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データベースエンジニア必見!

「デジタルトランスフォーメーション時代の最新データベース技術勉強会“守・破・離”」+「ハンズオンセミナー」レポート

イントロダクション

データベース技術はいま、大きな転換点を迎えています。企業や組織がデジタルトランスフォーメーションによる変革を求められていることに伴い、データベースは企業内のシステムにおける最重要の要素として「デジタルトランスフォーメーション時代における最適なデータベースの在り方とは何か?」を問われているからです。

アクセンチュアは2017年12月から2018年2月にかけて、SAPグループ シニア・マネジャーのTerunobu. Y・Toshihisa. Hを講師として全3回のセミナーおよびハンズオンセミナーを開催しました。

本セミナーは、日本の武道などで成長や学びのステップとして知られる「守・破・離」に則り、3回構成で実施されました。

セミナーの様子

『デジタルトランスフォーメーション時代の最新データベース技術勉強会』と銘打たれたこのイベントは、渋谷のTECHPLAY東京を会場として、進化の最前線にいるデータベースであるSAP HANAを中心としつつ、クラウドやデジタルにも話を広げ、「データベースの現在と近未来」や「ビジネス現場への応用」などを解説するものとなりました。

会場にはデータベースの最新情報を学ぼうと、毎回定員を超える参加者が集結した熱気のこもったセミナーとなりました。本記事では、その模様をサマリーでご紹介します。

デジタルトランスフォーメーション時代の最新データベース技術勉強会
【第1回】「守」の巻:データベース進化論

●Part1 デジタルトランスフォーメーション時代の最新データベースとは


変化の激しい市場に対応するための“たった1つの武器”とは?
世界が“変わる”スピードは年々加速しています。昨今では、10年もかからずに社会やビジネス環境、マーケットや人々の暮らし方まで変化しています。iPhoneが登場したのは2007年。それからわずか5~6年の間に、スマートデバイスは人々の必携のツールとなり、通信やコミュニケーションを変革し、社会変革の原動力と呼べるまでになりました。

この10年の社会の変化を振り返ると、次のように端的に総括できます。

本セミナーは、日本の武道などで成長や学びのステップとして知られる「守・破・離」に則り、3回構成で実施されました。

2007年の時点では、企業の時価総額ランキングの大部分を前世紀から続く重厚長大な生産設備や販売ネットワークを持つ企業が占めていました。しかし2017年、時価総額ランキングの最上位はテクノロジー関連の企業に独占されていまです。デジタルを活用したビジネスには、瞬発力と破壊力があります。デジタルの力は既存企業にとっては脅威として警戒された存在でしたが、“敵”だと考えるのではなく、既存企業もデジタルを取り込み、“活用”していくことが重要であることは間違いありません。

このような時代に、アクセンチュアはSAPを中心としたデジタルトランスフォーメーションをお客さまへ提供しようと考えています。

SAPのソリューション・ポートフォリオは、ERPをコアにしたSaaSソリューションへと転換しつつあります。AIやAnalytics、IoTと同様にホットなキーワードであり続けているクラウドもその1つ。SAP Cloud Platformは見逃せないソリューションです。

ニーズや市場の変化するスピードは“激しい”の一言に尽きます。従来型の設計とインプリ方法はもはや通用しない時代。苦労して構築したシステムがリリースされる頃には、すでにそれは時代遅れになっている可能性があります。現代ほど“スピード”が最高の武器である時代は、かつてなかったと言えるでしょう。

時代はPDCAからOODAへ

アクセンチュアがSAPとのパートナーシップによって提供している「Liquid Studio for SAP」は導入フレームワークを提供するものです。

具体的にはSAP Cloud Platform、SAP Leonard×Liquid Studioによって、デザインシンキングやアジャイルを駆使して『そもそも課題は何なのか』を検討し、クイックにプロトタイプを提出。限定的なリリースによってユーザーやマーケットの反応をみながら磨き上げ、マス展開へと昇華させていきます。

一方、時代は『PDCA』から『D-OODA』へと言われています。PDCAはあくまで“計画をキッチリ回す”ためのもの。しかしD-OODAは、大まかに計画をデザインしたあとは、“瞬時に判断し、即座に軌道修正をしながら走っていく”ものです。D-OODAは時代の在り方に合致した手法であり、アクセンチュアはこのコンセプトでLiquid Studio For SAPを手掛けています。

この考えを補完するものとして、ファシリテーターのTerunobu. YはMITメディアラボの伊藤穰一氏の言葉を紹介しました。

「Practice Over Theory」。すなわち、まずやってみよう、というアプローチが重要です。

Liquid Studio For SAPには世界中からビジネスアイデアの種が集められており、それらを自在に使うことができます。それを可能にしているのがSAP HANAであり、SAP HANAがあるからこそ、新しい世界をITで実現できるようになっているのだとも言えます。

アクセンチュアはSAPとAmazon Web Service(AWS)と組んで、お客さまのデジタルトランスフォーメーションの取り組みに貢献していきます。

「守破離」は古来より、武道などで定番となっている学びと習得のステップ。基本の型を身に付け(守)てから自分ならではのやり方を模索し(破)、次のステップへと進んでいく(離)。このイメージで、このセミナーも机上学習より実践を重視したセミナーとして展開されています

●PART 2 SAP HANAによりOLAPアプリケーションはどのように進化したか

セミナー後半ではToshihisa. H(アクセンチュア)が登壇し、インメモリデータベースとしての基本構造やInformation Viewの概要を説明しながら、SAP HANAによってOLAPアプリケーションがどのように進化したのかにつしたのかについて解説しました。

データベース進化論。ポイントを1つ挙げるなら「新しいものは良い」

Toshihisa. Hの講演は、特にSAP HANAとOLAPへスポットを当てた内容でした。今回、SAP HANAのインメモリとカラムストアについての説明ほか、内部の仕組み、最終的にはOLAPとの関係まで解説。そして「OLAPの向こう側」としてSAP HANAの将来や目指す将来像も含んだ幅広い内容でした。

データベースは常に進化し続けており、それは技術の変遷の歴史そのものです。“ふつうのデータベース”の時代から、並列処理型のデータベースになり、カラムナーデータベースが登場し、インメモリデータベースへと移ってきました。進化の各ステージにおいて共通することはたった1つであるとToshihisa. Hは話します。それは“新しいデータベース製品は良い”ということです。



Toshihisa. HはここでColumn storeのデータベースがいかに柔軟であるかのデモを実施しました。情報をカラムという最小単位で管理するColumn store型データベースは、例えばIoTのように常にデータが発生し、カラムの追加があり得るような状況では、HANAのFlex schemaにより、動的にテーブルスキーマが変わっていくことができる、そういう柔軟性が求められる時代だと言えると解説しました。

Row storeで本番中にAlter tableを実行するのは負荷が大きいが、Column storeならば動的に追加することが可能になります。データを最小単位で管理し、操作することでフレックスなデータ管理システムが実現します。

インメモリデータベースとしての実装の説明では、重要なことは永続性をいかに担保するかということだとToshihisa. Hは言います。

SAP HANAのユーザーに押さえておいてほしい基本のポイントは次の通りです。

  • メモリー上のデータベースはディスクに取っている(セーブポイント)。
  • 更新については、先書きログ方式で他のDB製品と同じ。
  • ディスク型データベースにおけるデータアクセス高速化手法はインメモリデータベースでは効果が無い場合がある。
  • SAP HANAでは、メモリー上のデータベースが唯一の正データで、ディスク上のデータベースの一部をキャッシュ的に保持するわけではない。
  • SAP HANAは情報系と基幹系のデータベースを1つのデータストアで運用しようとするコンセプト。



Row storeとColumn storeの二刀流 SAP HANAの特徴の1つとして、Row storeとColumn storeの“二刀流”であることが挙げられます。

○Row storeの特徴

  • HANAの一部のシステムテーブルで使用されています。
  • 少量のデータの処理に向いています。
  • 更新頻度が高い場面に適しています。

○Column storeの特徴

  • ユーザーデータ用として使用されます。
  • 高いフレキシビリティが特徴です。
  • Column storeはSAP HANAのインフォメーションビューや予測分析といった拡張機能の基盤です。

また、Column storeは辞書エンコーディングというフォーマットを採用しています。

Column storeの辞書エンコーディングは、1つのカラムをDictionaryとValue ID配列という2つの構造体から構成します。Dictionaryはソートされたユニークなカラム値が格納され、バリューID配列は、全エントリーの値を指し示すRecord IDを格納します。この仕組みのメリットは、データの重複を排除できる点とスキャンを高速に行えるという点です。



OLAPとOLTPの同時処理
OLTPを高速に処理する仕組みとして、Column store上に「Consistent view manager」「Insert Onlyの更新」、「デルタマージ」などの機能を実装しています。また、「インフォメーションビュー」でOLAPを高速実行するという仕組みが用意されています。 OLAP向きのColumn storeで敢えてOLTPを高速化することにより、OLAPはデータとしての実体を持たないビューという形式で実装が可能になりました。このことにより、リアルタイムな分析ができるようになったのです。

ビジネス現場への応用例
リアルタイムな分析が実際に使われるようになると、ビジネスの現場ではある変化が起きます。それは、レポートや分析結果のユーザーが、これまで過去の集計としてとらえていたレポートに予測機能を求め始めるということです。

たとえば製造や流通業界の「月締め販売実績レポート」を想像してみてください。過去の締日における実績は、単なる“集計”に過ぎません。しかし、リアルタイムにこのレポートを見せられるようになると次の月締めの結果が気になり始めます。次の締日を睨んで数字を立てれば、それば“予測”になります。

データを真に価値のあるものとしてビジネスの現場で活用できるかは、この「予測値を出せるかどうか」にかかっているといえるでしょう。

これはつまり、将来の販売予測をシミュレートできることや、レポートの活用度が高まることを意味しています。インメモリデータベースであるSAP HANAの活用における実際のビジネスシーンでの応用例だといえます。

デジタルトランスフォーメーション時代の最新データベース技術勉強会
【第2回】「破」の巻:Oneファクト、Oneプレイスでリアルタイム?

セミナー第2回は、主にSAP HANAとOLTP/OLAPをテーマとして開催されました。

●Part1 OLTP/OLAPとSAP HANA
SAPジャパン(以下SAP)の新久保 浩二氏が登壇し、「Oneファクト Oneプレイスでリアルタイム? 現代のデータベースでOLTPの課題と、SAP HANAでの解決策」と題した講演を行いました。

HTAPへの道。OLAP/OLTPの特徴を整理する
データベース業界における近年のトレンドとして、新久保氏はHTAPやTranslytical Databaseを解説しました。

HTAPはガートナーが提唱している概念で、OLTP系処理とトランザクションを1つのデータベースで処理しようというものです。同様にTranslyticalはフォレスターが提唱している表現です。これらの言葉は2015年頃から登場していましたが、特に注目されるようになったのは近年のことです。

一方、2009年にハッソ・プラットナーが発表したSAP HANAを概念レベルで解説した論文では、“オンラインで接続され、指先で操作できるデジタルボードルームが実現するだろう”と予言されていました。それは今日ではすでに予想された通りの姿で実現しています。

技術的な観点では、HTAPやTranslyticalのデータベースは情報系でBIにアクセスするため、OLAPを直接的に操作しようとすると、思うようなパフォーマンスが発揮できません。

ここで大切なキーフレーズは「One Fact」です。事実は1つであり、データや情報を1箇所に集約する考え方を持つこと、そして情報の鮮度に注目することです。レイテンシの下限として、どの程度のパフォーマンスが求められるかを把握することがその第1歩といえます。

OLTPは比較的更新頻度が高い一方で、OLAPはデータ量が多いといった特徴があります。ビッグデータはレイテンシをそれほど求められませんがデータ量は多く、CEP(Complex Event Processing:復号イベント処理)やストリーミングではデータ量は小さいものの高い更新頻度が必要です。

情報系と基幹系の間に立つ考え方がHTAPであり、HTAPを実現するのがSAP HANAのソフトウェア実装の仕組みです。

ハードウェアの限界・進化からみるとHTAPとSAP HANA
今日、CPUの高速化はすでに技術的限界に達しつつありますが、多コア化による解決が試みられてきました。

こうした技術的限界は他の領域でもみられます。OLTPをインメモリデータベース化しても高速化はしません。近年の課題としてはロックフリーアルゴリズムやブランチアルゴリズムが研究途上にあります。

OLAP系ではSIMD(Single Instruction Multiple Data)の考え方が登場しています。これは演算回数を削減し、処理を高速化するもので、ハードウェアの進化を追従しやすい特徴があります。

SAP HANAはOLAPへの最適化も、OLTPの高速化も実現しているデータベースです。ハードウェアベンダーとも協力しあい、ネットワークではRDMA(Remote Direct Memory Access)を使う、不揮発メモリー(NVM)を採用するなど、包括的な改善を日々進めていると新久保氏は語りました。

事例:南京市における「リアルタイム交通状況最適化」の事例

人口800万人を抱える中国の巨大都市、南京市では、交通渋滞(市民の移動性確保)が課題となっていました。

南京市行政センターは市内に膨大な数のセンサーを設置し、車や地下鉄、シェアード自転車などの情報を収集して“市民の移動状況”を可視化し、SAP HANAを基盤とする「デジタルボードルーム」で集中監視する施策を実行しています。

南京市では市民の移動パターンを抽出して52のモデル化に成功しました。これを応用し、SAP HANAがリアルタムに交通状況を分析し、市民に最適な移動ルートを提案するサービスを展開しています。

市民は渋滞を迂回するルートで移動し、SAP HANAはそのトランザクションと情報のフィードバックをリアルタイムに得ます。このようにIoTとリアルタイム分析の組み合わせを用いた市民生活の改善にSAP HANAが活用されています。

●Part2 インメモリデータベースの永続性の構造と、カラムストア更新を高速化

セミナー後半ではToshihisa. Hが登壇し、SAP HANAによるOLTPの仕組みを解説しました。

インメモリのカラムストアにおける、オンライントランザクション処理はどのように実装されているのでしょうか。このセッションでToshihisa. Hは、インメモリデータベースの永続性の構造と、カラムストア更新を高速化する手法を解説しました。

データストアの永続性とカラムストアの高速化
データストアでは5分に1度の頻度で差分を書き込みますが、OLTPを扱う際にこの更新頻度では追いつきません。そのために、トランザクションの永続化が必要です。

SAP HANAはデータベース本体を更新するときにディスク側は更新しません。ロギングのメカニズムは、ログバッファーが満杯を示すしきい値に達した時や、トランザクションを書き込む指示をしたときに変更内容のディスクへの書き込みが実行されます。これにより、トランザクションの永続化を実現しています。

2つのストレージの整合性を解決するデルタマージ

ここでToshihisa. Hはデルタマージのデモを行いました。このデモでは、メインストレージとデルタストレージが存在し、データの登録はデルタストアに書き込まれ、マージの命令を実行するとデータがメインストレージへ移動する様子がわかります。

デルタマージが実行されると、参照のレスポンスタイムが改善されたり、データの圧縮が行なわれていることがわかります。

なぜデルタストレージとメインストレージの2つの領域に分かれているのでしょうか。メインストレージは大量データを保持してReadの性能が優れています。デルタストレージは更新の性能に優れており、差分のみ保持します。この両方の特徴を組み合わせることによりOLTPとOLAPの性能を両立しているといえます。



この方式で想定される課題はデルタストレージが膨れ上がっていくことや、データが2つの領域に分かれていることによるデータの整合性の確保です。デルタマージがこれを解決します。

デルタマージをシンプルに説明すると、デルタストレージからメインストレージへデータを移動する機能です。デルタマージによって新メインストレージへとデータが移行したら、旧メインストレージ、旧デルタストレージに書かれたデータは役目を終えます。

このように、デルタマージによって、ユーザーが意識することなく、データの移行や整合性の保持が行われているのです。

Column storeをリアルタイムに更新することは非常にコストが高い処理です。ディクショナリエンコーディングに伴う、データのソート、圧縮が必要であるためです。そのコストをバッチ的・遅延的に処理しようというのがデルタマージの考え方であるといえます。

このようにSAP HANAは一見すると相性の悪そうなOLTPとOLAPの同時処理を、ここで述べたような仕組みにより両社の高速化を両立しています。

但し、これはアーキテクチャだけで語れる話ではなく、ワークロード管理やパフォーマンスチューニングも含めてその動作環境で実現し得るOLTPとOLAPの最高バランスを追求するという話であることは意識すべきです。

●Part 3 SAP HANAとAWS

SAP HANAをAWSで運用するのはベストプラクティス
クラウドのインフラとして膨大なユーザーに利用されているAWS。本セミナーではアマゾン ウェブ サービス(以下AWS) エコシステムソリューション部 パートナーソリューション アーキテクトの河原哲也氏を招き、SAP HANAをAWSで使ううえでの導入のポイントが解説されました。

河原氏によると、近年、AWSでSAP HANAを動かしているユーザーは、全世界で数千社を超えており、SAP HANAをクラウドで使うことは一種の標準あるいはベストプラクティスと呼べる状況になっています。

AWSでEC2インスタンスを展開したことがあるユーザーは想像しやすいと思われますが、実際、SAP HANAを数クリックで展開することも可能です。また、AWSはSAP HANAを運用するプラットフォームとして、SAP認定を受けています。(SAP認定はハードルが非常に高いことでも知られています)

河原氏は実際にAWSでSAP HANAを展開するまでにかかった時間は30分程度であると説明します。このようにAWSを利用することで、簡単かつクイックに、SAP HANAの環境が手に入るのです。

●Part 4 パネルディスカッション

「SAP HANAにOLTPとOLAPの同時利用は本当に可能か?」
セミナー第2回では「OLAPとOLTPは本当に同時にできるのか」をテーマにパネルディスカッションが行われました。

ファシリテーターとしてTerunobu. Yは、OLTPやOLAPにも得意・不得意が明確にあり、活用するうえではチューニングや、どのようにジョブを設計するかが重要であるのではないかと問いかけました。

新久保氏はそれに対し、OLTPにはインデックスの細かな設定が必要である一方で、OLAPではインデックス不要という点があり、チューニングには担当者の努力が必要だと話します。

一方、インフラ側である河原氏は、疎結合や用途に合わせて正しい設計をすべきであると提唱します。

“どのようなビジネスシーンでOLTPとOLAPの両方ができると良いのか?”という点では、登壇したプロフェッショナルたちの間でも議論が起きたとTerunobu. Yは触れ、Toshihisa. Hはスマートフォンを媒介とするようなリアルタイム性の高いサービスで特に必要となるのではないかと話します。

河原氏は実運用の点で、そのシステムで実現したいことを明確にすることや、コストとのバランスを考えるべきだと強調しました。

新久保氏はSAP HANAが誕生した背景の1つである大画面でのリアルタイムな分析・意思決定の実現であることを改めて話し、データをストリーミングしながら、裏側ではアナリティクスを行う。そうしたビジネスの観点やIoTとの関係性を考えることも、OLAPとOLTPをどう同時利用するかの議論では必要な視点であると話しました。

デジタルトランスフォーメーション時代の最新データベース技術勉強会
【第3回】「離」の巻:インメモリデータベースの今後。新領域への適用可能性

第3回の冒頭でTerunobu. Yは、SAPが起こすデジタルトランスフォーメーションによって、スポーツ界やビジネスがいかに変化するのかについて、事例ビデオを紹介しました。

SAP Digital business frameworkによってビジネスのインベーションを起こしていき、デジタルトランスフォーメーションを実現したり、デザインシンキングを利用することで、たくさんの小さな失敗の中に大きな成功への近道を発見できたりします。それらすべての根幹にあるのがSAP HANAなのです。

●Part1 データ活用には連携が不可欠〜ヘルスケア領域を例に

データは連携してこそ価値が生まれる
SAP新久保氏が登壇し、SAP HANA Platformの“Processing”及び“Data Integration & Quality”に関して講演を行いました 。

SAP 新久保氏はまず、スティーブ・シン氏(コンカー社CEO)の講演ビデオを紹介しました。映像でシン氏は「情報がサイロ化されている現状を変えなければいけません」と説きます。データソースはありますが、それらが繋がっていないことが課題です。データは連携してこそ活用できるからです。

特に、ヘルスケア分野ではその傾向が顕著です。SAP HANAは、そうした「分断されたデータの連結・活用」も得意としています。

SAP HANAが外部データを取得する「フェデレーション」や、データを物理的に持ち込む「レプリケーション」など、手法は様々ですが、“どう繋ぐか”がキーポイントです。

ヘルスケアに関するデータでは、構造化データが20%、非構造化データやイメージデータが80%を占めるといわれています。たとえば電子カルテのようにある程度は構造化されているデータもあれば、臨床データや手書きメモのような非構造化データも膨大にあり、センサーデータも存在します。これらを連携させて、活用しなければ意味がありません。手書きの情報はOCRで読み取りや電子化、テキスト分析エンジンが必要ですし、機械学習を使うこともその答えの1つとなるでしょう。

多種多様なデータの統合や連携には、信頼性の高いプラットフォームを使うことが有効です。その1つが「SAP Connected Health Platform」。ターゲットデータを調査し、迅速に検証します。これは新しい治療方法の発見などに寄与すると期待されています。

データ統合基盤としてのSAP HANA
SAP HANAには情報基盤を仮想統合する「Smart Data Access」という機能が用意されています。これはSAP HANA同士でデータ移行をするパターン以外にもOracle Databaseをつなぎ、統合することも可能です。

新久保氏はクイックデモを行い、Eclipseにプラグインを入れて使うパターンを紹介しました。

リモートソースとしてOracleを選択し、所定の手順を踏むことで、特定のスキーマに仮想テーブルを作ることができます。接続後は、SAP HANAからSQLを実行すると、そのつどOracle Databaseにデータを取りに行き、結果を返します。

もちろん、SAP HANAのローカルのテーブルと、リモートの他のデータベースのテーブルを結合することも可能です。

また、「Smart Data Integration」による物理統合では、SAP HANA上でレプリケーションすることができます。これらの機能はチュートリアルにも含まれているので、まずは無料版でトライアルしてみてください。

●Part2 インメモリデータベースの新領域への適用可能性

今後の応用が見込まれる領域
続いて登壇したToshihisa. Hは、インメモリデータベースの今後として、新領域への適用可能性を解説しました。

・テキストマイニングでの応用
業務データやセンサーデータ、SNSのデータなどが刻一刻とデータベースに蓄積されていきます。今後は、従来にはなかったような分析軸を活用して、レポートすることができるようになるでしょうとToshihisa. Hは強調します。

テキスト分析&サーチにおいても、SAP HANAにテキストを取り込み、単語に分割して品詞を分類し、肯定・否定などを分析します。文書にどのような単語が、どの程度の回数登場したのかを調査するなどのテキストマイニングも行えます。

分解された単語はテーブルに格納されるので、高速な全文検索や曖昧検索が容易になります。

Toshihisa. Hはデモでその様子を紹介し、Create Column Tableから、Create Full Text Indexで単語の分かちを実施し、実行すると文章が流し込まれるまでを解説しました。

単語ごとに名詞、動詞、形容詞といった情報が取り出され、活用される前の状態に戻されます。これにより、形が違っていても、同一の単語として認識され、分析するうえで有効なデータになります。

・空間データ処理での応用
地図の一定の領域を選択肢、その範囲内にある店舗や病院といった情報を抽出して表示させる応用例が今後は増えるでしょう。

空間データ処理では事象のデータをX軸・Y軸で表示し、ビジネスに紐づけて活用します。店舗などは自らの商圏を確認して、ダイレクトメールを送付するなどの処理が容易に行えます。

・Earth Observation Analysis
地図データと組み合わせて環境汚染を調査します。

・予測分析ライブラリ(PAL)
「おむつとビール」の相関関係は有名ですが、そういった単純なロジックではなく、回帰分析なども可能です。また、K-Meansを使う分析も今後は事例が増えるでしょう。K-Meansは任意の点を4つ打ち、点と点の距離を測ってグループピングを行うなどで、それまで見えなかったエンドユーザーの特性を可視化します。

・系列データ
時系列データなどを処理できます。

・ストリーミング分析
データベースに入る前のデータに対して瞬時に反応しなければならないような株価データなどに対して、パターンを分析したりリアクションを発動するといった使い方が想定されます。

・グラフデータ分析
対人関係・物流・組織など人やモノの関係性をモデル化します。これをSAP HANAに格納し、特定の関係性を調査したりトレースしたりすることが可能になります。

・HANA 2.0
GoogleのTensorFlow(テンソルフロー)との連携が可能な、External Machine Learning Libraryを期待しています。これにより、エンドユーザーが欲しい商品を見つけた場合、扱っている店舗を探し、レコメンド情報やショップの地図情報などをクイックに表示することができます。

・まとめ
データベース管理システムにとって、画像やテキストといった非構造化データをどう扱うかは、長いあいだ課題でした。DBMSとディープラーニングの組み合わせは、この課題のブレークスルーポイントになるでしょう。今後はマルチメディアデータとデータベースの拡張が興味深いところであると、Toshihisa. Hは締めくくりました。

●Part3 Alexa for Enterprise

SAP Voice UIも、Alexaで
SAP on AWSのユースケースは様々です。IaaSで運用される場合もありますし、多様なAWSで提供されるサービスを使うことも今後ますます一般的になっていくでしょうと、登壇したAWS 河原氏は述べ、今回はAlexaをSAPシステムで活用するアイディアを紹介しました。

Alexaには2つの重要なフレームワークがあります。
・Alexa Skills Kit
新機能の追加が容易で、野球の試合結果や天気予報などをすぐに返答できます。

・Alexa Voice Service
様々なデバイスと連携します。たとえば、Echo、車のカーナビなどに埋め込むことができます。

今後はエンタープライズシステムの世界でも、ボイス・ユーザーインターフェス(VUI)の利用が増えるでしょう。どのような回答を返すのか、プログラミング・ロジックもさらに進化し、ユーザーはミドルウェアを使うことなく、コードを書くだけで慣れ親しんだモジュールを組み込むことができるようになると見込んでいます。最終的な結果を返すのは「Connect VUI to Code」です。

Alexaを使ってSAP HANAのデータを呼び出すことも可能です。たとえば特定のデータベースに対して、「日本の顧客は何人いる?」という質問を音声でAlexaに投げかければ「1人です」と答えてくれますし、売上を知りたければ「What is total」と聞けば、「$760 million」と返事をします。

その裏側ではSAP HANAがリアルタイムに集計を担当し、Alexa Skills Kitのオーディオ・インターフェースが対応する仕組みとなっています。

・Alexa for Business
Alexaは今後、職場や労働環境にイノベーションを起こすものになると期待されています。スマートな会議予約や自社専用のカスタムスキルの実装なども行えますし、特定ユーザーや特定デバイスだけに利用可能といった設定もできますので、エンタープライズに求められるセキュアな利用が可能なのです。

こうした展開ではSAP Voice UIがそのエクスペリエンスを向上させます。AWSとSAPの力が、音声入力とリアルタイムな応答を実現させていくでしょう。

●Part4 パネルディスカッション

データベース管理から「データ管理」の時代へ。恐れずに新技術を学ぼう
このセミナーは「守」「破」「離」の3回の開催の中で、たくさんのキーワードが登場しました。しかし1人のエンジニアがあらゆる領域をカバーするフルスタックエンジニアになることはおそらく不可能といえるほど難しいことでしょう。

そうしたTerunobu. Yの問いかけに対し、新久保氏はデータベース管理者の仕事の領域は広がっていくにしても、自らのバックグラウンドに基づいてスキルを伸ばしていくことが重要だと語りました。一方で河原氏自身はアプリケーション・エンジニアの経歴がないことから、むしろフルスタックエンジニアを目指す必要性を感じていると話します。

また、Toshihisa. Hは周辺技術をより幅広く知らなければいけなくなるだろうと予測しています。機械学習なども日常的に使える技術になりました。予測分析ひとつとっても、モデル内のロジックを理解しようとすると数学の理解が不可欠になりますが、今ではそのモデルの目的は何か、パラメータは何か、パラメータをどう変えればどう動きが変わるかを知ってさえいれば活用できます。自らのコア技術を持ち、新しい技術を恐れずについていけばよいでしょうとセミナー参加者を勇気づけます。

Terunobu. Yから次の議題として、「今後のキーワードは何か?」が投げかけられると、新久保氏はデータベース管理からデータ管理へと仕事の本質がシフトしていくことを挙げました。

河原氏も、今後はエンジニア不足が予想される中で、自分の強みを発揮できるニッチな領域を伸ばすことも武器になると説明しました。Toshihisa. Hはニューラルネットワークに注目しているとし、SFのような未来社会はテクノロジーの進化によって確実に近づいていると話しました。

【ハンズオンセミナー】

SAP HANAファーストトラック 〜HANAで作る最初のアプリケーション
本セミナーの第1回・第2回を受講した人が参加できるハンズオンセミナーも開催され、HANAアプリケーション作成の基礎を熱心に学んでいました。

セミナーではToshihisa. Hが講師となり、HANA StudioやWeb IDEの基本的な使い方からスタート。テーブルの作成、データの登録を行ったあと、SELECT文やリレーショナルビュー、ストアドプロシージャの作成などへステップを進めました。

そしてインフォメーションビューの作成を経て、Visualize Planについての基礎までを1日で踏み込んで実践し、理解できる濃密なセミナーでした。


セミナーの様子

関連リンク

TECHPLAY東京のコラムページ(イベントレポート)


「第1回」 イベント概要 レポート


「第2回」 イベント概要 レポート


「第3回」 イベント概要 レポート


「ハンズオンセミナー」 イベント概要