貧困のない、誰もが活き活きと生きられる社会を実現したい。その想いを形にするべく、グラミン銀行の日本版組織である一般社団法人グラミン日本(以下、グラミン日本)が2018年9月に発足しました。

アクセンチュアは、事業活動を通じて培った「人材のスキル発揮を高めるノウハウ」を活かし、企業市民活動において全世界で2010年からSkills to Succeed(スキルによる発展)というテーマに取り組んでいます。すでに全世界で220万人以上の人々に就労や起業に必要なスキルアップの機会を提供してきました。

生活困窮者向けの支援を展開するグラミン日本の理念に賛同したアクセンチュアは、戦略グループにてプロジェクトチームを結成し、事業計画の策定を中心に同組織の発足を支援。この座談会では、グラミン日本の立ち上げ支援プロジェクトに参画したメンバーの、このプロジェクトに懸けた想いや情熱、得られた経験やスキルなどについて振り返ります。

戦略コンサルタントのプロジェクトチームメンバー

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社会貢献は身近なテーマ。本業と両立しながら取り組む

―グラミン日本の立ち上げ支援プロジェクトへの参加動機を教えてください。

R.U  私は5年ほど前から、アクセンチュアの社会貢献活動(以下、コーポレート・シチズンシップ(CC)活動)に参画しています。

CC活動で私が重点的に取り組んできたのは、人材ダイバーシティの促進というテーマです。ビジネスの手法をもって、多様な人材が活躍できる社会をどのように実現していくかを考えてきました。
ダイバーシティには、性別や国籍などさまざまな要素がありますが、その中の1つに女性の活躍推進というテーマがあります。

ここ数年、ワーキングマザーの活躍推進についてさまざまな取り組みをしてきましたが、近年の政府や企業の動きが目まぐるしく、経済合理性の中で解決・改善される課題も多くなってきたことから、より支援を必要としていると考えられるシングルマザーに活動の焦点を当てることを検討していました。
そのような中、ご縁があって、当時、シングルマザーを対象として日本での事業開始を検討されていたグラミン日本を紹介いただいたのがプロジェクトの起点でした。

私は3月まで海外に駐在していましたので、帰国した4月から、本格的にプロジェクトの具体化に取り組んできました。


K.Y  私は学生時代からCC活動に強い関心を持っていました。以前、日本初の障害児保育園「ヘレン」(NPO法人フローレンス)の立ち上げ支援のプロジェクトでR.Uさんとご一緒しましたね。今回のプロジェクトのお話もR.Uさんから伺い、「ぜひやらせください」と5月の連休明けから参画しました。

私がそもそもコンサルティング企業を志望したのも、「社会課題を解決する実力(課題解決力)」や「社会課題の解決に寄与できる立ち位置」「人脈」を獲得する近道ではないかと考えた背景があります。

グラミン日本プロジェクトは、「戦略案件+社会課題解決」という点で、自分にとっては大変貴重な場でした。

K.S  私が参画したのは7月です。グラミン日本の事業計画の具体化や収支/財務計画の立案を担当しました。

私は地方出身で、地元の町が徐々に過疎化しているのを目の当たりにしています。地元には仕事が少なく若年層の流出が深刻な問題となっており、地方創生や社会課題解決は私にとっても身近なテーマの1つです。

H.O  私は1つ前のプロジェクトが完了し、次のアサイン先を探していたところ、当時の上司から本プロジェクトを紹介してもらったことをきっかけに参画しました。

アクセンチュアで「社会問題解決×ビジネス」に関するプロジェクトに携わることを入社時からの目標にしていたため、迷わず手を上げたのを覚えています。また、学生時代からボランティア活動をしていたため、アクセンチュアのCC活動については以前から興味がありました。

T.K  私は7月中旬から短期間で参加しました。

実は前職も社会貢献活動に力を入れているメーカー企業だったため、アクセンチュアがCC活動に力を入れていることは以前から関心を持っていました。

R.U  グラミン日本の事業立ち上げのパートナーとして、アクセンチュアのケイパビリティを活かしてさまざまな支援をさせていただく用意がありましたが、まずは先方の希望もあり、事業立ち上げに向けた5カ年の事業計画を作るという極めて重要な取り組みをさせていただくことになりました。

プロジェクトのニーズに合わせてベストな人材で臨むという考え方は、クライアント向けのプロジェクトと同様なので、まずは事業計画策定に向けてアクセンチュア・ストラテジーで体制を組み、全力で事業立ち上げを支援させていただくことになった、という経緯です。

社会課題解決を手がける団体への支援、その独特の難しさとは?

―今回のプロジェクトにおけるそれぞれの役割や、担当した支援内容を教えてください。

R.U   私はプロジェクトを統括する立場だったので、それぞれのロールにメンバーをアサインし、チームを構築する側でした。

本件に限ったことではないのですが、CC活動にはクライアントワークとは異なる独特の難しさがあります。私たちが対面する非営利団体の責任者の方々は、一般的な民間企業とは異なり、社会課題の解決やその団体が考える理想の社会の実現が最も重要です。しかし一方で、理想を追い求めるだけでなく、収支面や組織運営面での継続性も担保しなくてはならない。そうした難しさを知り、先方の理念や考え方に寄り添いながらも、戦略コンサルタントとしての立ち位置もしっかり持ち、時に先方の考えとは合わないことでも提言できるスキルやマインドを持つことが大切です。そういった観点で、アクセンチュアのコンサルタントとして価値を発揮できるメンバーに集まってもらえたと思っています。

まずは、このような難しいマネジメントができるプロジェクト・マネジャーのアサインが最も重要だと思っていましたが、以前のCC活動のプロジェクトで一緒だったK.Yさんは、今回の事業計画策定というテーマにスキル面で合致しており、社会課題解決への情熱や取り組み姿勢において信頼していました。過去に仕事をする中で侃々諤々と議論できる間柄でもあったので、K.Yさんにプロジェクト・マネジャーをお願いしましたね。

K.Y  はい、以前の案件ではR.Uさんがプロジェクト・マネジャーで、私はスタッフでした。今回はそれぞれの立場が上にスライドした形です(笑)。

このプロジェクトでは、世界と比較して日本社会の貧困状況はどうか、それを解決する手段は何か、グラミン日本はどのように貢献できるのかをT.Kさんに描いていただき、K.Sさんにはその経済インパクトを明確にしてもらい、H.Oさんには現場のニーズヒアリングから資料収集、全般的な業務の補佐を担当いただきました。
メンバーには入れ替わりがあるので、他にも多くの社員にボランティアで参画いただいていました。

K.S  私はこれまで、ビジネスとして経済合理性を追い求めるプロジェクトを多数手がけてきたので、社会貢献活動の理念に触れることができた今回のプロジェクトは、私にとって非常に新鮮でした。

T.K  私は前職でも社会貢献に携わる機会があったので、事業の持続性がいかに重要かを痛感していました。今回、K.Sさんが担当なさった収支計画からは多くのことを学びました。

H.O  同感です。社会貢献団体が、収益性を維持できないために事業を継続できず、理念を実現できない場合があるということを、私もずっともどかしく感じていました。
私の場合、そうした課題に自分なりの解決策を見出したいという想いが、コンサルティングスキルを高めるモチベーションになっています。

K.Y  そうですね。社会貢献を目指す組織は「こうありたい」という理念を曲げずに、収益性を確保し続けることが不可欠です。実現のための方法論を私たちは考え、提案しています。

スキル、経験、人脈……。CC活動は学びの宝庫

―今回のプロジェクトにおける「学び」や「チャレンジングだったポイント」は何でしょうか?

H.O  私はまだ入社から日が浅いので、すべてにおいて学びがありました。社会をより良くしたいと本気で考えている上司との人脈が広がったことも私にとって大きな収穫でした。

T.K  非営利組織という理念や思いが先行しがちな事業の目指す姿を、通常のプロジェクトと同様に、論理的に軸を切りながら整理することがチャレンジングだった点です。グラミン日本の理念を理解したうえで、日本社会の問題の解決にグラミン日本がどう貢献できるのかをまとめ上げることは、一般的な企業のプロジェクトでは得難い経験でした。

K.S  チャレンジングだったポイントは、非営利活動の組織において、収支のバランスをどう適切に着地させるかという点です。これはCC活動だからこそ得られた学習ポイントでした。

K.Y  このプロジェクトでは、ステークホルダーに当たる社外の方々が非常に多いので、私も多数のミーティングに出席しました。戦略や数字レベルだけでなく、思想の根本であるハートの部分のすり合わせが特にチャレンジングでした。

戦略の上には文化があり、文化の上には思想があります。言葉では分かったつもりになっていましたが、実際に戦略よりも上位に位置する“思想”こそ大事であると学ばせていただきました。その思想の先端を作り上げていくことが、CC活動において最も重要なことではないかと私は考えています。

アクセンチュアにはこういう社会貢献活動の場やチャンスがあり、こうした活動を支えてくれるチーム・組織があることを広く知っていただきたいです。

R.U  社会課題を解くうえで、一手で全てを救えるオールマイティーな解決策はありません。グラミン日本のコアケイパビリティを十分に理解して、それをどう活用し課題を解決していくかという観点において、答えを出せたことが今回の成果です。
アクセンチュアは、立ち上げパートナーとして、これからもさまざまな形でグラミン日本に伴走していきたいと考えています。

今回は戦略案件でしたが、今後、事業立ち上げ・拡大の中で、支援の在り方も多様化していくでしょう。プロジェクトの状況に応じて、その時に必要とされる知識や経験をもった社員に参加してもらい、グラミン日本を支援していけたらと思います。

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(写真左より)R.U、H.O、K.Y、K.S、T.K

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―本日はありがとうございました。

 

 

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