Microsoft Teamsを使ったテキストベースの非同期コミュニケーションによる生産性の向上(2)無駄な会議が発生するメカニズム
2019/08/19
2019/08/19
デジタルコンサルティング本部 アプライド・インテリジェンスグループ シニア・マネジャーの青柳雅之と申します。私はAWSやAzure、GCPといった主要なパブリッククラウドを使用したアナリティクスに関わる業務を中心に担当しています。
Microsoft Teamsを使ったテキストベースの非同期コミュニケーションによる生産性の向上では、主にMicrosoft Teamsの機能面やメリットについて説明をしました。このブログはアクセンチュア・クラウド・ダイアリーズの中ではアクセス数が上位であり、社内でも勉強会を開いてほしいという依頼が何度かありました。アクセンチュアではベストなワークプレイスの構築を目指しているので、良いアイデアは積極的に取り入れられます。今回はより具体的に、無駄な会議が発生する背景と、Microsoft Teamsによる対策を中心に述べていきたいと思います。
無駄な会議が発生するメカニズム
組織における生産性が良くない原因は多数ありますが、ここでは多くの人が無駄と考えている会議とそのメカニズムについて見ていきたいと思います。次のようなケースに当てはまれば、それはMicrosoft Teamsの出番です。
■プロジェクトやイニシアチブが立ち上がると当たり前のように必ず定例進捗会議が設定され、多くの会議で日中がつぶれる
会議参加で日中が埋まり、夜に会議が設定されます。結果として個人ワークは夜になってしまいます。 また、定例は設定するもアジェンダが少ない場合は集まった後に、「今日はアジェンダがないので解散します」となる場合もあります。アジェンダなき定例会議のために、予定が抑えられてしまい必要な会議を設定できない場合もあります。
内容的にメールで済ますことが出来ても、あまり深く考えずに、とりあえず対面もしくはリアルタイムのオンライン会議を設定する場合があります。同期で会議を行うのを最優先している場合、1日8時間の作業時間のうちの相当部分が会議に消費されてしまいます。余談ですが、定時を超えるとなぜか皆がリラックスし始めて他のメンバーとの会話が増えたり、生産性が上がってしまう場合もありますが理由はよくわかりません。
■大きなプロジェクトでは階層毎にExcelを使ったすり合わせ会議が存在
Excel文化では、課題の進捗が複数チーム含む全体で一元管理できず、メンバー間と階層毎に内容のすり合わせ作業が必要。チームリーダーは自分のチームの進捗会議に加え、リーダー間の進捗会議、その上の階層との進捗会議に出なくてはならず、会議で日中が終わってしまいます。リーダーはきついですね。自分の作業は夜にやるのでしょうか。実質、課題のすり合わせというよりは、課題の読み合わせに過ぎない場合も多いです。詳細に課題を書けばその時間はいらないです。よく、行間ではわからないことがあるから対面で会議をするべきだ、と言われますが、オフショア開発でそんなことは頻繁にできませんし、どうしても必要なら、頻度と時間を減らすべきです。むしろ行間を埋めるくらいの情報を課題管理のツール(Excel以外も含め)に書かないと、メンバーの入れ替えがあった場合は過去の経緯を追うのが難しくなります。
なぜこのようなすり合わせ会議は必要なのでしょうか。それはリーダーが課題を認識していても、議事録と課題管理表の記載はメンバーが行うので、どうしても抜け漏れが出てきます。それを防ぐために定例進捗会議で課題の読み合わせが必要となります。解決策としては組織階層に関係なく、課題の発見者が課題を記入すべきです。リーダーであってもこれくらいの作業はやりましょう。
会議参加が多忙なリーダーからのインプットが薄く、アウトプットイメージの共有もない場合、その下のメンバーは勝手に仕事をやります。締め切り直前にリーダーがメンバーの成果物を見て、イメージと違うと言い出し、締め切り間際に盛り上がって残業するはめになります。リリース前はいつも徹夜状態となります。
リーダーは会議で忙しく回っていない。だから少ないインプットでメンバーに仕事をやらせようとします。この時点では自分でも明確なアウトプットイメージは持っていません。また、専門性のないリーダーは、メンバーが作ってきた成果物を見てダメ出しをするのが得意です。一般的には、他人が作った成果物に指摘するのは簡単で、最初に細かくその成果物の作成手順を出すのは、専門性が必要とされるので難しいです。結果的には作成後のレビュー会議が長くなり、自分の時間がどんどん消費されてしまいます。
Microsoft Teamsによる解決
これまで見てきたような状況をMicrosoft Teamsで解決する方法を見ていきましょう。機能面については前回のブログと重複している部分も多いため、必要に応じてそちらも参照してください。
■プロジェクトが軌道に乗ったら定例会議を行わない、プロジェクトの会話は可能な限りメールを使わない
あくまでも必要な時は対面での会議を行います。しかし対面での会議を必須とせず、可能な限りテキストベースかつ非同期で行うことを念頭に置きます。
■対面でのレビュー会議を行わない
レビューを口頭で行うとどうしても指摘もれがあったり、レビュー会議後にレビュー記録をつける手間が発生してしまいます。また、レビュー好きなレビューワーが対面でのレビュー会議を実施すると長時間になりがちです。最後は細かいところで一緒に考え込んだり一緒に作ってしまったりして、資料を提出する前は常に徹夜となります。
■リーダーも課題の登録を行う
課題の発生元が自分で課題を登録します。リーダーも自分で登録します。リーダーが自分で依頼するタスク(課題)を入力するので、メンバーが口頭指示をテキストに変換するよりも正確です。
■課題のステータスがどんどん更新されてクローズが早まる
ExcelとTeamsの大きな違いは、定例会議を待つことなく、課題のステータスがどんどん変わっていくことです。定例会議をやるとしても、課題の読み合わせはなくなり、リスク対応を検討するなどよりプロアクティブな活動に時間を使うことができます。
Plannerのマイタスク:複数のTeamsのチャネル横断で自分にアサインされたタスクが可視化できる。
Teamsを有効に使って生産性を向上させるためにはリーダーが重要
Microsoft Teamsはツールにすぎないので、使う側の生産性に対する意識が必須です。よいツールがあっても使いこなせないと意味がありません。Microsoft Teamsの効果を最大限に享受するには、次のような施策を実施するのもよいでしょう。特に、リーダーが意識をしなければ何も変わりません。
■生産性の意識の高い人や時間制約のある人をリーダーにする
この人がリーダーだとマイクロ管理だな、対面での会議がたくさん設定されるな、長時間のレビュー会議があるな、等、プロジェクトにアサインされる側の作業負荷は、誰がプロジェクトリーダーかによって大きく変わる可能性があります。確実に生産性が高いのは、時間制約のある人です。育児の分担がある、趣味に燃えている、自分の仕事の質を高めるための勉強会に参加したい等、なんでもいいです。18時以降はプライベートだから仕事はしません、くらいの人がリーダーになると、確実にチーム内の生産性は上がります。
■専門性の高い人をSME(Subject Matter Expert)ではなくリーダーにする
専門性の高い人は学習の習慣のある人です。ここでいう専門性とは、分野を問いません。つまり、新しいツールも積極的に覚えて利用するモチベーションがあります。そして、専門性の高い人は学習の時間を必要としているので、彼らにとって、Microsoft Teamsといった生産性向上のためのツールは非常に魅力的であり、自ら使いこなしてメンバーにその使い方を伝授するでしょう。リーダーが使うと言えばスタッフは使わざるを得ません。それでメンバーのツールに対するリテラシも向上します。なお、専門性の高い人がリーダーをやりたくない場合は、ツールの使い方を推進する役割を担ってもらいます。いわゆる「管理と調整」型の専門性のないリーダーは、新しいツールを使いこなすモチベーションがない場合も多く、同じやり方を10年くらい繰り返している人もいます。副次的な効果として、専門性の高い人をリーダーにすると、下のメンバーを育成できるし、彼らをサポートできます。メンバーが育てば彼らが専門性を持ったリーダーとして今度は下のメンバーを育成できます。組織のケイパビリティの向上につながります。
■プロジェクトには必ず生産性向上のための施策を入れる
毎回同じような仕事の仕方をしてないでしょうか。同じやり方で10年仕事をしても生産性は変わりません。大規模なプロジェクトでもいまだにWBS(Work Breakdown Structure)をExcelで書いている、課題管理もExcelで書いている、進捗会議は課題管理表の読み合わせで終わってしまっている。そういう状況かもしれません。そろそろ新しい技術で生産性向上を図りませんか。実際にツールを使って高い生産性を享受した経験がないと恐らく想像がつかないので、経験者をプロジェクトに入れるか、上記のように「専門性の高い人」をリーダーやそのための推進役にして新しい方法を試すことにします。可能であればプロジェクト計画書内で、「生産性向上のための施策」欄を記入必須の扱いとします。
生産性を上げて得られるものは大きい
時間は戻らないため、無駄な会議や作業をなくして浮いた時間は極めて貴重です。その時間を将来の自分や家族のために使いましょう。