はじめに

テクノロジーコンサルティング本部 金融サービスグループ マネジャーの田中 宏樹です。

前回、「金融サービスグループ - 金融機関の基幹系レガシーシステムの刷新に向けた支援体制」と題して、AMO/J2Cチームにおけるレガシー言語で構築された基幹系システムのアプリケーションを刷新(モダナイゼーション)する際の取り組みについてご紹介しましたが、今回は、モダナイゼーション観点のクラウド移行に関するアクセンチュアの金融機関への取り組みをご紹介します。

金融サービスグループ クラウド人材育成の背景

現在、金融業界ではフィンテック企業や最新のデジタル技術を用いたベンチャー企業の事業参入により、各企業が競争力維持や強化のためにDXをスピーディーに進めていくことが求められています。一方、金融業界では極めて公共性が高いこともあり、金融庁の監督指針やFISC(金融情報システムセンター)などの安全基準に準拠する形で、メインフレームを採用した堅牢なシステムが構築されてきたために、それらのシステムが現在レガシーシステムとしてDXの足枷となっております。

金融業界のシステムは勘定系システムのもとに複数のサブシステムが稼働し、サブシステムはさらに複雑化されており、金融機関の基幹刷新は最大の難所とも言われております。オンプレミスのハードウエア(メインフレームとサブシステム)は一定期間後、契約のサポート終了を迎え、メーカーのサポートを受けられなくなり、そのたびに莫大な更改コストがかかります。また、ハードウエアの初期投資に対し、契約者数や扱う商品数等の変動に柔軟にスペックやリソース数を変動できないためビジネス機会を逃してしまう場合があります。そして、メインフレームは将来の販売と保守の停止が見込まれています。

これらの既存レガシーシステムを刷新し、俊敏性や柔軟性などの利点からクラウドを活用する事例が増えてきております。クラウドは初期投資削減や従量課金による余剰コストを削減できるというメリットがあります。このような背景から、金融機関の基幹系システムも早急な刷新、クラウドシフトが必要であり、「モダナイゼーション×クラウド」という文脈の人材育成が急務となっています。今回の記事はクラウド人材の育成についてご紹介したいと思います。

クラウドを扱う組織が共通でもつべきケイパビリティ

モダナイゼーションに特化したクラウド移行方式・アーキテクチャ検討を推進するにためには、各クラウドサービスの根幹である考え方と基本サービスを理解する必要があります。金融機関の基幹系を扱う人材は、当然のことながら、日々の基幹システムのメンテナンス、保守案件対応で多忙な中、なかなか新しい技術へのリスキリングが時間的にも動機付け的にも困難な状況下です。そこで、AMO/J2Cチームではクラウドの基本的知識を身に着けるために可能な限りトレーニング時間を短縮し、講師の負担も抑えたカスケード式トレーニングを行っています。また、動機づけという観点では、社外コミュニティへの参画も積極的に進めています。例えば、Japan Google Cloud Usergroup for Enterprise(Jagu'e'r)など社外コミュニティでクラウドに関する知見やクラウド人材育成のノウハウを社外に向けて共有しています。そして、アクセンチュアはクラウド各社から、トレーニングを提供いただく形で人材育成についても協力をいただいています。これらの施策で金融サービスグループのメンバーが「クラウドを扱う組織が共通でもつべきケイパビリティ」を取得することを目指しています。実際にガイドラインを作成、更新するメンバーはこのケイパビリティを持つことが前提となります。

モダナイゼーション観点のクラウド移行方式の考え方

基幹系システム(メインフレームとサブシステム)をモダナイゼーションする際に求められるクラウド人材とは金融クライアントの業務要件を基にアプリケーション移行方式からクラウド移行方式を検討できる人材です。これらの移行方式選定の考え方や方法を踏まえてAMO/J2Cチームではクラウド人材育成に取り組んでおります。

クラウド移行方式を検討する前に「Step1」として対象システムの業務・商品の特性からアプリケーション移行方式を検討する必要があります。移行方式を検討する際、現行のオンプレミス環境の資産分析が重要になってきます。例えば業務上今後も機能追加・拡張が発生するシステムであり、OS・MW等の変更によりレガシー言語で対応出来ない場合、レガシー言語からモダンな言語に変換するリライトの移行方式を採用することを検討します。

「Step2」は業務要件、アプリケーション移行方式を基にクラウド移行方式を検討します。オンプレミスのOS・MW、サポート期限、スペック等の様々な判断基準からクラウド移行方式を検討する必要があるため非常に難易度が高いです。

 

AMO/J2Cチームでは、これらの金融機関独自の要件、移行方式、ソリューションの組み合わせをより詳細に整理し、「アプリケーションモダナイゼーションに特化したクラウド基盤設計ガイドライン」として整備しています。金融サービス グループが目指すクラウド人材育成モデルは、この他、金融機関種別毎のリファレンスアーキテクチャ、金融ITのトレンド、エンタープライズITの技術が必要なケイパビリティとされていますが、それらのケイパビリティは実はこのガイドラインの前提となる部分もあります。最新のクラウド技術のアップデートや実際のプロジェクトからの知見をフィードバックする形でガイドラインの更新を行います。この作業をチームのメンバーに行ってもらうことで、このガイドラインを理解した人材を育成することができます。実際にプロジェクトではガイドラインを片手に業務を行うことで理解も深まります。

基幹系システムのクラウド移行検討時の勘所

基幹系システムのクラウド移行においては4つの勘所に対する計画・準備をしておくことが、モダナイゼーションの成功の鍵を握ります。基幹システムは老朽化、複雑化していることが多く、モダナイゼーションすることでコスト最適化や運用・保守の効率化を図る必要があります。ただし、そのためには事前にメインフレームと各サブシステムのサーバ群のOS/MW、環境、スペックや製品のサポート期間を調査し最適なソリューションを選定する必要があります。

サブシステム毎に独自の運用基盤を構築していることにより、運用・保守が煩雑になっているケースがあります。そのような場合、クラウドサービスで共通化することで運用・保守の効率化を図ることができ、HWも削減できるためコスト最適化にもつながります。そのためにはクラウド移行方式の選定知識だけでなく、各クラウドサービスの知識や経験も必要になります。

また、IaaSへの移行を検討する際に、クラウドベンダがサポートする仮想マシンのOS/MWのバージョンの上で、採用する製品(SW)が稼働するか否かの調査を行う必要があります。例えば採用したいSWがそれらの仮想マシンのOS/MW上で稼働できない場合、再度移行方式を検討することになり、プロジェクト全体の工数やコストに大きく影響を及ぼします。そのため、これらの勘所を十分に注意した上でクラウド移行方式、アーキテクチャを検討できるクラウド人材が必要となります。

我々の目指すサービス

金融サービスグループ独自のケイパビリティとして目指すところは、「モダナイゼーションに特化したクラウド移行方式、アーキテクチャを描ける人材」としています。ベースとなる知識は、「アプリケーションモダナイゼーションに特化したクラウド基盤設計ガイドライン」です。この知識を理解したうえで実際のプロジェクトで適用するための施策を実施していきます。またクラウド移行方式やサービスを選定する上で、クラウド共通の知識も必要になります。それら知識や経験を活かしてAMO/J2Cチームは金融クラウドプロジェクト内各所で発生するクラウド導入における課題を迅速に解決し、クラウド導入における障壁を取り除く役割を担います。

リンク

アクセンチュア テクノロジー採用トップ
https://www.accenture.com/jp-ja/careers/explore-careers/area-of-interest/technology-careers

アクセンチュア 事例紹介
https://www.accenture.com/jp-ja/about/company/japan-client-stories-index

アクセンチュア株式会社テクノロジーコンサルティング本部金融サービスグループの紹介
https://www.accenture.com/jp-ja/services/technology/financial-services

金融サービスグループはAS-FSとITS-FSSの2部署で構成されています。それぞれの部署の詳細については次のページを参照ください。
https://www.accenture.com/jp-ja/careers/jobdetails?id=R00002353_ja https://www.accenture.com/jp-ja/careers/jobdetails?id=R00002450_ja

 

田中 宏樹

テクノロジー コンサルティング本部 マネジャー

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