋の棋風と実際の性格が近いタイプだと思いますが、逆に、将棋での性格と、普段の性格が極端に異なる人もいますね。車の運転をすると性格が変わる人と同じ理屈で、個人的には、将棋をしている時の性格がその人の隠された本当の性格なのではないかと思います。

――お二人の将棋・仕事、それぞれの目標を聞かせてください。

S.Kさん 将棋においてはアマチュアの都道府県別代表において、東京都代表になることです。代表選手の枠は2名で、東京都代表は東京で最も強い2人という位置づけですので、全国トップクラスの実力になることを目指しています。将棋は、もはや私の人生の一部になっています。

将棋でも仕事でも、他人と同じことはやりたくないですね(笑)。常に新しい技術を取り入れていきたいと思っています。

将棋と仕事の両立が目標で、仕事では“残業ゼロ”を目指しています。なかなか達成できていませんが、時間内で求められるパフォーマンスを発揮できるよう、生産性を高めて行きたいと思っています。

T.Mさん 私はS.Kさんほどカッコイイことを言えませんが、将棋は一生楽しめる趣味ですね。飽きることはないでしょう。

将棋においてはチームで出場する団体戦で成績を残し、勝利に貢献することが目標です。もう少し棋力が向上したら個人戦にも出場したいですね。

そのためには“自分が納得する手を選ぶ”というか、“自分がこの手を選んだのだから後悔しない”ことを意識しています。もし間違いに気づいても、ミスを重ねないことを考えます。仕事にでも、必ずどこかで誰かがミスをする局面がでてきます。そんな時に、一発逆転でリカバリーを狙うと深みにはまってしまう。大事なのは、どうやったら着実に軌道修正できるのか、ということです。

冬フェス(毎冬に開催される、社員の家族も参加可能なアクセンチュア社内イベント)

冬フェス(毎冬に開催される、社員の家族も参加可能なアクセンチュア社内イベント)で撮った、お子さんとの1枚

仕事での目標はワークライフ・バランスです。私は子どもの保育園送迎のために7時間勤務を2年ほど続けたり、育児休暇も2人の子どもの合計で20カ月近く取得してきました。男性のキャリア的には珍しいパターンかと思います。

今では子どもたちも成長してきたので、これからはワークへの比重を高めて行こうと考えていて、長く経験してきた連結会計システム構築の領域から、業務改革プロジェクトへと自分の経験を広げています。将棋で身につけたマインドで、これからどんどんスキルアップしていきたいですね。


将棋はいま、先端的なAI研究や教育などの点でも広く注目されています。趣味の将棋を通じて得たマインドセットは、2人にとって、仕事におけるプロフェッショナリティーをさらに高める大事な要素になっているようです。

臨機応変な柔軟性と冷静さ、そして状況判断に基づく決断力を鍛えるうえで、ご自身が没頭できる趣味がきっかけになるかもしれません。

これぞプロ威張らず腐らず怠らず

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