ビジネスコンサルティング本部AIグループの秋元です。今回はコミュニティを活用したクラウド知識の強化について、カスケード式トレーニングにて講師・運営に携わっている私の観点からお話しします。

■自己紹介
2018年にアクセンチュアへ新卒入社後、旧デジタルコンサルティング本部に配属。その後、ビジネスコンサルティング本部AIグループへ異動し、クラウドを活用したデータ分析に従事。2020年にAWSカスケード式トレーニングに参加したのち、講師やトレーニング運営を経験。現在はGCPカスケード式トレーニング講師を務める傍ら、AWSカスケード式トレーニングの運営統括を担当する。

■カスケード式トレーニングの概要
カスケード式トレーニングの概要について説明いたします。過去に弊社青柳や横山から関連する投稿が多数出ておりますため、本編では概要のみを説明いたします。

カスケード式トレーニングとは、旧デジタルコンサルティング本部AAIを中心にCloud Data & Analytics Capability Groupで展開されている有志の勉強会です。一週間に30分の講義を2コマ用意し、昼休みの時間帯に実施します。一週間ごとの負荷は少なく保ちながら、3ヶ月程度に渡って継続的に学習を続けることによって、クラウドの知識を定着させます。また講義スタイルにも特徴があります。受講生には事前に講義で扱うクラウドサービスを予習してきてもらい、講義では講師から口頭試問を実施します。現在はAWS/GCP/Azureの3コースを提供しています。

カスケード式トレーニングの詳しい仕組みについては、以下の記事をご覧ください。

「仕組化とスケーラビリティを意識したGCPエンジニアの育成施策」
https://www.accenture.com/jp-ja/blogs/cloud-diaries/gcp-training-course

■コミュニティを活用したクラウド知識の強化を実現する3要素
このブログでは、カスケード式トレーニングを通じてクラウド知識を強化するために重要な3要素について説明いたします。これらは密接に関わっており、各要素を大切にすることで好循環が生まれます。

1. 失敗を許容し、互いに高め合うコミュニティの醸成
カスケード式トレーニングでは、切磋琢磨できる仲間が互いを高め合っていくコミュニティを形成することを大切にしています。受講生の学習意欲が周囲の受講生や講師への刺激となり、毎週のトレーニングを活発なものにしています。

        講義では講師から質問を当てる口頭試問の形式をとっているため、まず失敗を許容する雰囲気を作ることを大切にしています。雰囲気作りは講師それぞれの個性にあった方法ですが、失敗を許容する雰囲気を作るためのノウハウは、運営側で常に蓄積・共有しています。以下はそのノウハウの一例です。

        • 講師からの質問に対して、一人が答えられない場合は次の人に同じ質問を投げかける。
                ○受講生同士の連帯感が生まれます。
                ○次の人が回答できれば、今度は自分も答えられるようになりたい、と刺激につながります。
        • 全員が分からなかった質問は、受講生に調べてもらう。
              ○受講生の主体的な姿勢を歓迎することを明確にします。
                ○立場に関係なく、気になったことは自分で調べて共有する習慣を作ります。
                      ・通常業務においても必要とされる「自ら調査し答えを導き出す力」を育みます。
                ○自分の調べた結果を周囲の受講生や講師から認めてもらうことで自信がつきます。

        また本トレーニングは非業務かつ100%ボランティアベースの活動です。業務都合を優先することを全体で合意していますので、受講生・講師問わず、オブザーバー参加や日程変更などで柔軟に対応しています。このように優先順位を明確にしておくことにより過度なプレッシャーなく、全員が各自の業務とバランスを取りやすくなります。

        2. 未知の技術に対して、好奇心をもって主体的に学ぶメンバーの集まり
        カスケード式トレーニングでは、新しい知識を学び自らが変化していくことを望む意欲を重視しています。受講における必須条件としても、現在の知識レベルは一切問いません。技術を仕事にしている以上、学び続ける姿勢が最も重要であり、この理念は講義スタイルにも表れています。講義では受講生全員に毎回少なくとも2~3問は回答してもらうため、必ず質問が当たるという適度な緊張感から予習にも力が入ります。

        受講生が3ヶ月に渡って継続的に学習に取り組むためには、受講生自身がクラウド技術に対してワクワクすることが重要です。全くの初心者には最低限の辛抱が必要かもしれませんが、概ね1か月程度続けてもらうと断片的な知識がつながってきます。この時期を超えると学習を続けることが楽になり、その後は好奇心の赴くままに学習を進めてもらうことが理想です。

        このような背景もあって、本トレーニングでは新しい技術への学習を推奨しています。AWSやGCPはあくまでも学習トピックの一つであり、成長の過程であるという意識を持つことが大切です。多くの若手に実践してもらっているパスとしては、クラウドが全く分からない状態からAWSで基礎的なクラウドの概要を学び、その後はGCPやAzureといった新しい領域を学びます。こうした仕組みにより、カスケード式トレーニングは開始から3年ほど経過した今でも、順調に拡大を続けています。

        3. 自分の想いを安心して発信できる場作り
        今までの活動を踏まえて、カスケード式トレーニングのコミュニティでは、下記の3点が自身の思いを安心して発信するために重要であると感じています。

        会社のポジションや経験年数に捕らわれない信頼関係の構築
        本トレーニングでは、投げかけられた質問に対する答えを、仲間と共に考えていくことが重要です。このような活動を維持するには、会社でのポジションや経験年数に捕らわれず、どのような意見であっても一所懸命考えた言葉を受けいれてくれる仲間(受講生・講師)の存在が必須です。

        一人ひとりの強みを活かした講義スタイル
        本トレーニングでは講師の自主性を尊重し、各自にあったアプローチを自由に試してもらうことで、それぞれの講師の人柄が滲み出るような講義になっています。例えば、感受性が高く受講生の言語化されていないメッセージを読み取ることが得意な講師か、プロジェクトでのクラウド実装経験が豊富で「技術のことはこの人に聞けば安心」という講師では、心地よいスタイルは変わってきます。受講生側だけでなく、講師側も自身に適したスタイルで講義を実施してもらうことにより、自然体で講義に臨んでもらうことがポイントです。

        仲間の価値観を尊重し、互いに成長する場
        参加者には様々なバックグラウンドがあることから、それぞれのメンバーの声をしっかりと聴くことが必要です。講師や運営を経験することによって、自分以外の価値観への理解を深め、一人ひとりに適した言葉のかけ方を考える機会となります。また、講師が受講生一人ひとりを見守り、日々の努力と変化に気づくことが大切です。そうすることで、クラウドの知識がほとんどなかった新卒の受講生でも、いつの間にか立派に質疑応答できる日がきます。本トレーニングではこのような参加者の地続きの変化を捉えることを大切にしています。

        ■まとめ
        以上のようにカスケード式トレーニングでは、将来有望なクラウド技術をテーマに好奇心旺盛なメンバーが主体的に集まり、お互いの成長を支え合うコミュニティを形成しています。このようなコミュニティを守るためには、安心して自分の想いを発信できる場作りが重要です。カスケード式トレーニングでは一人ひとり、色とりどりの良さを引き出すことに尽力しており、コミュニティとしての繋がりを生かしてクラウドの知識を高め合っています。

         

        秋元 良太

        Accenture Song コンサルタント

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