ITILv2からv3(2011)…そしてITIL4へ。デジタル時代のサービス管理
2019/05/20
2019/05/20
テクノロジーコンサルティング本部 インテリジェントクラウド&インフラストラクチャーグループ シニア・マネジャーの加藤明と申します。私はサービスマネジメントを軸とした組織変革、運用モデル設計、プロセス、ツール導入のコンサルティングおよびインフラストラクチャーアウトソーシングの移行リードを担当しております。
前回は、サービスマネジメントのフレームワークであるITIL, SIAM, VeriSMについて、簡単にではありますが関係性を整理いたしましたが、今回は最近リリースされたITIL4について、v2およびv3(2011)との違いを踏まえながらご紹介したいと思います。
1. ITIL v2
ITIL v2はサービスサポート、サービスデリバリという2冊の書籍を中心に、情報システム部門やITベンダーが運用管理のフレームワークとして活用することで普及しました。内容についても効果的・効率的にITサービスを管理する手法として、インシデント管理、問題管理、変更管理、リリース管理、構成管理などプロセスという活動の単位(プロセスアプローチ)で運用現場に導入されました。
特にサービスサポートの書籍に記載されていたプロセスについては、具体的な業務フローまで詳細に定義されていたため、利用しやすく一気に浸透した背景があります。その反面、ITILがIT運用のフレームワークという形で普及してしまった経緯から、運用現場のみの限定的な適用となってしまいITサービス全体をとらえた管理にまで至らないという課題が明らかになってきました。そこで登場したがITIL v3(2011)です。
2.ITIL v3(2011)
ITIL v3は、v2での課題を解決するために、ライフサイクルの観点(ライフサイクルアプローチ)で書籍を再編しました。IT運用という視点だけではなく、戦略(企画)から設計、移行、運用、継続的サービス改善とITサービスのライフサイクル全体にかかわるすべてのステークホルダーが、それぞれの立場でどうITサービスに関与していくのか、その関係性がより明確になったのが大きな特徴です。これにより、開発部門や企画部門、事業部門の方もITILを理解しやすくなり、運用部門とどう連携しながらITサービスを提供すべきかを考えるきっかけとなりました。(まだまだ浸透度合いは低い状況ではありますが・・・)
また、ITの効率性という観点だけではなく、顧客にとっての価値(バリュー)に焦点を当てており、ITサービスの投資対効果(ROI)や成果といった最終的な目的を意識した構成となっている点もライフサイクルアプローチの大きな特徴です。ただ、本質的にはITIL v2のプロセスアプローチがベースになっているため、昨今のデジタル化やそれを支えるクラウド、AIなどのエマージングテクノロジーに対して十分な対応ができておらず、それぞれの組織で試行錯誤の状態でした。それらの課題を解決するために、いよいよITIL4が登場します。
3.ITIL 4
ITIL4は、デジタル時代に適用可能なサービス管理フレームワークとしてリリースされました。・・・とは言っても、実はファンデーションレベルがリリースされたのみで具体的な内容はこれから徐々にリリースされる予定です。ただ、ファンデーションの書籍を読むだけでもこれまでとは違った特徴がいくつかありますのでご紹介したいと思います。
まず1つ目は、サービス管理のスコープです。デジタル化はIT部門だけで取り組めば成功するわけではなく、組織全体として取り組むべき戦略的活動です。そのため、サービス管理もIT部門だけではなく、企業(エンタープライズ)全体をスコープとして捉えています。よってITILという名前にはなっているものの、中身はビジネスサービス管理により近いものとなっています。
2つ目は、サービスバリューシステム(SVS)というアプローチを採用している点です。これは、サービスを通じて成果を得るために顧客と価値を共創するためのシステム(概念)です。SVSは、ウォーターフォール型のように活動が順序立てて定義されているわけではなく、要件や状況に応じて組み換え可能なより柔軟な活動として定義されており、デジタル変革を推進するのに適しています。また、重厚長大な印象があったプロセスという概念を排除し、価値を生み出す活動を組み換え可能なモジュールとして再定義し、それをプラクティスと呼んでいます。
3つ目は、「共創(Co-Creation)」という考え方です。デジタル化時代においては、1つの部門または1つの組織だけでサービスを成立させることは難しく、様々な関係者とのコラボレーションがサービス提供の標準になりつつあります。この考え方は今後のビジネスにおいてますます重要になっており、デジタル変革を実現するためのキーワードとなっています。ITIL4ではデジタル変革を推進するための「共創」を軸に、組織変革やコラボレーション等についても触れています。
今回は、ITILv2からv3、そしてITIL4への変化について概要を共有させて頂きました。今後も最新情報は適宜共有していきたいと思いますが、自組織への適用アプローチなど具体的なご支援が必要な際は、個別にご連絡頂けますと幸いです。
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