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最新の知見


自動車・産業機械インサイト・プログラム

デジタル・インダストリー4.0
つながる、変わる、関わるデジタルビジネスの到来

WELCOME

製造・流通本部
インダストリアルグループ
アジア・パシフィック統括
マネジング・ディレクター
河野 真一郎
本格化する「インダストリー4.0」日本企業の競争力向上の機会に

自動車・産業機械業界向けインサイト・プログラムへようこそ。

本プログラムでは、かつてないほどの規模と速さで産業界を変化させるデジタルが自動車・産業機械業界にもたらすインパクトについて、業界サービスのメンバーが様々なアングルから考察した知見を紹介させていただきます。

いま、新しい産業革命の動きが本格化しています。その中心地はドイツです。「インダストリー4.0」という旗印のもと、産官学が緊密に連携して新しい産業構造を構築しようとしているのです。この動きは欧州全域に広がっています。

18世紀、蒸気機関が先導した変化を産業革命1.0と定義すると、20世紀の電気の普及は2.0、ITとの連携は3.0に相当するインパクトがありました。これらに続く産業革命として、モノどうしがネットワークでつながる(サイバー・フィジカルな)世界、「(デジタル)インダストリー4.0」が位置付けられます。

図表1 (デジタル)インダストリー4.0

図表1 (デジタル)インダストリー4.0


「インダストリー4.0」を支える要素は多様です。ものづくりの観点から考えると、工場が外部とつながることで、超高効率の生産が可能になります。例えば、機械・機器類に搭載されたセンサーからネットワーク経由で膨大なデータを集め、瞬時に解析した上で工場の生産計画に反映させる。いわゆる、インダストリアル・インターネット・オブ・シングス(IIoT)の世界です。

SNS上のつぶやきを集めて、リコールのリスクを回避することもできるかもしれません。工場はサプライヤーとも密に連携して、様々な部品や製品の需給を最適な状態に管理することも可能です。必要なものを必要なだけつくる、または必要なものを予測し先回りしてつくる。そんな時代が始まろうとしています。

図表2 CPS

図表2 CPS

アクセンチュアの提唱する「デジタル・インダストリー4.0」は、ものづくりのみを視野に入れたものではありません。出荷されたものは流通チャネルを経由して販売され、個人や企業のもとに届けられます。こうした流れはバリューチェーンといわれますが、チェーンはユーザーの手元で完結するわけではありません。

そこから先に伸ばせば、不要になった製品のリユースやリサイクルなど物流を伴う活動、ユーザーからのフィードバックを生産計画や次期商品企画などに生かすという情報の流れもあります。こうして、バリューチェーンの両端がつながります。私たちはこれを、「バリューサークル」と呼んでいます。

図表3 バリューサークル

図表3 バリューサークル

価値ある製品を生み出すには、「バリューサークル」に多様な才能やアイデアを巻き込む必要があります。また、ユニークな技術やノウハウを持つサプライヤーなど、個性あるパートナーとの連携も欠かせません。オープンイノベーションやWin-Winを実現するエコシステムは、「バリューサークル」の重要な要素です。


競争力向上への絶好のチャンス

生産設備や社会インフラ、流通、ユーザーとなる個人や企業、あらゆるものがネットワークにつながり、製品の需給最適化や付加価値向上を図るとともに、社会全体の効率を高めつつ人々の暮らしを改善・向上させる。欧州の産学官は真剣に、この壮大なテーマに挑んでいます。

フォルクスワーゲンやダイムラー、BMW、BOSCH、SIEMENS、SAPといった企業が参画するドイツに後れをとるまいと、米国の産業界もこの動きを注視しています。各企業が個別のアライアンスなどを通じて新時代へのアクセルを踏みこむ一方、GEやIBM、インテル、シスコシステムズ、マイクロソフト、グーグルといった企業がいくつかのコンソーシアムを立ち上げて、各分野での標準化などの活動を進めています。

ドイツを中心とするEUと米国の主導権争いの行方はともかく、重要なのは世界中の巨大企業が本気で「インダストリー4.0」に取り組み、競争力を劇的に高めようとしていること。残念ながら、そのような動きの中に、日本企業の存在感を見出す場面はほとんどありません。建機へのIT装備で世界をリードしてきたコマツなどの一部企業を除けば、欧米の先進企業に比肩し得るビジョンや戦略を持ち合わせている企業は少ないのではないでしょうか。

しかしながら、日本企業の実力をもってすればまだ間に合います。革命と呼ばれるほどの変化の波を乗りこなすことができれば、日本企業の競争力は高まり、大きなビジネスチャンスをものにすることができるのです。

アクセンチュア 自動車・産業機械業界インサイト・プログラムを通じて、同業界で事業を推進するお客様に気づきや価値ある情報を提供できますことを祈念しております。

詳細資料ご希望の方は アクセンチュア製造・流通本部 までお問い合わせください 。

IIoTが変えるモノからコトへの転換

戦略コンサルティング本部
マネジング・ディレクター
和氣 忠
大きなチャンスを生む新たな価値とは?

IIoT(Industrial Internet of Things)の時代はすでに始まっています。世界を見渡すと、自動車や産業機械、他の様々な分野の企業が大きな可能性にチャレンジしています。

IIoTで何が変わるのか――。一言で言えば、「モノ」から「コト」への転換です。コトとは、顧客にとっての価値に他なりません。製造業にとっては、「製品を売る」からサービスへのシフトを伴います。最終的には製品に着地する場合もありますが、IIoTにより製造業のサービス化は加速することでしょう。

図表1 IIoTで何が変わるのか


図表1 IIoTで何が変わるのか
このサービス事業は顧客の困りごとを解決する、あるいは収益への貢献といった価値を提供し、それに見合う対価を得るというモデルです。すでに、こうした方向に一歩、二歩と進み始めた企業もあれば、すでにまったく新しいビジネスモデルを立ち上げた企業もあります。

センサーやアナリティクスの進化、必要な要素の低コスト化などは、顧客への価値を生み出すための手段に過ぎません。ただ、従来は手間とコストを考えるとできなかった価値提供が、様々な道具立てが揃ったことで可能になった。そこで、多くの企業がIIoTへの取り組みを強化しているのです。

IIoTが目指すのは従来型の改善のレベルにとどまるものではなく、新しい視点との組み合わせによる新しい価値の創造です。収益面としては、売上増とコスト削減にとどまらず、機会損失の最小化も大きなテーマです。また、目の前の収益が変わらないとしても、大きなリスクの回避につながる場合もあります。

コスト削減について、具体的なアプローチを紹介します。GEが打ち出したコンセプトは“Power of 1%”*というものです。たった1%の改善でも、世界全体で見ると大きなインパクトをもたらす分野があります。

*GE Industrial Internet:Pushing the Boundaries of Minds and Machines

世界の航空業界で1%の燃料を節減できれば、年間2500億円の利益が生み出されます。同じように、電力業界における燃料の1%は5500億円に相当します。石油・ガス業界における1%の資本支出削減は、7500億円の経済効果を生みだします。

図表2 センサーを利用して「コト」を変えた実現例


図表2 センサーを利用して「コト」を変えた実現例

以上の数値は経費の削減額なので、ダイレクトに利益を押し上げます。各業界にこのような効果をもたらすサービス事業者が出現した場合、実現した価値の1~2割をサービスフィーとして受け取るとして、それぞれの分野で数百億円から一千億円の市場が生まれる可能性があります。

IIoTはこのように大きな価値を実現する力を秘めています。すでに商用化されているサービスモデルの一例が、アクセンチュアとGEアビエーションが2012年に設立した合弁会社のタレリスです。

GEアビエーションは航空機エンジンのリモートメンテナンス、予兆管理などの分野で経験を蓄積しています。エンジンの温度や振動などのデータをセンサーで検知し、ネットワーク経由で収集して分析して部品交換や修理などに役立ててきました。一方、アクセンチュアのグループ会社であるNavitaireは、世界75社以上の主要航空会社に対して運行管理サービスを提供。業務革新や収益性の向上をサポートしています。

そして両社のノウハウを組み合わせることで、新しい価値提供が可能になりました。それは回避可能なメンテナンス費用を抑えつつ、航空機の稼働率を高め、サービスのダウンタイムを最小化すること。例えば、運行情報とメンテナンス情報を突き合わせることで、飛行ルートに近い最適な整備場と最適なタイミングを提案し、稼働率向上や遅延の防止などの効果を実現しています。

タレリスの例に見られるように、IIoTはオペレーションの最適化に寄与することができます。「モノを売って終わり」ではなく、オペレーションには様々なサービスの幅と長い時間軸があります。それは、幅と長さを掛け算した広い面積を持つ価値提供の機会なのです。


IIoTに取り組む際のアプローチとは?

日本の製造業にとっても、IIoTは大きなチャンスです。例えば、日本企業が得意とする生産技術、匠の技などをデジタル化することで、これまで以上の価値を創出することができるでしょう。

匠の技というと、デジタル化は困難と思われがちです。しかし、センサーや制御機器の高度化により、デジタル化が可能な領域は広がっていきます。こうした動きに積極的に対応することで、価値を実現するスピードの向上、あるいは顧客層の拡大が期待できるでしょう。アナログな技術をいったんデジタル化することで、技能伝承をスムーズに進めようとしている企業もあります。

IIoTによって工場の生産性を高めれば、当期の業績を向上させるだけでなく、設備投資計画にも影響を与えます。例えば、最適制御により100のキャパシティが130、150にアップできれば、新設する工場のラインを5本から4本に減らすことができます。

以上は工場内の話ですが、IIoTは工場の外ともつながることで真価を発揮します。サプライヤーとの情報共有による部品供給の最適化には、すでに多くの企業が取り組んでいます。また、物流事業者や販売チャネル、関係する様々な企業とデータをやり取りして付加価値の最大化を目指すという動きもあります。

グーグルが買収したベンチャー企業のネストは、有名な先進事例です。サーモスタットを内蔵したデバイスを各部屋の空調コントローラーに取り付けると、人による温度調節を蓄積して快適室温の状況を学習し、快適な室内環境と省エネとの両立をサポート。さらに各家庭に向けて節電のインセンティブを提示し、電力需要をある程度抑制することも可能です。ネストを設置する家庭が多いエリアでは、電力需要を一定の幅で予測することも可能となります。それは、電力事業者にとっても大きな価値となっています。

家庭とつながるネストは、一方では電力事業者との関係を構築しています。両者を仲立ちして、それぞれに対してメリットを実現。しかも、社会のエネルギー効率向上にも寄与する新しいビジネスモデルです。

それでは、それぞれの企業はどのようにIIoTに取り組むべきでしょうか。「アイデアがなかなか出てこない」と悩んでいるようなら、当然のことかもしれませんが、顧客の困りごとをIIoTで解決できないかと考えるのが最初のアプローチでしょう。

次に、価値提供先の候補になるのは「顧客の顧客」です。顧客と一緒になって、どんなことができるかを考えるというのも一案です。

そのほかにも、自社のビジネスが影響する領域は幅広いはずです。関係する分野の企業それぞれにとって、何が課題か、それに対してIIoTでできることはないかと問うてみる。まずは、こうした取り組みを始めてみることが重要です。

IIoTが創出する新サービス、特にプラットフォーム型のビジネスではスケールが大きな意味を持ちます。多くの顧客を取り込むことができれば、それは学習のベースになります。学習を繰り返してノウハウを磨くことで、サービスの質をさらに高めることができる。同時に、スケールは顧客当たりのコストを低下させます。

したがって、いち早く一定規模に到達したプラットフォームは、その分野で圧倒的な地位を確立する可能性が高くなります。つまり、“Winner takes all”。世界中の企業がIIoTに前のめりになっている理由としては、このような事情があります。

先にタレリスの例を挙げましたが、アクセンチュアはIIoTの分野に早い時期から着目し、新しい時代に対応するための態勢を整えてきました。デジタル分野における戦略策定から実装までを一貫してサポートする新組織として、アクセンチュア・デジタルを立ち上げたのもIIoTを視野に入れてのことです。私たちはお客様とともに、IIoTの新しい可能性を切り拓いていきたいと願っています。

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デジタルで変わるマーケット

デジタルコンサルティング本部
モビリティ サービス グループ統括
マネジング・ディレクター
丹羽 雅彦
顧客価値を起点にサービスを創造する

進むマーケットの再定義

企業活動、消費者行動、機器の稼働状況など、あらゆる動向がデータ化され、多くの産業でリアルとデジタルの境界が曖昧になりつつあります。こうしたデジタル化のインパクトは各産業に例外なく発生し、例えば製造業においては、デジタル化により付加価値が機器単体からシステム全体に移行し、製造業からサービス業へのシフトを余儀なくされています。

タイヤメーカーのMichelin(ミシュラン)社では、運送会社向けにトラックとタイヤにセンサーを装着。燃料消費量やタイヤの空気圧、気温、スピード、ロケーション情報を収集・分析し、最大で走行距離100kmあたり2.5リッターの節約を可能とするような、燃料消費量の削減サービスを提供しています。走行距離に応じた使用料を支払うサービスも同時に提供。自社の位置付けを、タイヤを売る企業からタイヤを媒体としてより効率の良い走行サービス(Tire as a Service)を提供する企業へと再定義したのです。顧客との接点をタイヤ販売時点から、タイヤの利用期間全体に拡大し、さらに顧客に寄り添ったサービス提供ができているのです。

また食品・飲料メーカーのNestle(ネスレ)社は、エスプレッソ機器とコーヒー豆のカートリッジを提供するNespressoサービスにより、自社をコーヒー飲料の製造・販売業から、上質なエスプレッソを毎日味わうことのできる顧客体験を提供する企業へとシフトさせています。Nespressoは直販の店舗やEコマース、ソーシャル、YouTubeによるビデオなど、複数のチャネルを活用して、顧客接点を増やし、顧客一人ひとりの嗜好を把握することに成功しているのです。

デジタル時代においては、自社の売り物を再定義し、新たなサービスを創出する動きが、製造業だけではなくあらゆる産業で起きています。

図表1 デジタル活用 新サービスによる市場拡大

図表1 デジタル活用 新サービスによる市場拡大小売市場を例に挙げると、「買い物を楽しむ」市場ととらえることで、顧客が商品に興味を抱く時点から、商品選定、商品のレコメンド、店舗やネットでのショッピング、購入後のフォローまで、顧客の購買行動全般に対応が必要な広範囲なマーケットに変貌します。このときのプレーヤーは小売業だけではなく、通信、消費財メーカー、Eコマースなど幅広い業種が参画することとなります。

従来から製品の販売からサービス化への流れは存在しましたが、デジタル時代において特徴的なのは、主に次の2つです。1社ですべてに対応するのは困難なため、オープン化されたプラットフォーム上で、異業種のプレーヤーと共同でのサービス構築が必要となる点と、データを活用してサービス化していく点です。そのため新規サービスを構築したい企業は、組むべきプレーヤーや取得すべきデータについて議論をスタートすることが多くあります。しかしここに思わぬ落とし穴が存在するのです。


ビジネスモデルからスタートしない

筆者は、製造業などの新たな顧客サービス構築を支援する機会が多くあります。その際に、「誰と組み、どんなエコシステムを作るのか」「どんなデータをどのタイミングで取得できるか」「データをどのように分析してセールスに活かすか」「どうマネタイズするか」というビジネススキーム(狭義のビジネスモデル)の議論に時間を使うことが多々あります。しかしその議論には違和感を覚えます。これらはすべて供給者サイドの都合を議論しているに過ぎないからです。最初に考えなければならないのは、「どう売りたいか」や「どんなモデルを作って継続的なビジネスをしたいか」ではなく、「顧客にどのような付加価値をもたらすか」です。バリューチェーン自体の付加価値をいかに高めて参画企業に便益をもたらすか、と言い換えてもよいのではないでしょうか。この価値の議論を抜きにサービスを語ることはできません。

革新的なサービスを生み出し続けているアップルのティム・クックCEOはApple Payの発表において、「従来の決済サービスはビジネスモデルにフォーカスするが、Apple Payはユーザー・エクスペリエンスにフォーカスした」と語っています。つまり誰から手数料をとり、決済情報、購買履歴をどう利用するか、といったビジネススキームではなく、クレジットカード番号を入力することなく、セキュアな状態でタッチのみで買い物ができる、顧客体験を創出しているのです。

前述の図表1を再度見ていただくと、従来市場の左側はサービスの分類を示しているに過ぎませんが、新市場の右側は「移動する」「健康を維持する」など顧客体験を中心とした動詞となっていることがわかります。つまり、市場を創造するには、新たな顧客体験を通じて、いかに顧客への価値を提供できるか、をまず考えなければならないのです。データを取得できるのも、顧客が新サービスに価値を見出してからです。

とはいえ、新たな領域で顧客ニーズをとらえるのは至難の業です。成功するサービスはどのように作り出していくべきでしょうか。


顧客ニーズをキャッチしサービスを常に変化させよ

現在、成功しているサービスも、最初から最終形を思い描いて作られたものは多くありません。例えば建機メーカーのコマツ社が提供しているKOMTRAXでは、世界中の建設機器の稼働データをリアルタイムで分析し、メンテナンスサポートのみならず、景気の先行指標の提供ができています。しかしKOMTRAXも当初は盗難防止のサービスとしてスタートしました。一定のボリュームを超えたデータが集まるようになってから、景気動向をつかみ、需要予測に活用できるまでに成長したのです。

また、累計で850億ダウンロードを超え、モバイルアプリという巨大なマーケットを作り出すことに成功したアップルのApp Storeも同様です。iPhone発売当初は、アップルはiPhoneの付加価値とも呼べるアプリを自社ですべてコントロールしたいと考え、開発環境は一般公開されていませんでした。しかしハッカーによるJailbreakなど、ユーザーによるアプリ開発の機運の高まりを感じると、即座に方針を変更。SDKを公開したのです。その際に単なるSDK公開にとどまらず、App Storeを開設し、市場を同時につくるとともに、収益基盤を作った点がアップルの秀逸なところです。

フェイスブックも、いまではニュースフィードによる近況のシェアがサービスの中心ですが、もともとはフェイスブックというネーミングのとおり自己紹介サイトでした。

このように成功するサービスは、最初からすべてがわかっていたわけではありません。むしろ予想外の展開によりサービスが成長しているのです。重要なのは、潜在化されていたニーズが表面に現れるとすぐに動き、サービスに取り込んでいく姿勢です。


高速なプロトタイプでニーズをつかめ

ここでキーとなるのがデザインシンキングによるプロトタイプ思考です。論理的にビジネス課題を詰めて解を出していくロジカルシンキングに対して、デザインシンキングのアプローチでは感性を重視し、考えるより先に動くことが要求されます。

図表2 プロトタイピングによるサービス創出イメージ


図表2 プロトタイピングによるサービス創出イメージ新しいアイデアが出たら、まずはプロトタイプを作り、市場で試してみます。市場環境が急速に変わり、顧客ニーズもとらえにくい現在の環境では、サービスが成功するかどうかはやってみないとわかりません。とくに新しいサービスは何が顧客の心をとらえるか、事前に予測することは困難であり、じっくりと戦略を練った上で行動するのは高いリスクがともないます。戦略を練っているうちに市場に変化が起きる可能性が高く、何が正解かは誰にもわからないのです。それならば実験的なアプローチにより、まず小さく試してみる。うまく試行できたものはより深耕する。うまくいかなかったものは、きっぱりとあきらめてすぐに新しい試行をする。小さなプロトタイプを、迅速に柔軟に繰り返すことで、真に顧客に価値をもたらすサービスを創造することができるのです。

アクセンチュアにおいても、従来の業務・ビジネスへの理解をもとにビジネス課題にフォーカスし、原因分析、課題解決をめざすロジカルシンキングアプローチと、感性に訴えデザインの持つ力への理解をもとにアイデアを創出するデザインシンキングアプローチを融合させるべくUX Studioを設立しました。不確実性の高く、変化の大きい今日において、迅速にトライし、修正を繰り返すプロトタイピングのスキルは、大きな武器となるのです。

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オープン化による新たなエコシステムの構築

デジタルコンサルティング本部
シニア・マネジャー
菊池 祥平

デジタル時代に求められる「オープン化」という考え方

IIoTの普及により、あらゆるモノがデジタル化される世界では、企業が提供する付加価値が製品そのものからソリューションやサービスにシフトしていきます。近年のデジタル技術の成熟がトリガーとなって、あらゆる業界で競争に変化が生じています。

例えば自動車業界においては、これまで自動車という製品そのものの性能やデザインを磨き、国内外の競合としのぎを削ってきました。しかし、今後は自動車業界への参入を発表したグーグルやアップルが、デジタルの世界において自動車が提供する価値を再定義しようとしています。彼らは自動車自体を生産するわけではありませんが、強みであるコミュニケーションやエンターテイメント、地図情報やクラウドなどを駆使し、「運転する・移動する」というドライバー起点の発想で新たなサービスの構築を試みています。

デジタル技術を活用することで業界の垣根が取り払われ、競争環境や競争相手に変化が生じ、新たなエコシステムが構築されることでしょう。これからは、ハードからソフト・ネットワークまでも含めたサービス全体としてどのような顧客体験を提供できるかがカギとなります。デジタル時代を生き抜くために、前述のデザインシンキングに加え、「オープン化」という概念がとても重要です。「オープン化」とは自社に足りない資産やスキルを外部から取り込むこと、そしてそれを加速するために外部にとって魅力的な自社のコア技術・機能を広く公開することの両面を指します。市場や技術が複雑化している中、自社ですべてをまかなうという「クローズド」な考え方はもはや通用しません。グーグルやアップルは、自動車本体のハードや通信環境などは他社の製品やサービスを取り入れながら、圧倒的な顧客基盤をベースにコミュニケーションや決済などの機能を広く公開することで、新たなエコシステムでの存在感を強めようとしているのです。

では、実際に企業はこのオープン化をどのように実現すればいいのでしょうか。「外部の活用」、「自社機能の外部化」のそれぞれについて見ていきましょう。


外部の力をうまく取り込め

自社内に不足しているアセットやリソースがあれば、必要な技術やスキルを外部に見出して活用することで、製品開発のリスクを軽減し、商品化までの期間を短縮でき、さらには新製品導入に対する市場の受容性を判断しやすくなります。アクセンチュアでは、これを「拡張ワークフォース」と呼んでいます。これは単に優れたサービスに便乗すればいいというわけではなく、自分たちの強みを最大化するために相乗効果を生み出すパートナーを見極め、使いこなせなければなりません。

図表1 拡張ワークォースの概念

図表1 拡張ワークフォースの概念

オープン・イノベーションという考え方がこれに当たります。P&G社では、「コネクト&デベロップメント」をテーマに技術や知的財産を外部に求め、自社だけではできなかったイノベーションを実現しています。例えばグローバルブランドの1つプリングルスのポテトチップ1枚1枚に絵や文字を印刷する技術は、イタリアのあるパン屋で培われた技術を活用しているのです。ここではP&G社の顧客ニーズを発掘し、製品コンセプト化の力があってこそ、そのニーズを満たす力に出会えたことを忘れてはなりません。

近年はクラウドソーシングという、プロジェクトベースで人材を一時的に外部より調達する取り組みも増えています。特にアプリのデザインや開発の分野では、個人が企業との受発注を後押しするサービスも盛んです。さらにはIT業界で端を発したハッカソンというプログラマーたちが技術とアイデアを競い合う開発イベントをご存じでしょうか。最近では企業単位でも実施され、例えばフェイスブックの「いいね!」機能のアイデアは、社内ハッカソンから生まれています。日本企業でも取り組みの事例が増えてきていますが、このような自由に発想する「場」をいかに提供できるかが、特に組織の制約が多い大企業にとって大きなチャレンジとなるでしょう。


自社のコア機能を外部化せよ

自社のサービスを外部化することによって、既存ビジネスのスキームや事業構造などを抜本的に変え、一部のテクノロジー先進企業だけではなく、既存の企業にとっても新たな価値の創造やサービスの提供につなげることが可能になります。他社にとって魅力的なサービスを見極め外部化することで、前述の外部の力を取り込むサイクルが一層加速するのです。

具体的には、API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)の形で公開することにより、これを実現する企業が増えています。グーグルやアマゾン・ドット・コム、フェイスブックなどの先進企業は、自社の基幹システムの持つコア機能のAPIを外部に公開し、ユーザーや他企業に提供することで、エコシステムを拡大して市場での影響力をさらに強めています。こうした先進ウェブサービスの企業だけでなく、APIの外部化やプラットフォームとしての提供によって、異なる企業同士の連携や業界横断的なマッシュアップの素地ができあがり、企業が持っていた既存システム上の資産の利用頻度や活用方法が劇的に進化するという例も出てきています。

日本国内では自社の独自サービスで囲い込みを狙う傾向が強い携帯キャリアですが、たとえば北米の大手通信事業者では音楽や広告、位置情報やアプリ内課金など、積極的にAPIのオープン化を進めることで同社の収益増加やシェアの拡大につなげています。物流大手のDHL社では顧客企業や一般家庭、SNSなどのサービスにいたるまで幅広くAPIを公開し、あらゆる外部の情報を取り込むデータ基盤を構築しました。リアルタイムルート検索などのオペレーション効率化や、顧客満足度向上の施策だけでなく、分析したマーケットデータの外販などの新しいビジネスの創出を実現しています。国内に目を向けると、日産自動車は車両・位置情報や走行距離などのデータを、APIを介して損保ジャパンに提供し、走行距離に応じて保険料を設定する新しいサービスを始めました。いまは走行距離のみを活用していますが、今後さらに粒度の細かい情報を活用することにより、さらなるサービスの高度化が図られ、新たな異業種のプレーヤーとのサービスが創出されることでしょう。

一般の企業がAPIを公開するためのソリューションを提供するベンダーも出てきました。Apigee社やMarshery社は、企業向けに「APIプラットフォーム」を提供しています。APIプラットフォームは、業務システムのインターフェースと様々なサービスをつなぐ機能を提供するだけでなく、APIの開発・管理・開放やセキュリティ・パフォーマンスの管理、さらには開発者コミュニティや分析機能にわたるまで豊富な機能を提供しています。企業がオープンプラットフォーム化する準備から、外部パートナーと連携するビジネスモデルを作り出すことが可能となり、自社APIを公開しエコシステムを進化させる取り組みがこれまで以上に容易になっています。

図表2 API活用を進めて社内の資産を外部化


図表2 API活用を進めて社内の資産を外部化

例えば米国最大規模のドラッグストアチェーンでは、店舗の写真印刷機でスマートフォンの写真を印刷できるアプリのAPIを外部に公開することで、店舗印刷の需要を呼び込むとともに、店舗来客の機会向上と売上の増加に成功しました。米国大手自動車メーカーでは、駐車場サービス会社にAPIを公開し、ドライバーが駐車場の支払いを完了するまで車のドアロック解除を無効にすることで、未然に事故や犯罪を防ぐ取り組みを実施している例もあります。さらに海外のある運送会社では、自社システムのAPIを公開し情報連携を行うことで、ドライバーが取引先の各店舗のシステムにタブレットやスマートフォンなどのモバイルデバイスから直接つなぎ、配送リストを確認できるようなサービスが始まりました。これにより、ドライバーはリアルタイムかつ主体的に業務を進められるようになり、同社は業務効率の向上に成功しています。

このように、外部に自社サービスの利用を促進することで、これまでとは異なる新たなサービスや業態が生まれるチャンスが得られるのです。自社の強みを再確認し、社内外のパートナーをいかに惹きつけながら、新たなエコシステムを創出できるかがデジタル時代をリードするための大きなカギとなります。


オープン化を支援するアクセンチュアのデジタルサービス

今後はハードからソフト・ネットワークまでも含めたサービス全体として勝負することが求められ、まさに異種格闘技戦の様相を呈してきます。企業は自社内に閉じずに、オープン化による外部サービスの取り込みや自社サービスの外部化が、重要なテーマの一つとなるでしょう。自社の強みは何か、どの企業と組みどの企業と競争するのか、新たなエコシステムを自ら創り上げていくか、一部に組み込まれていくのか。加速するテクノロジーの変化への追従もさることながら、顧客やパートナー企業、バーチャル世界と、自社との関係を見直すことが重要です。

アクセンチュアは、デジタル時代において、企業のオープン化による飛躍的な成長を支援すべく、中長期的な戦略構想の立案から、顧客体験にフォーカスしたアプリケーション開発、APIプラットフォームの構築・運用にいたるまで一貫したサービスを提供します。

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デジタル化が与える自動車販売へのインパクトとは?

戦略コンサルティング本部
マネジング・ディレクター
太田 陽介

デジタル化が与える自動車販売へのインパクトとは?


インダストリー4.0は、デジタルの力を活用し、自動車の「製造方法」を飛躍的に高度化させようとしています。しかしその一方で、自動車の「販売方法」は看過されがちです。そこで、デジタルの力が変革を促す自動車販売の進化すべき方向性について解説します。

2000年代にあらゆる業界を襲ったIT革命の波は、自動車販売現場にも必然的に訪れました。当時、大手自動車メーカーならびに販売店が実施したIT導入は、自動車販売の現場に変化をもたらしました。しかし、残念ながら「モノからコトへ」に対応する変革にまではいたっていません。それは、つまり「従来、紙で行ってきた管理や業務をデータベースとPCで行った」に留まっているのです。

下記の例は、いずれもアクセンチュアが持つ2000年代の改革事例集からの抜粋です。

  • 顧客カードで管理されていた紙ベースの顧客情報が、データベースに登録されることで一元的に共有化され、常に最新の顧客データベースから検索やリスト抽出が可能に。これにより、漏れなく・タイムリーな顧客アプローチを実現。


  • 販売店現場の壁に貼られた管理表では、セールス活動のプロセスKPI(接触、試乗、査定、見積)の見える化は実現しにくい。これをPC管理による日報提出とすることで即時に集計され、リアルタイムな見える化を実現。KPIに基づく科学的なセールス活動の改善が可能になった。


  • マーケティング施策展開と来店数の相関、またWeb媒体別のリード誘引数とそこからの成約率などをデータ分析することで、マーケティングROIの定量化を実現。根拠に基づいたマーケティング計画を立案できるようになった。
このように、「従来、紙で行ってきた管理や仕事をデータベースとPCで行う」事例が多く見受けられます。当時はこうした手法も効果を生み出した改革テーマでしたが、これらが「モノからコトへ」に対応するための自動車販売現場を変革する最終的な解ではありません。

2000年代に行われたIT化と2010年代に叫ばれているデジタル化とは一体何が違うのか。「紙からIT」は道具の変化を指すのに対し、「アナログからデジタル」は世界観の変化を示しています。デジタル的販売現場では、次のようなサービスが可能になります。

<シナリオ1>
車検の予約をしていた顧客が、予定時間よりも大幅に早く販売店の駐車場を訪れた。駐車場設置カメラが車のナンバープレートを読みとり、CRMシステムに情報を連携させる。受付では試乗枠の調整を行っているタブレットに顧客情報がポップアップで表示される。同時にCRMシステムはインカムシステムに情報を連携、別の顧客の接客をしていた担当セールスマンのインカムに自動音声で先ほどの顧客の来店がアナウンスされる。一方受付では、タブレットに表示された情報から該当顧客の氏名、同伴者、用件などを把握した状態で駐車場に顧客を出迎えに行く。その間、数種類のコーヒー・ハーブティーを抽出可能なコーヒーマシーンは、CRMシステムから顧客の好みが伝達されて、飲み物を抽出。受付担当者が顧客を座席に案内したと同時にコーヒーを運んできたPepperが挨拶をする。

もう1つシナリオを想定してみましょう。

<シナリオ2>
新規顧客がショールームに来店。小さなお子様連れである。ある車種に興味を示している様子なので説明を開始するが、来店シートへの記入は「ちょっと見に来ただけ」と断られる。ここで、3Dプリンターで模型のミニカーをプリントしてお土産に渡すことを提案。車種と色の選定後、待ち時間の15分を使い飲物のサービスとセールスマン自身の紹介などソフトな情報集めを展開。出来上がったミニカーを渡し、顧客家族は楽しい雰囲気で退店。顧客の帰宅後も、お土産のミニカーをスマートフォンのアプリを通して見ると、拡張現実(AR)によって対応に当たったセールスマンのお礼メッセージが表示される。さらに、この車の情報を載せたサイトやSNSへの入口がポップアップ。顧客は再度車の詳細を見返すためにこれにログイン。セールスマンは来店時には確認できなかった顧客の氏名や連絡先を入手する。

こうしたシナリオは、いまあるIT技術の組み合わせだけで可能です。事実これらはすべて断片的ではありますが、アクセンチュアが支援する顧客企業で実際に構想されているシナリオなのです。

「車検で十万以上は支払うのだから、名乗らなくても出迎えてほしい。好みのコーヒーの一杯も出してくれないのか。もっと少額で利用できるホテルやアパレル、スーパーやコンビニですら嬉しいサービス体験ができるか否かで選択しているのに、車の販売店は不思議だ」。そう思う自動車消費者は少なくありません。

しかしアナログの世界観の中では、上述したようなシナリオは大多数の販売現場にとって人手やコストがかかり過ぎます。仮にコストをかけたとしても、情報や仕事の連携スピードが手作業では追いつかないという課題もありました。ここまでの内容をまとめると下記の2点になります。

  • デジタル化が自動車販売の現場に与えるインパクトは、ツールの変化ではなく世界観の変化という意味で、これまでのIT化とは明確に異なる。


  • 自動車販売の現場には「モノからコトへ」に進化するという積年の課題が残っており、これこそがデジタル化により解決が期待される。
最後に、ではどのようにして着手すべきか。まずデジタル化は世界観を変えるということが本質的なテーマです。そのため、5~10年先のある地点を定めて世界観の議論から入るべきです。いきなり最新の技術動向を調べて、どういった機器やITに入れ替えるかの実装の議論に入ると「紙→IT」のクラシックな思考に陥りがちです。

また議論の重ね方ですが、紙上の議論と報告で整理を重ねていると、尖った世界観の提言も角がとれていく傾向にあります。「世界観」を合意する最初のフェーズは、従来の戦略策定検討よりも感覚的なものを大切にする必要があります。世界観検討の最終成果物は紙ではなく映像を作り、ざっくりと経営の合意をとりつつ、そこから小さくイニシアチブを切り出し、現場でパイロットを繰り返して現実に着地させていく。こうしたアプローチを取れる企業こそが、近年素早く変化を遂げています。

これまで戦略フェーズでは網羅的・包括的に目指すべき将来像を紙上に描くというアプローチが主流でしたが、今後は、こうしたスタイルも変化させていかなければならないでしょう。

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IIoTが加速させるソフトウェアの時代

製造・流通本部
マネジング・ディレクター
相馬 修吾

IIoTが加速させるソフトウェアの時代-限界を迎える設計開発の「聖域化」

カギを握るのは「設計開発」の「工業化」


「モノ」のインテリジェンス ~ 重要さを増すソフトウェア作り

IIoT(Industrial Internet of Things)が議論される中で、センシング機能としてのモノという側面がクローズアップされています。しかし、最も革新的なことは、モノがセンシングつまりデータを収集する端末になるということ以上に、情報通信によってモノがモノ自身を緻密に制御することにあります。

例えば、ドイツが提唱している「インダストリー4.0」においては、部材とFA機器との交信から、より動的に製造工程や作業工程を変更できることが大きな付加価値となります。これはモノがインテリジェンスを持つということに他なりません。このような次元のモノづくりでは、インテリジェンスのソースであるソフトウェアに付加価値の比重が移ることは明らかです。これからはソフトウェアを組み込むことを前提としたモノづくりにシフトしていかざるを得ないでしょう。日本の製造業では伝統的に「メカ設計が回路設計」より、「回路設計がソフトウェア設計」よりも優先される傾向にあります。しかし今後は、自社のソフトウェアがいかに付加価値を生むかが、製品設計開発においても重要なファクターになるはずです。優秀なソフトウェアエンジニアにとっては活躍のしがいがある時代とも言えるでしょう。


製造業におけるソフトウェア作りの実態 ~ 「聖域」の限界

実際の製造業におけるソフトウェア設計開発の現場はどうでしょうか。企業によってレベルは異なるものの、総じてソフトウェアにおける付加価値創出に十分にはエンジニア人材を振り向けられてはいません。競争力を高めるような新規アプリケーションや汎用性の高いプラットフォームの開発よりも、むしろ量産開発や派生開発における既存ソースコードの軽微な修正、およびその修正に伴う膨大なテスト業務に、多くの貴重なエンジニア人材を充てているのが実態です。

これまで日本の製造業における設計開発領域は「聖域」と見なされ、付加価値を生み出す源泉であり、エンジニアの枠にとらわれない自由な発想こそが、新たな価値ある製品を生み出すと信じられてきました。「すりあわせが価値を生んだ時代」にはそれが特別に機能してきたと言えますし、今も魅力的な製品を作るためには自由な発想は欠かせないでしょう。しかし、そのことを踏まえた上でも、設計開発はすべて聖域化されてしかるべきなのでしょうか。

一言で設計開発といっても、そのバリューチェーンには付加価値の生み方が異なる様々な種類の業務が混在しています。例えば「研究開発」「技術開発」から「次世代製品開発」といった新規性が求められる業務のほか、「量産開発」やその中でも「派生開発」となると、新規性や発想力よりも業務上の制約を守ることの方が重要となる仕事が多くなるなど、多岐にわたります。加えて、「派生開発」など技術難易度が低くなるにつれて、反比例的に業務量が増加する傾向にあります。その結果、本来は新しい技術開発に携わるべきポテンシャルの高い若手エンジニア人材が、量産・派生開発業務の中でも付加価値のあまり高くない仕事に従事しなければなりません。その膨大な仕事量をこなすだけで日々忙殺されるという事態に陥ってしまうのです。

近年製品の開発サイクルは短くなっていく傾向にあり、既に膨大となっている量産・派生開発業務は今後も増加の一途を辿るはずです。しかも将来的には日本の少子化および理系学生の減少も予測されています。現在、設計開発の上流に人材を割けていないわけですから、このまま設計開発を「聖域」として放置することは、ソフトウェア作りを中心としたモノづくりにおいて致命的とさえ言えます。


設計開発でのオフショアリソース活用 ~その失敗

このような業務量増加に対する国内エンジニアリソースの不足によって、一時期ブームとなったのが、「設計開発のオフショア化」、つまり海外のエンジニアリソースによる補完です。この潮流は、今後益々加速することになるでしょう。中国やインドなど単価の安い新興国のエンジニアリソースに業務を移行する動きは10年以上も前から取り組まれています。今後も優秀なエンジニアを低付加価値業務から解放するため、グローバル化の流れにおいても、さらに求められていくはずです。

しかし、これまでの設計開発におけるオフショア化の多くは、言語や文化、物理的な距離や時差などの障壁ゆえに「業務をきちんと教え込むことができない」「Q&Aが大量に発生して開発が止まる」「品質が上がらずに手戻りが多い」といった課題もありました。結果、現地に大量の日本人エンジニアを送り込む必要が生じるなど、「余力を生む」効果には至らない事例も多く見受けられました。加えてコストにおいても同様に、一定の業務量に対してどの程度コストがかかっているのか、きちんと把握しているケースは稀でした。オフショアの「単価の安さ」にのみ着目するあまり、生産性が悪化することにより日本人で業務をこなすよりも高コストになっていることに気付いていない。コスト効果の刈り取りどころか、そもそも総コストさえ把握していないケースがほとんどとなっていたのです。

かつて日本の製造業は、製造工程においては海外への工場移転を成功させてきました。なぜ設計開発でオフショア化に失敗するのか。キーは「工業化」にあるのです。


「設計開発の工業化」 ~製造工程における工業化に倣う


日本の製造業が隆盛を極めた理由の一つに、製造技術・生産技術においての工業化に秀でていたことが挙げられます。ソフトウェアにおいて製造工程は単なるROMへの焼き付けであり、そこに技術差別化要因は入り得ないことは明白です。ソフトウェア作りが中心となるいま、求められているのは製造ではなく「設計開発の工業化」、つまりソフトウェアエンジニアリングを工業化するということです。ここでの工業化は、すなわち、作業の可視化と整流化(技術的な知見が必要な「判断」と、判断に従って決められた業務を行う「作業」の仕分け)による属人化の排除となります。

製造工程を担う工場では、各作業が微に入り細にわたって可視化され、厳しく工程が管理されています。このように、ソフトウェアの設計開発工程でも付加価値の低い業務は「聖域」と認めず、「属人化を排し」「技術的な判断を伴わない“作業”を切り出し」、「反復可能な工程に落とし込む」、つまり工業化が求められているのです。

この設計開発の工業化ができてはじめて、オフショアリソースとの協業を成功させることが可能になります。特に量産・派生開発の中でも付加価値が高くない定数変更や簡単なコード修正、テスト業務などに工業化を適用することが必須なのです。工場と同様に、海外の安くて豊富なエンジニアリソースの活用が実現することで、そこから余力が生み出せてこそ、エンジニアとして自由闊達さが生きる開発業務に、優秀な自社エンジニアを振り向けることがようやく実現できるのです。

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