デザインアプローチを用いた顧客体験の創造に取り組んでいます、アクセンチュアインタラクティブの入場です。

アクセンチュアでは企業市民活動の一環として、様々なプログラムを企画・実施しています。
(グローバル共通のプログラム「Skills to Succeed」について、詳しくはこちら
そのひとつとして、障がいのある方に向けた革新的なサービスを提供するベンチャー企業ミライロの新規事業創造プロジェクトがあります。約半年前から議論を重ね、新規事業の種を8つ創造することができました。そのうちの1つ「FABLABO+」は、今春オープンする施設『ミライロハウス』に導入されることを目指しています。

今回、株式会社ミライロ代表取締役社長の垣内様と、アクセンチュア ストラテジー&コンサルティング本部 マネジング・ディレクター朝山がプロジェクトの様子を振り返りましたので、対談形式でお届けします。
「人々のバリアをバリューに変え、社会を変革する」を企業理念に掲げるミライロ創業者と、デザインの考え方を用いた戦略的アプローチHuman Centric Strategyを推進する朝山の、本プロジェクトに対する思いや、これから作っていきたい世界について皆さんに知っていただければ幸いです。

当事者が感じるバリアに向き合い、社会に価値を生み出す


朝山:まずは、ミライロのサービスや構想をお話しいただけますか。

垣内様:ミライロは3つのバリアの解決を目指しています。1つ目は環境のバリア、2つ目は意識のバリア、3つ目は情報のバリアです。環境のバリアは、バリアフリーコンサル事業を通して解決を目指していますが、どうしても時間やお金がかかってしまう分野です。そこで意識のバリアにアプローチするため、「ハードは変えられなくてもハートは変えられる」をモットーにユニバーサルマナー検定を行っています。障がいのある方や高齢者など、街で見かける多様な方への理解を深めるための検定で、向き合う人の意識のバリアをなくせればと思っています。最後に情報のバリアの解決に向けて、バリアフリー地図のBmapsや、電子障がい者手帳のミライロIDを提供しています。
障がいのある方の多くはお金を稼いでも使える場所がないとの思いがあるために、就労率が上がりません。私たちの提供するサービスが、彼らの外出や消費を促して、彼らが学校に行こう、働いてお金を稼ごうと思うようになればいいと思っています。また、障がいのある方本人の負担や心理的ハードルだけでなく、障がいのある方向けのサービスを展開する企業の負担を減らすことも、私たちが掲げている目標です。

朝山:障がいのある方々にとって非常に大きな価値を提供しているようお見受けしています。我々が新規事業創造プロジェクトとしてご一緒させていただいたのが2019年秋ごろですが、その時の課題を教えていただけますか?

垣内様:ミライロは今までベンチャーの強みであるスピード感を重視しここまで成長してきました。しかし、「ミライロ=垣内」という状況を脱し、会社として自立させないといけないという危機感を持っています。以前、私が長期入院した際に売り上げが下がった経験を経て、私がいなくても事業経営が安定するよう、アイデアの種をたくさん持っておきたい、アイデアをビジネスの形に芽吹かせたいと思っていました。
会社を自立させる一環として、今回のプロジェクトには新卒2~3年目の若手メンバーをアサインしました。これからのミライロを考え、作り、広げていくメンバーを育成したいという思いがあったからです。
また、創業10年目を迎えた今年が東京五輪と重なり(※)、障がいのある方への注目度が高まっています。今こそ将来を見据えた戦略、新規事業が必要でした。
(※)3月12日に取材したものです

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株式会社ミライロ 垣内様が語る様子

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Human Centric Strategyを用いたアプローチ

 

朝山:たくさんのアイデアを元に事業創造を行いたいという垣内さんの想いを受けて、今回、Human Centric Strategyというデザインの考え方を取り入れた戦略的アプローチを採用しました。このアプローチで非常に重要になるのが、ミライロ様の顧客に届けたい価値を明確にし、目指すべき世界・ビジョンを捉えることです。まずはキックオフで、会社や事業の現状・歴史を把握し、ビジョンの再創造を行いました。この時どのように感じられましたか?

垣内様:一言で言うと感動しました。今まで外部の方がミライロのことを調べてくれても「車いす社長が経営する会社」と言われてしまい、私や障がいが枕詞になってしまうことがほとんどでした。
でもアクセンチュアの皆さんは外部環境、テクノロジーの変化等を意識しながら、私たちのビジネスそのものにフォーカスした議論をしてくれたので、嬉しくて、初回から前のめりに自分の思いや目指す世界を語れました。

朝山:あのキックオフの日に、垣内さんが300年以上の歴史をさかのぼって、障がいのある方と社会の関係性を話してくれたことで、歴史の積み重ねの先にミライロが目指す世界観があり、実現するための提供サービスがある、というストーリーにすごく納得しました。初回のワークショップで納得感のあるビジョンを全員で共有できたからこそ、結果として皆がやってみようと思えるビジネスコンセプトを作ることができたのだと感じます。

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アクセンチュア 朝山が語る様子

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朝山:私が「障がいのある方”でも”貢献できる世界を創る」という言葉でミライロのビジョンを表現しようとした際、垣内さんが「それは違う。障がいのある方”だから”できる、と思える社会を創りたい」とおっしゃいました。「“でも”を“だから”に変えたいんだ」という言葉が印象的で、私たちの価値観の枠を広げられたと感じました。この対話があったからこそ、その後のインタビューやアイデア出しを本ビジョンに即してできたと思います。

垣内様:小さい2文字ですが、これは大きな変化です。”でも”から”だから”の変化をもっと多くの人に体験して欲しいです。

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自身の経験を語る垣内様

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顧客の声に耳を傾け、8つのビジネスコンセプトを創造

 

朝山:ミライロ様の顧客へのインタビューから得られた声を、たくさんご紹介しました。Human Centric Strategyでは、最終的な価値の受益者である顧客が本当に求めているものを最も大切にしているため、このようなプロセスを踏むのですが、いかがでしたか?

垣内様:私が思っていることを、他の方も感じていると分かり安心できました。一方で、昔の私のように障がいを受け入れられず苦しんでいる人も、まだ多くいることを再認識できました。今の自分の価値観だけでサービスを考えてしまうところだったので、顧客の声のシャワーを浴びられたことは非常に重要でした。彼らのためのサービス検討も忘れてはならないと、改めて感じました。

朝山:顧客の声をもとに皆様と考えた200以上のアイデアをベースに、8つのビジネスコンセプトを作りました。このコンセプトを実現していくことで、初回に掲げたビジョンを実現するイメージは持てましたか?

垣内様:今まで、ビジョンの実現にはピースがいくつか足りないと思っていました。今回は健常者にも裾野を広げていくようなコンセプトもあり、足りないと感じていたピースを補充してもらったような感覚です。新しいアイデアを積み重ねれば、確実に「障がいのある方”だから”できる」世界を作れると感じました。

朝山:そう思っていただけたなら良かったです。今後はアイデアをビジネスとして実現していくという、最も難しいフェーズに入っていきます。意気込みはいかがでしょうか?

垣内様:ミライロは今までも、大きな広告予算を使わず人も足りないながらに、精いっぱい知恵を絞ってやってきました。今回これだけのピースを用意してもらえたのだから、私たちにできないはずがありません。
また今回参加した若手社員が、プロジェクトのプロセスを体験しながらスキルアップできました。事業の目的を再認識し、これから取り組んでいく未来を考えることでモチベーションも向上しており、全員が次のチャレンジに向けてわくわくしています。

 

新しいエコシステムを作り、障がいのある方のチャレンジを促したい

 

朝山:今回皆様と共創した8つのコンセプトは、病院の診察結果などの医療情報をまとめて持ち歩け、自治体の申請手続きを用意するアプリや、自分にとって住みやすい街を選べるプラットフォーム、障がいのある方の声を集めてアイデアを形にするラボ「FABLABO+」など幅広い内容でした。
いくつかのコンセプトの実現には自治体等の多くのステークホルダーの連携も不可欠ですが、どのように進めていくご予定でしょうか?

垣内様:まずは、ミライロIDに申請手続きアプリのアイデアを連携させ、障害者手帳を発行しないモデル自治体を作りたい。電子障がい者手帳のミライロIDだけで済めば、障がいのある方や家族が行う手続きはスマホで完結し、自治体の業務は効率化するWin-winな状態が作れます。私たちだけではできないので、ぜひアクセンチュアの皆さんと組んで実現させたいです。

朝山:アクセンチュアには自治体の課題に精通している人などたくさんのエキスパートがいます。まずはいくつかの実証実験を経て、日本の新しいエコシステムとなるようなものを一緒に作っていけたらと思います。
また、創造したコンセプトのうち、障がいのある方の声を集めてアイデアを形にするラボ「FABLABO+」を今春オープンする『ミライロハウス』に導入することを即決してくださいましたね。早速、当事者の不便や不満の種を当事者の方の手で形にするためのワークショップを開催する方向で検討を進めています。障がいのある方にどのようなメリットが提供できると考えていますか?

垣内様:弊社の事業の一つである、ミライロリサーチに近いと思っています。このリサーチパネルは報酬がなくても答えてくれる方が多いことが特徴です。他のリサーチパネルと比較して、自分たちの声を社会に届けたいという思いが強いことを表しています。
「FABLABO+」のワークショップを通じて、うまくいけば自分の声が最終的に商品として形になります。「障がいのある方の視点から、この商品が生まれました」となれば、まさにバリアがバリューに変わる瞬間。自分は社会に属する一人の人間なんだ!と思える感覚は、次の一歩を踏み出す勇気に必ずつながります。

朝山:自分の声が世に反映されたら純粋に嬉しいですよね。
今回アイデア出しにボランティアとして参加してくれた障がいのあるアクセンチュア社員からも「自分の意見を発表できる場にこれからも参加したい!」とたくさんの連絡をもらいました。FABLABO+も素敵な取り組みになると信じています。FABLABO+のワークショップ開催も含め、アクセンチュアとして様々な形でご支援ができればと思っています。本日はありがとうございました!

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笑顔で並ぶ垣内様と朝山

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入場 純

Accenture Song アナリスト

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