――将棋はどのように仕事に活きていますか?
S.Kさん “臨機応変に考えなくてはいけない”、“常に冷静でなければいけない”。これが将棋です。仕事にも役立つマインドとして、臨機応変に考えるという習慣と、常に冷静でいられるという点を将棋で身に着けました。たとえば、将棋の面白さともリンクしますが、次のようなことが言えます。
- 先の展開を読み(予測して)、そのさらに“先の先の手”を指すが、相手は必ずと言っていいほど自分が考えていない手を出してくる。考えすぎても仕方がなく、限られた時間で答えを出さなければいけない点=仕事において決まった時間内で最大のアウトプットを出す点が共通している。
- 冷静な意識を常に持つ。カッとなると先の手が読めなくなるので、客観的に状況を把握し続けるマインドも、仕事に置き換えることができる。
実際、仕事の最中に、私の中では感情的になりそうな場面でも、プロジェクトメンバーから見ると落ち着いて見えることが多いようです。頭に血が上ると肝心の“先読み”ができなくなるため、将棋を通して体得したスキルだと思っています。
T.Mさん S.Kさんは、わりと世間一般の人が考える“将棋をしている人”に近いと思いますね。統計だった考え方や理系的な思考をする人という意味です。
実際、若手棋士にはS.Kさんのような“細身でメガネをかけたインテリ”タイプが多いですが、年配の棋士はプロ・アマを問わず勝負師の気風の漂う人が多いように思います(笑)。
S.Kさん 理系思考になるのは、将棋には運の要素がないことも影響しているでしょう。自分の手の結果がすべて。自分のやったことからしか、結果が出ない。全責任が自分にある点も、将棋の魅力だと思います。
T.Mさん 確かに、将棋には考えても考えても尽きることのない場面がよくありますが、考え抜いても複数の選択肢が消せない。でも、自分がどれだけ追い込まれても決断を下し、またその決断によって勝つか負けるかに直結するところが面白いですし、仕事でも相通じるものがあります。
決断するには、何かしらの基準を設けなければいけません。その決断の指標の持ち方を将棋で学びました。
将棋では、私は積極的に攻めるタイプだと言われています。実際、決断に迷ったときは、“攻めても守っても五分五分なら攻めよう”と決めています。一方で、“守ったほうが良さそうという勘が6割なら守ろう”といった決断の基準も持っています。実際、仕事でも私はストレートだと言われます。仕事でも将棋でも、もっと懐の深さを磨いていきたいとは思います。私とS.Kさんは将棋の棋風と実際の性格が近いタイプだと思いますが、逆に、将棋での性格と、普段の性格が極端に異なる人もいますね。車の運転をすると性格が変わる人と同じ理屈で、個人的には、将棋をしている時の性格がその人の隠された本当の性格なのではないかと思います。
――お二人の将棋・仕事、それぞれの目標を聞かせてください。
S.Kさん 将棋においてはアマチュアの都道府県別代表において、東京都代表になることです。代表選手の枠は2名で、東京都代表は東京で最も強い2人という位置づけですので、全国トップクラスの実力になることを目指しています。将棋は、もはや私の人生の一部になっています。
将棋でも仕事でも、他人と同じことはやりたくないですね(笑)。常に新しい技術を取り入れていきたいと思っています。
将棋と仕事の両立が目標で、仕事では“残業ゼロ”を目指しています。なかなか達成できていませんが、時間内で求められるパフォーマンスを発揮できるよう、生産性を高めて行きたいと思っています。
T.Mさん 私はS.Kさんほどカッコイイことを言えませんが、将棋は一生楽しめる趣味ですね。飽きることはないでしょう。
将棋においてはチームで出場する団体戦で成績を残し、勝利に貢献することが目標です。もう少し棋力が向上したら個人戦にも出場したいですね。
そのためには“自分が納得する手を選ぶ”というか、“自分がこの手を選んだのだから後悔しない”ことを意識しています。もし間違いに気づいても、ミスを重ねないことを考えます。仕事にでも、必ずどこかで誰かがミスをする局面がでてきます。そんな時に、一発逆転でリカバリーを狙うと深みにはまってしまう。大事なのは、どうやったら着実に軌道修正できるのか、ということです。
仕事での目標はワークライフ・バランスです。私は子どもの保育園送迎のために7時間勤務を2年ほど続けたり、育児休暇も2人の子どもの合計で20カ月近く取得してきました。男性のキャリア的には珍しいパターンかと思います。
今では子どもたちも成長してきたので、これからはワークへの比重を高めて行こうと考えていて、長く経験してきた連結会計システム構築の領域から、業務改革プロジェクトへと自分の経験を広げています。将棋で身につけたマインドで、これからどんどんスキルアップしていきたいですね。