福島で推進する「中小製造業の生産性向上プロジェクト」とは?
January 19, 2022
January 19, 2022
こんにちは。
テクノロジー コンサルティング本部アソシエイト・ディレクターのManabuです。
アクセンチュア・イノベーションセンター福島(AIF)では、地域産業活性化を目的として、中小製造業の生産性向上プロジェクト、Connected Manufacturing Enterprises (CMEs) を遂行中です。今回は、CMEsに携わっている私から、その魅力をお伝えしたいと思います。
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地域の中小企業が潤うことは、首都圏一極集中から脱却して地方創生を果たすうえでの必須条件であると同時に、日本の長年に渡る生産性低迷を脱却する活路とも言えます。皆さんは、日本の生産性が主要先進7か国の中では50年間最下位(労働生産性の国際比較 2020, 日本生産性本部)であり、中でも99.7%を占める中小企業(2021年版中小企業白書)の生産性低迷が足を引っ張っている実態をご存じでしょうか。そこには大企業に比べ中小企業のデジタル化が周回遅れである事実が深く根差しています。
会津若松では、会津産業ネットワークフォーラム(ANF)という、製造系中小企業を中心とした連携組織が存在しており、会員企業の経営者の方々と、中小企業にとって本当に必要な施策とは何かを、喧々諤々の議論から行ってきました。そのうえで核としていた考え方が、Connected Industriesという、データが事業所や部門を超えてつながり新たな価値を創出するという日本版Industry 4.0の概念でした。一方で、多数の中小企業の実地調査も経て、このような高度なデータ連携の姿を模索する前に、各社の社内業務プロセスを標準化のうえデジタル化を図ることが土台として必要であり、それだけでも大きく生産性向上の余地があることが分かりました。中小製造業においては、製造現場の仕組みの高度化のみを突き詰めがちであり、前後の一連の業務プロセスのアナログ・個別化が引き起こす生産性低下に気づけていないことも多いです。従って、まずは内側の業務・データからConnectedし、その延長線上で将来的に企業間でのConnectedも目指すというロードマップが中小企業にとっても現実的な“上り方”であると考えました。
Connectedの概念図(画像をクリックすると拡大します)
これを踏まえて、プロジェクトでは、個社としての全社最適化・高度化と、将来的な企業間連携の双方を視野に入れたプラットフォームをソリューションとして構築しました。広範の基幹業務(販売・生産・購買・在庫管理・会計)や一部製造実行管理業務、サプライヤへの発注連携までをカバーするシステムからなり、単純なツール化のみならず、単品別個別原価計算による収益性把握、所要に基づいた適正な発注提案といった、中小企業における典型的な課題解消を図ります。
そして、このプラットフォームのキーとなる考え方は、製造業における機能を競争領域と非競争領域に分け、後者を徹底的に標準化のうえ共有化も目指すことにあります。大半の基幹業務は非競争領域に該当し会社の強みには直結しないため、世の中のこなれたやり方に合わせてしまい、一方で生産技術や販促・マーケティングといった競争力の源泉たる業務を自社独自で尖らせることに集中するということです。
また、プラットフォームは中小企業相乗り型のクラウド型サブスクサービスとして提供される点も大きな特徴で、個社毎に個別開発・運用保守をする世界観から脱却します。
プラットフォームコンセプト図(画像をクリックすると拡大します)
2021年12月現在、パイロット実証の地である福島会津若松において、1社に導入が完了し、2社目の導入が進行中です。並行して、他地域へのプロモーションも活発化しており、既に複数社が導入検討中の状態で、まずは向こう3年で20社程度の導入は果たしたいと考えています。そして、その先は数百社へ拡げることを目指しています。
プロジェクトでは、プラットフォームを導入する企業への支援・構築から、導入後の業務定着化・運用保守まで、一気通貫で中小企業へサービス提供します。その中で、プロジェクトメンバーも大きくは、お客様のフロントで業務領域を担う役割と、構築・運用における開発やインフラ・アーキ領域を担う裏方の役割に分かれます。
フロントである業務領域は、上述の基幹業務・製造実行管理業務において、いずれかの業務領域を担い、プラットフォームにおける自身の領域の機能を手の内に入れ、お客様にその機能をベースとした標準業務を説明します。そして、お客様とのQAや論点検討を繰り返し、お客様の業務をいっしょに設計していくことになります。原則、プラットフォームに基づいた標準業務に合わせていただくので、単一のお客様に特化した追加機能構築は無い代わりに、BPR(業務改革)が一定のウェイトを占めることになります。もちろん、お客様の組織体系などシステムを動作させるうえでの設定やそのテスト、データの移行といったシステム導入タスクも存在しますが、お客様の業務を間近で見て導入支援するシーンが多いです。従って、お客様の業務そのものに対する探求心や改善への熱意が求められます。
裏方である開発、インフラ・アーキは、プラットフォームを下支えする番人としての働きが求められます。稼働しているプラットフォームで発生する障害の分析と対応、定常的なパフォーマンス監視、システムメンテナンスといった運用サービスをしっかり提供して、お客様に満足してシステムをご利用いただく必要があります。また、お客様と業務領域チームから連携される機能の改善要望に対して、技術的な目線で、他社への影響を把握し、プラットフォーム全体としてのよりよい作りを考えたり、利用企業が増えていっても安定した動作環境を提供するためのインフラ増強を、コスト影響も見ながら戦略的に図っていったりなど、プラットフォーム拡張の観点で中央集権的なコントロールを利かせる役目もあります。
ここまでの話は、プロジェクトの大義・コンセプトに共感いただけた方には、とてもポジティブに映ったかもしれません。しかし、ここで敢えて、現場の“リアル”はそんなに甘くはないことも率直にお伝えします。標準業務に合わせることを、我々はよく「既製服に体を合わせる」という表現を使うのですが、言うは易く行うは難しです。現行業務・システムのしがらみや慣習、ユーザひとりひとりの細部のオペレーションに至るまで、長年しみついたものを取り除くにはお客様側にも相当なパワーと変革に対する意志が必要となり、我々はそれを根気強く支えていくことが求められます。特に、従来管理していなかった数字を管理することで、今まで見えなかった不都合な真実、例えば原価割れ製品や無駄な発注・在庫なども、膿となって現れたりします。一部の業務ユーザからすると自身の従来業務を否定される思いもあるでしょう。しかし、そこに目を背け続けた結果が何十年にも及ぶ生産性低迷の歴史とも言えるわけで、お客様に対して、表層的な効率化に留まって安易な迎合で満足することなく、根底からの変革まで踏み込むという点が、まさにプロジェクトのやりがいになるでしょう。
また、もう一点強調したいのは、大企業における大規模プロジェクトでは、どうしてもひとりひとりが担う領域が部分的なものとなるため、それはそれで貴重な経験ではあるのですが、なかなか製造業の業務全体に対して横断的知見を養うには十分とは言えません。その点、コンパクトな中小企業はこれ以上ないフィールドと言えます。個人的考えですが、小規模案件で企業の広範の業務を知ってから、大規模案件特有の複雑さに立ち向かう方が成長もしやすいと思いますので、キャリア形成の面でも若手にとっては非常に有益と言えるのではないでしょうか。この記事を読んで、中小製造業の生産性向上プロジェクトにご関心をお持ちいただけたのであれば、ぜひAIFの採用にご応募ください。お待ちしております。
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