オペレーションズ本部 ITSMアドバイザリー プラクティス シニア・マネジャーの加藤明と申します。私はサービス管理を軸とした組織変革、運用モデル設計、プロセス、ツール導入のコンサルティングおよびインフラストラクチャーアウトソーシングの移行リードを担当しております。

今回は、最近リリースされたばかりのVeriSM™(ベリズム)について、まずその存在を知って頂くことを目的として概要をご紹介したいと思います。ただし、書籍に書かれている内容の翻訳ではありませんので、私の解釈を含んでいることを予めご了承ください。

  • VeriSM™とは
    まずはVeriSM™が求められる背景および特徴について説明いたします。



    ◦ Everything is a Service
    VeriSM™を理解するには、VeriSM™のサブタイトル「A Service Management Approach For Digital Age(デジタル時代のサービス管理アプローチ)」を理解するところから始めるのが良いかと思います。「Digital Age(デジタル時代)」とは、誤解を恐れずに言うと、すべてのビジネスがサービス化する時代であると言えます。クラウド、コンテナ、自動化、IoT、AIなどのNew ITを活用した企業のデジタルトランスフォーメーションが加速する中で、ビジネスそのものがサービス化し、もはや業種によらず、すべての企業がサービスを提供するプロバイダーだと言えます。

    ◦ ITサービスの管理から企業(エンタープライズ)レベルのサービス管理へ
    すべての企業がサービスプロバイダーになると、サービス管理の範囲はITだけではなく企業(エンタープライズ)全体となります。VeriSM™では、企業レベルから見た時に、如何にビジネス成果を達成するためにサービスを管理するか、そのモデルをVeriSM™モデルとして提供します。なお、ITサービス管理のフレームワークと言えばITIL®が有名ですが、ビジネス部門も含めた企業レベルのサービス管理となると、ITIL®だけでなくSIAM®、AgileやDevOps等様々な管理手法を組み合わせて最適化する必要があります。

    ◦ すべての企業が利用可能なテイラード(オーダーメイドな)アプローチ
    VeriSM™は、唯一のベストプラクティスを提示するのではなく、サービスの種類、ビジネスにおける優先事項、業界の制約、組織の規模、文化、人の能力・スキルなどに相違がある前提で、テイラード(オーダーメイド)可能なサービス管理のアプローチを提供します。一方で柔軟であるがゆえに具体性に欠ける内容になっている側面もあるため、この点については今後のバージョンアップで実践アプローチや事例が補完されることを個人的には期待しています。

  • The VeriSM™ モデル
    VeriSM™モデルは企業レベルでサービス管理を実施する際の運用モデルです。実際にサービス管理を実施する際に考えなければいけない要素が整理されていると思って頂ければと思います。大きな構造として、ガバナンス、サービスマネジメントの原則、マネジメントメッシュの3つになりますが、それぞれの内容をみていきましょう。

◦ ガバナンス
企業全体と統治・統制コントロールするための仕組みを確立します。COBIT5🄬がベースとなっていますが、コーポレートガバナンスの観点で情報開示のあり方や、監査役や社外取締役を含む取締役会など会社の機関のあり方等を定義します。

◦ サービスマネジメントの原則(ガードレール)
企業全体として厳守しなければならない原理原則(ガードレール)を定義します。すべてのサービスはこのガードレールの中でサービス提供を実施する必要があります。例えば、セキュリティ方針、法的な制限、財務的なルール、知的所有権、就業規則などITだけでなく企業全体を範囲に検討します。当社の場合、ここ数年は「働き方改革」という大方針の中で、人事面のルール変更やガバナンス(会議運営ルールなど)の見直し等が実施されました。こういったルールも、コンサルティングサービスを提供する際には遵守すべきガードレールとなります。

◦ マネジメントメッシュ
ガバナンス、サービスマネジメントの原則は企業として遵守すべき方針でしたが、マネジメントメッシュはそれらを順守したうえで、どうサービスを管理していくかを検討する領域となります。マネジメントメッシュでは、個別企業の環境、リソース、利用するテクノロジーに応じて、どの管理手法が最適なのかを検討します。具体的には以下のような検討項目になります。

● 企業を取り巻く環境
 ● 組織文化(保守的、リスク嗜好、サービスカルチャーなど)
 ● 競合他社(サービス比較、自社の市場ポジションなど)
 ● 法律の制約(内部統制や金融庁ガイドライン等)
サービス提供のプロセス、KPI、ツール(既存のサービス管の仕組み)
 ● その他

● 企業で利用可能なリソース
 ● 人(配置、採用、人材育成、スキル等)
 ● 予算
 ● 資産
 ● 納期
 ● ナレッジ
 ● その他

● サービスで利用するエマージングテクノロジー(NewIT)
 ● コンテナ
 ● IoT
 ● ビッグデータ
 ● クラウド
 ● 自動化
 ● その他

上記が整理出来た上で、最適なマネジメントプラクティスを(1つまたは複数)選択します。VeriSM™では以下のマネジメントプラクティスが書籍内で説明されています。


● マネジメントプラクティス
 ● ITIL®,COBIT5®,CMMI-SVC,IT4IT
 ● ISO/IEC20000, ISO/IEC27001
 ● DevOps, Agile, Lean
 ● Project & Portfolio Management
 ● SIAM®
 ● その他

実務的にはVeriSM™に記載されている上記検討項目の状況をそれぞれヒアリングしたうえで、どのマネジメントプラクティスが最適かを分析評価するという流れになりますが、このVeriSM™で提示されている項目についてもあくまで例示でありテイラード可能である点は覚えておいてください。(当社でもVeriSM™の要素を組み込んだグローバルアセットを使ったアセスメントサービスを提供しておりますが、今回はVeriSM™を理解頂くことが目的のため別途ご紹介させて頂きます)


  ◦ サービスライフサイクル
   サービスライフサイクルについて、VeriSM™モデルでは、大きく4つのフェーズ(DEFINE,PRODUCE,PROVIDE,RESPOND)で定義しています。それぞれの概要についてみていきましょう。

● DEFINE(定義する)フェーズ:
 ● 顧客要望・提案に対する承認
   顧客要望および提案からビジネスケース(投資判断をするための情報)を策定し、ステアリングコミッティで承認を得ます。

 ● 顧客成果及び要件の収集
   顧客が達成したい成果について要件(機能とパフォーマンス、法令及び契約の要件等)及び情報(既存ルール、設計等)を収集します。

 ● ソリューションの作成(非機能、運用面)
   ソリューションを構成するパフォーマンス要件(可用性、キャパシティ、継続性、セキュリティ)、ソーシング戦略、テスト要件、展開計画(トレーニング、コミュニケーション、マーケティング等)等を立案します。

 ● サービスブループリント
   顧客要望を実現するために必要なサービスを構成する要素を特定し、その詳細を視覚化します。(次フェーズのインプット)

● PRODUCE(生産する)フェーズ
 ● 製造
   サービスブループリントの仕様をインプットに、新しいサービスやそれをサポートするシステムを物理的に構築および調達します。

 ● テスト
   テスト要件(パフォーマンスパラメーター)やガバナンス、サービスマネジメントの原則に従ってテストを実施および評価します。

 ● 導入と評価
   サービス展開計画に従いサービスをリリースします。リリース前には、機能面、パフォーマンス面、運用面を含めたリリース判定を実施します。


本フェーズはサービスを生産する中で様々な変更が発生します。よって、サービスマネジメント原則に従った変更管理がより一層重要となります。

● PROVIDE(提供する)フェーズ
 ● 保護
   サービスの継続的な提供を保証するために、セキュリティ管理、リスク管理、サービス継続性管理等を実施します。これは基本消費者には見えない活動となります。

 ● 測定と維持
   日々の運用の中でサービスパフォーマンスを継続的に測定し、合意された品質に対する結果をステークホルダーに報告レポーティングします。

 ● 改善
   日々の運用の中から発生する新規または追加のサービスに対する要件を識別し、優先順位に従って改善活動を実施します。


サービス提供フェーズに入っても、サービス消費者がサービスを認知していない、使い方がわからない等の状態であれば、サービスは利用されずビジネス価値を生み出すことはできません。よって、認知度を高めるための活動やコミュニケーションを積極的に行っていくことが本フェーズでは重要となります。VerSIM™では、これらの活動を総称してマーケティングと呼んでいます。


● RESPOND(応答する)フェーズ
 ● 記録
   サービスデスク(SPOC)等が、サービスに対する問い合わせ、クレームや依頼事項等を受け付けて記録します。これらはサービス改善のインプットとして活用されます。

 ● 管理
   問い合わせや依頼事項に対する対応を透明性をもってコントロールします。サービス消費者には想定解決時間や現状のステータスなど解決にむけたコミュニケーションを双方向に実施します。


本フェーズはサービス提供後の”サービス消費者との接点(インターフェース)”となるため、サービスカルチャーやサービスマインドをもって顧客満足度を高めるような活動を主体となって推進していきます。

今回はVeriSM™を理解してもらうために、概要レベルに絞って説明いたしました。「デジタル時代のサービス管理」とは何か、特に、企業レベルでサービス管理を実施する必要性と、テイラードで最適なものを組み合わせるという考え方は重要です。またVeriSM™モデルとして定義されているガバナンス、サービスマネジメント原則、サービスメッシュの3層構造とサービスライフサイクルを構成する4つのフェーズはVeriSM™の特徴的な部分ですので押さえておきましょう。

次回は今回説明できなかったVeriSM™書籍に書かれている内容および事例のご紹介ができればと思います。


【参考】

▽ VeriSM™: デジタル時代のサービスマネジメント
https://www.exin.com/jp-ja/verism%e3%80%80interview/

● コンサルタントが語るITサービスマネジメント
https://www.accenture.com/jp-ja/insight-interview-cloud-itsm

● クラウド時代のサービス管理!複数サービスプロバイダー環境の課題を解消する「SIAM」とは
https://enterprisezine.jp/article/detail/11033

加藤 明

シニア・マネジャー

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