クラウド人材育成 組織のAWSケイパビリティをカスケード式に拡大する(3) 運営の中での気づき
2020/04/17
2020/04/17
■自己紹介
こんにちは、アクセンチュア株式会社 テクノロジーコンサルティング本部アプライドインテリジェンス/ Cloud Data & Analytics Capability Group所属の横山祐樹と申します。もともとはAWSカスケード式トレーニングに生徒として参加、その後講師を経験し、現在はアプライドインテリジェンスのカスケード式トレーニングの運営を統括しています。
■カスケード式トレーニングの紹介
カスケード式トレーニングとは、事前学習と毎週2回30分ずつの口頭試問をセットにしたトレーニングです。現在は、AWS認定ソリューションアーキテクト アソシエイト(以降、SAA)取得を目指したトレーニングを行っています。
前週に翌週の学習範囲をアナウンスし、各自で学習してもらいます。翌週にAWS公式のよくある質問(https://aws.amazon.com/jp/ec2/faqs/)やSAAのサンプル問題をベースに作った質問を1人1問ずつ順番に聞きます。答えられなければ次の人に同じ質問をします。一周したら次の質問に移ります。
1チームは多くて8人前後で調整しています。ただ、毎回欠席者がいるので参加者は平均5名前後です。この程度の人数が程よく一人当たりに質問ができ、ちょうどよいと思います。1回のトレーニングは30分で、質問がなくなったら早めに終了します。逆に質問が残っていても延長することはありません。
毎週2つのサービスを目安に学習します。1回あたり1サービスで、内容の濃淡によっては2サービス以上が範囲になることもあります。学習教材は主にAWSのBlackbeltセミナーと、アクセンチュアが執筆したSAAの対策本を利用しています。
講師は、前タームで受講した生徒に担当してもらいます。生徒が次の講師を担当することで、講師ができる人の数が増えてスケールしやすくなり、同じメンバーに負荷がかかり続けることも避けられます。
カスケード式トレーニングについての詳細は以前、アクセンチュアのブログにて紹介されたものを参照ください。
トレーニングの継続的なスケーリングイメージ
■カスケード式トレーニングでの気づき
・実際に受講して
毎週決められた範囲をこつこつと学習し、週2回30分ずつという短いながらも定期的なFeedbackの場があるので、小さな成功体験が翌週の学習意欲につながるという良いサイクルが生まれました。
自分だけで参考書などをベースに学習を進めると学習ペースが乱れたり、モチベーションを維持できず途中でやめてしまったりということがあります。このトレーニングに参加することで継続的な学習を簡単に維持することができました。
また、通勤時間などの隙間時間に予習を進めて毎週の準備をしていました。それによって隙間時間に学習する習慣が身につき、カスケード式トレーニング終了後も学習を継続的に行うことができています。
・生徒のコミットメントについて
参加については強い縛りを設けず、不参加に関してはペナルティは設けていません。徐々に参加率は下がっていきますが、最終的には平均2~3割は残ります。
最後まで参加した人は学習意欲が高く、かなり知識が深まっています。質問に対する回答率が高く、回答も深いところまで抑えています。
また、講師までやるとかなり熟練度が高まります。
問題の内容について理解していないといけないというプレッシャーと、質問されたときのために自分の中で分からないところを潰しておかなければいけない焦りがあり、自分が理解できていないところを見直す良い機会になります。
・チーム編成について
チーム編成も知り合っている人同士が一緒にならないように心がけるようにしました。特に講師と生徒間はなるべく知らない者同士にしました。これによって、トレーニングに適度な緊張感が生まれ、学習のモチベーションを高めることができます。
また、なるべくレベルや経験などをバラバラにすることで、誰も回答できないという状態が生まれにくく、回答できないことへの焦りを次の回への学習意欲に繋げられます。
シニアレベルの人がいると、実経験からの質問や実際のユースケースでどのように使えそうかなどのコメントがもらえるので、他の参加者への良い刺激が生まれました。
・運用について
トレーニング中に出た質問は難易度などを鑑みて、難しくない質問であれば生徒に調べてもらっています。それによって、生徒が自分で理解する習慣が身につくのと、質問の内容についての理解度が教えてもらうよりも上がるというメリットがありました。
AWSはサービスのUpdateが非常に早く、Blackbeltの内容が一年もすると古くなってしまいます。(主要なサービスだと、半年で書いてあることが古くなります。)
なので、講師が事前に一読して古い部分があれば、アナウンスするようにしています。
■課題・今後やっていきたいこと
・継続的に最新技術のキャッチアップを行う
カスケード式トレーニングが終わるとそれきりになりがちです。こちらについては、カスケードトレーニングの参加者の有志でAWSやGCPのWebinarなどの試聴会を開き、最新技術のキャッチアップをしています。
試聴会では、Webinarの放送時間にMicrosoft Teamsの会議枠を設定し、Webinarを試聴しながら思ったことなどをリアルタイムでチャットで書き込む形式で行っています。
この試みは2つのメリットがありました。
まず、他のメンバーと一緒に視聴する時間を確保することにより、一人で見るよりも動機付けがしやすくなりました。ひとりで見ようとすると、作業しながら見ることで理解が進まない、業務の忙しさなどを言い訳にして見ない、といったことが起こります。他メンバーの参加により、自分も見ておかないと後々で会話についていけなくなるといった焦りなどが生まれ、なるべく時間を作って集中してみるようになりました。
また、一緒に見ることで、Webinarの中で分かりづらいところをフォローできたり、他メンバーの体験に基づいた意見を聞くことができます。ひとりで見るよりも臨場感があり、ハイレベルなアーキテクチャが出てきたときに一緒に盛り上がることができたりと、純粋な楽しさもあり非常に良かったです。
・前提知識の差の吸収
カスケード式トレーニングの中で、前提知識がなく提示した資料だけでは理解が進まないという意見がありました。
特に入社1-2年目程度の経験だと理解が難しい部分があります。今後、部署内の新入社員を中心にSAAのトレーニングを実施する予定なので、補足的な資料の拡充やトレーニングの順序組み換えなどを考えています。VPCやネットワーク周りについては特に補足が必要だなと感じています。
・SAAの次のレベルのトレーニング
会社全体としてAWSの基礎的な部分はすでに習熟している人が増えてきており、今後は高いレベルの資格や他のクラウドについてのトレーニングを行うなど、縦横どちらも幅を広げる必要があると感じています。また、同じ部署内で1年続けると参加者が一巡してしまうので、定期的にトレーニング内容をUpdateしていく必要があります。
次のステップとして、AWS認定ソリューションアーキテクト プロフェッショナルの取得を目指した対策トレーニングを設計していこうと考えています。
今後のトレーニングのロードマップ
AWS公式サイトから引用:取得可能な AWS 認定 <https://aws.amazon.com/jp/certification/?nav=tc&loc=3>
■関連リンク
クラウド人材育成 組織のAWSケイパビリティをカスケード式に拡大する