みなさん、こんにちは。アクセンチュア・セキュリティコンサルティング所属のジョンと申します。
アクセンチュアには2020年に転職入社しました。日々の業務のほか、部活動として様々なジャンルの芸術好きが集まるアクセンチュア芸術部で、展示イベントへの作品出展などに取り組んでいます。今回は、アクセンチュアも協賛している「アナザーエナジー展:挑戦しつづける力 – 世界の女性アーティスト16人」(森美術館)の鑑賞レポートを通じ、展覧会のテーマや感想を、皆さんとご共有できればと思います。

 

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フィリダ・バーロウ(イギリス) 「アンダーカバー2」2020

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ダイバーシティはアート業界にも広がり、非欧米系女性アーティストも注目されるように。

昨今、”ダイバーシティ”というキーワードが、多方面で頻繁に取り上げられ、熱を帯びています。たとえば、史上初の米国黒人女性副大統領の選出も、その一例でしょう。産業の面でも、日本の働き方改革にも関連し経済産業省が企業にInclusion & Diversityを推奨(『ダイバーシティ2.0一歩先の競争戦略へ』(経済産業省,2020.9))するなど、まさにI&Dは世界規模の力強いうねりです。

こうしたダイバーシティ/多文化包摂の変化は、アート業界にも広がっています。かつての中心は(主に男性の)欧米系アーティストでしたが、近年は非欧米系出身のアーティストも注目を浴びるようになりました。

今回ご紹介する「アナザーエナジー展:挑戦しつづける力 – 世界の女性アーティスト16人」も、出身地・現在の活動拠点・表現方法が多様な女性アーティストたちの作品約130点を展示しており、まさにアート業界にもダイバーシティの風が吹いてきていることを表しています。2021年現在皆70歳以上の彼女たちは、いずれも50年超の作家としてのキャリアを持ちます。彼女たちが、その人生を通じてこれまで作品を創り続けてきた原動力「アナザーエナジー」とは何か。私も、本展示テーマ「アナザーエナジー(Another Energy)」と「挑戦しつづける力(Power to Continue Challenging)」は何を指しているのか、興味を持ちながら鑑賞しました。

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リリ・デュジュリー(ベルギー) 「無題(均衡)」1967

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激動の時代、16名のアーティストは変わらぬ信念を持ち、変化に向き合いながら様々な形でアートを続けた。

16名の作家はみな激動の人生を生きてきました。戦争/内戦、政治問題、移民、人種差別、ジェンダー問題、暴力など様々な社会問題による、彼女らが置かれた環境の変化。または、母国を離れることや出産といった、個人的な変化。このような変化からの影響を原動力に、彼女らは感じたことや自分の考えをアートに昇華していきました。作品は社会に対する主張を持つように見えながらも、作家一人ひとりにおけるものでもあり、アーティスト本人の我の実現、実に個人的な作品のようです。女性作家だからということで、ジェンダーなど弱者問題の示唆だけを目的としているわけではありませんでした。彼女らが生きていく中で直面した様々な社会問題は人生の一つの転換期であり、彼女らはただ普通の一人の「人間」として成長していったのです。

出典作家のひとり、センガ・ネングディ[1943-/アメリカ]は、黒人女性であることから作品がフェミニズムやブラック・アーツ・ムーブメントと関連付けられることが多いと言います。しかし、実際には必ずしもそういったテーマではない、とも。ネングディを含め、出展作家たちはあくまでもそれぞれ自身の感情を原動力とし、生涯にわたりアート作品として創ってきただけのこと。もちろん中には社会運動的な作品・パフォーマンスもありますが、それは、社会問題に対してぶつけずにはいられない自身のエネルギーを表現した作品の一種と言えます。

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センガ・ネングディ(アメリカ) 「パフォーマンス・ピース」1978

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そうして積み重ねてきた70年以上の変化の力が、作家たちと作品の貫禄として表れていました。本展では彼女らの人生の流れに沿ったキュレーションとすることで、鑑賞者たちにもその人生・貫禄を伝えています。各アーティストへのインタビュー動画では、彼女らにとっての「時間とは何か」について尋ねています。長年生きてきた彼女らのストーリーに注目して展示を見ていくと、それぞれにとってのエネルギー(Another Energy)、作品の深みがより伝わります。
各アーティストのエリアの入り口には、紹介文と共に、”彼女らにとってのアートとは”についての短いテキストも掲載されています。

    • 「わからない」という状態が、私にとっては制作で新たな冒険をする動機であり続けました。 ― フィリダ・バーロウ[1944-/英国]
    • 芸術とは、私の中にある何かです。それは自分自身への、そして人生への好奇心です。 ― アンナ・ボギギアン[1946-/カイロ]
    • 私は何かを吐き出したい。話すのではなく。私の頭のなかの、心のなかの何かを。 ― ヌヌンWS[1948-/インドネシア]
    • それが一体何なのかを知らずに、作品を見ることができなくてはなりません。アートはすべての人にとって、言葉を介さず理解されるべきなのです。 ― ミリアム・カーン[1949-/スイス]
    • アートは人々を、そして芸術家たちを豊かにし、予想もしなかった道へと誘うのです。 ― ベアトリス・ゴンザレス[1932-/コロンビア]
    • 命かけて遊んでるっていう感じですね、一生。その遊んでる感じでずっと行ってますから、苦にならない。― 三島喜美代[1932-/日本]

※ 出典作家の一部。氏名[生年-/出生国]

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ヌヌンWS(インドネシア) 「織物の次元1番」2019

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本展をご鑑賞される前の方は、本展の目的を”「女性アーティスト」を集め「ジェンダーを含めた社会問題を示唆する」こと”だと推測されるかもしれません。しかし、彼女らの人生のストーリー、彼女らにとってのアートとは何かに関する解説を熟読しながら鑑賞していくと、「必ずしもそれだけではなく、他にも何かがあるかも」と思えてきます。鑑賞を終えた私には「16名のアーティストにとっての『アート』とは何か」が印象深く残り、自身にとってのアートとは何かを考えてみるようになりました。

作品の目的や形は違えど、彼女たちは共通して、アートが持つ社会への影響力を認識していました。かつては弱者の立場だった彼女らはアートを通して社会へ訴え続けていました。しかし、その訴えは彼女らのアートの一部であり、訴えた先の変化が目的でアートを続けていたわけではありません。自分の作品を社会運動の手段として使うかどうかは、アーティストによって全く異なりました。

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カルメン・ヘレラ(キューバ) 「赤い直角」2017-2018 ※手前

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彼女らの人生におけるアートとは何か。なぜアートを長年続けてきたか、続けてこられたか。
結局は、終わりのない自分への探求、真の追及だったのではないか。私はそう感じ取りました。激動の時代に変わらぬ信念を持ち、一生挑戦し続けていく力が、アートの原動力だと思います。今回出展したカルメン・ヘレラ[1915-/キューバ]も、〈バスを待っているように一世紀近く待っていた〉そうです。ヘレラはその「何かをずっと待っている力」でアートを続けてきたのだと思います。

このように、本展は社会問題を示唆することが目的ではなく、時代の変化を捉えつつ、その時代とともに成長した多様なアーティストの人生やアートを伺う多元的な展示を目標としていたのではないでしょうか。

 

アートとは人生そのものではないでしょうか。

各アーティストが自身に問い続けていた質問、アートとは何か。
16名の答えと、その長い人生を表した作品たちを鑑賞することで、鑑賞者もアートとは何かについて考えさせられます。

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三島喜美代(日本)「作品92-N」1990-1992 ※奥, 「作品 21-A」1990-1992 ※手前

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彼女たちに比べれば、私たちは平凡な日常生活を送っているかもしれません。ただ、社会的な問題でも、些細な個人の経験でも、すべては私たちに何らかの形で影響を与えます。アートというのは特別な芸術作品でなくても、狭義に誰かが何らかの意図で作ったものを指し、ある商品のパッケージや、子供の落書きといった些細なことでもひとつのアートと言えると個人的には思います。

こうしたアートは我々の身近に存在し、私たちは誰かのアートをどう受け入れ、どう考えて行動に移すかを常に選択します。その自分の感情や行動の積み重ねが人生であり、広義のアートになっていくのではないでしょうか。何を見たいか、何を追及していくかを選択していくことで、一人ひとりの人生というアートは変わっていくのです。

私事ですが、これまで私にとってのアートは捌け口でした。自分の中から溢れてくるインスピレーションを様々な形のアートにアウトプットすることであり、それによって心の最も深いところにいるもう一人の自分と対話することでもあります。しかし、今回の鑑賞を経て、「私のアートを鑑賞している、そこに立っている”誰か”と通じるコネクター」に少し変わりました。これまで自分だけのために好き勝手やっていたことが、鑑賞する人に伝えたいことは何かを考えるようになりました。

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宮本和子(日本)「黒い芥子」1979

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何かを挑戦し続ける力は人によって様々で、続けることだけが偉いというわけではありません。しかし私は、今回の展示会を通じてまた何かを続ける力を少し得られた気がします。このレポートも皆さんご自身の「アナザーエナジー」は何か、自分にとっての「アート」は何かについて考えるきっかけになれば嬉しいです。

ジョン ビンナ

テクノロジーグループ本部 セキュリティグループ アナリスト

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