みなさん、こんにちは。アクセンチュアのインクルージョン&ダイバーシティ活動で、LGBTチームを担当しているアクセンチュアインタラクティブ所属の佐藤守です。「さとまも」と呼ばれていますので、ぜひそう呼んでください。

さて今回は、アクセンチュアがグローバル規模で実施しているリーダーシップ研修である「LGBT LEADERS LEARNING(以降、L3)」に参加してきましたので、その内容を共有しながら振り返っていきたいと思います。

まず、そもそもどういった趣旨の研修なのか、ということを共有します。アクセンチュアではグローバルでリーダーシップたる人材を育成するべく数多くの育成プログラムを提供していますが、このトレーニングでは、インクルージョン&ダイバーシティ活動におけるLGBT+ の推進を担うマネジャー以上の社員を対象に、リーダーシップとしてどのようにその推進に対峙すべきなのか……ということを学ぶ内容になっています。

今年のAAPAC(アジア太平洋・アフリカ・中東・トルコ地区)地域の開催地は、なんと東京! 2020年の東京オリンピックを控え、社会におけるダイバーシティの重要性・機運が高まってきている中、AAPACのメンバーにも日本の状況を理解・経験してほしい、という思いから人事部トレーニング担当チームと一緒に、LGBTQ Ally Committeeで招致交渉や準備を進めて実現に至りました(やった!)。

∎当研修の要所――日本独自の文脈の共有とアイデア創発
僕は参加者であり、企画側のメンバーでもあったのですが、せっかくグローバルやAAPACから様々な知見者が集まる機会なので、日本独自のトレンドや問題意識についてディスカッションや意見交換をできればと、人事部の企画メンバーと検討を進めてきました。最終的には、下記のアジェンダ&豪華ゲストをお招きして、日本のLGBTダイバーシティの状況共有(マクロトレンドから、婚姻の法整備まで)、そしてパネルディスカッションでは、ゲストに柳沢正和氏、Alexander Dmitrenko氏、杉山文野氏をお招きして、アクセンチュアのRongzi Yanさんと東由紀さんと共に『LGBT 多様な家族のカタチ』についてのパネルディスカッションを行いました。

<<< Start >>>

<<< End >>>

企業の中で「家族」というテーマは女性活躍推進の一環として取り上げられることが多いようですが、実際は婚姻関係にある男女だけが「家族」ではありません。事実婚や、男性同士、女性同士のカップル、子育てをしている同性カップルなど、実際に存在する『家族のカタチ』はすでに多様なはずです。アクセンチュアでは、そんな『多様な家族のカタチ』をテーマとして取り上げ、ゲストの話から現状を知るだけでなく、多様な家族の生きづらい現状を打破するためのアイデア創出セッションを参加者総勢100名で実施するというチャレンジをしました!

<<< Start >>>

(左)アクセンチュア インクルージョン&ダイバーシティ日本統括 堀江マネジング・ディレクターからの開式挨拶
(中)国際NGOヒューマン・ライツ・ウォッチ東京委員 柳沢氏による日本の状況共有
(右)Alexander Dmitrenko氏による日本の婚姻制度に関する観点の共有

<<< End >>>

杉山氏は、トランスジェンダーでありつつ、パートナーとの間に子供を授かり、ドナーである松中権氏と共に家族一丸となって子育てに取り組んでいます。一見複雑な状況にも見えるのですが、家族のみなさんは笑顔でいっぱい。幸せが伝わってくる素敵な写真やエピソードを共有いただきました。特に印象に残ったのは、杉山氏の両親との関係性の変化でした。子供が生まれたことで、おじいちゃんおばあちゃんとして子供に関わり、また杉山氏への接し方も温かく変わってきました。これも新しい家族の形による、一つの展開なんだなぁと。しかしながら、こんなに幸せなお二人も”夫婦”ではありません。2015年に東京都世田谷区/渋谷区を皮切りに、「パートナーシップ制度」を施行する自治体が増えてきましたが、パートナーシップの認定は、法的な保障を与えるものではなく、つまりは正式な婚姻ではないというのが、日本の現状なのです。僕自身は、とてもモヤモヤした気持ちで講演をお聞きしていました。

また、パネルディスカッション登壇者の一人、アクセンチュアのRongzi Yanさんも、同性婚が認められないことに深刻な思いを抱えていました。将来的にパートナーと婚姻を結びたいと考えると、日本では生活が難しい、と。こうした悩みを抱えて、日本を離れていく優秀な人材が、少なからずいるのです。ダイバーシティが直接的に企業活動に与える影響についても、考えさせられる瞬間でした。

<<< Start >>>

デザインシンキングを活用したアイディエーションセッション(100名近い参加者)

<<< End >>>

パネルディスカッション後は、研修参加者と社内外のセミナー参加者(総勢100名近く!)による現状打破に向けてのアイデア創出セッションを実施。国籍も入り乱れ、英語の飛び交う中、「日本の社会の中で多様な家族がより生きやすくなるには」というテーマのもとに、各グループで短時間に集中して様々なアイデアを創発していきました。アクセンチュアのデザインシンキングファシリテーターにサポートに入ってもらったおかげで、短時間・大人数のセッションになりましたが、この後につながるアイデアをいくつも導出することができました。ファシリテーターボランティアの皆さまにとても感謝しています。


∎LGBT+ダイバーシティ推進リーダーに求められるリーダーシップとは?

Welcome Receptionもトレーニングの重要な布石

グローバルトレーニングでは、研修開始の前夜、参加者で集まって親睦することが定番となっており、ホストである日本の事務局でも、日本文化にちなんだ様々なイベントを用意しておもてなししました(お茶、けん玉、習字など)。僕がなるほどと感じたのは、レセプションの段階から、チームを意識したファシリテーションがなされていたこと。2日間を一緒に過ごすチームでテーブルを囲み食事をとったり、アイスブレークに取り組んだりすることで、心理的な安全を確保することを目的としています。これはこの後のトレーニングの中で、とても重要な役割を果たすことになりました。

<<< Start >>>

Day0レセプションの様子

<<< End >>>

受講者が主役――リーダーとして、自身のアイデアを育む二日間

研修自体は、全体を通じて単なる座学はほとんどなく、受講者自身がダイバーシティを推進するリーダーとして、どのような取り組みが必要か、自分自身のパッションは何なのか、実現にあたって誰を味方にしていくべきなのか……といったテーマについて、考えていく構成。自分自身の考えを深めていくために、ファカルティメンバー(4名)の実体験や取り組みを共有してもらいながら、リーダーシップを発揮するための振る舞いやテクニックについて、演習を通じて理解を深めていきました。ファカルティメンバーはLGBTの当事者や、長いキャリアの中で色々な苦難を乗り越えてきた方ばかり。彼らのストーリーは、聞いている僕らの共感を呼び起こすと同時に、この場がとても「安全な環境である」ことを認識させてくれました。

個人的に最も興味を持ったのが、ストーリーテリングのパート。今までストーリーを語りなさい、と言われるものの、そのためのTipsといえばTEDを見るくらいしかなかったものですが、ある程度系統立ってポイントをレクチャーしてもらえたのは、とても参考になりました。また、その場で自分の推進アイデアについて、ストーリーテリングを活用してスピーチ&ビデオ撮影を行うなど、習ったことは即演習して振り返るスタイルも効果的!と感じました。

<<< Start >>>

トレーニングセッション・ストーリーテリング撮影の様子

<<< End >>>

いよいよ、二日目も大詰め。最後のテーマは、自分が何故LGBTダイバーシティに取り組むのか、というテーマと今後の活動アイデアを組み合わせた最終スピーチを行いました。LGBT当事者メンバーが自身のカミングアウトの体験を共有したり、身近な当事者を助けたいという思いから活動に参画しているメンバーの気持ちや、一人ひとりの人生における重要なストーリーが共有されたりすることで、会場全体が温かい空気に包まれていったのは、とても不思議で素敵な体験でした。Day0から継続して「安全な環境」を作ろうと配慮してくれたことを、深く理解した瞬間でした。

その後は、参加国ごとにメンバーが集まり、それぞれの国でどのような施策を実行していくべきかを共有・協議することで、実際のダイバーシティ活動の企画にもつながり、研修に参加することで目に見える「アウトプット」を得ることができました。こういった実動に結びつく構成は、とても有意義と感じました。

<<< Start >>>

研修参加者、研修事務局のメンバーも一緒に

<<< End >>>

∎さいごに
この研修に参加できた大きな収穫の一つは、AAPACやグローバルメンバーとのつながりができたこと。こういったダイナミックな人材交流が可能なことは、アクセンチュアの強みであり醍醐味だなと、改めて感じました。二つ目は、自分自身の経験や感情をストーリーとして共有することで、人を巻き込む大きなパワーが発揮できるということ。日々のプロジェクトにおいても、もっと「人間らしさ」を大事に成果につなげられるといいなと思います。

そして、ただ学んで良かったなということだけではなく、行動に移すのが大事。研修後、AAPACメンバーとは各国での取り組みの共有を少しずつ開始し、日本ではAlly(アライ / 支援者)向けのフォローアップセッションを開始するなど、小さいながら確実にアクションを進めています。

せっかくいただいた学びの機会を活用して、2020年とその先に向けて、Allyメンバー一丸となってインパクトを生み出していきたいと思います!

 

佐藤 守

Accenture Song シニア・マネジャー

Subscribe to Accenture's Life Blog Blog Subscribe to Accenture's Life Blog Blog