クラウドセミナー資料
上下動を繰り返す経済環境に対応しエラスティックなITを確立する
クラウドコンピューティングを活用したITの確立
アクセンチュア株式会社
テクノロジー コンサルティング本部
テクノロジーコンサルティング統括
エグゼクティブ・パートナー
沼畑 幸二
IT投資・IT構造・IT活用で日本企業の抱える課題
かつて、日米欧3極体制の時代には、世界の需要の多くは先進国に集まっていた。新興国の消費が大きな比重を占める今、人・モノ・カネ・技術の流れは複雑化し、世界経済の先行きは読みにくくなった。アクセンチュアの沼畑幸二は次のように語る。
「今後、バブルの生成と崩壊を繰り返しながら、世界経済は成長していくものと考えられます。そんな時代に必要とされるのがエラスティック経営。ゴム紐のように伸び縮みできる経営です」伸びる時には積極的な投資で果実を収穫し、縮む時には成長市場への種まきをする。新事業への進出/撤退についても、市場環境に合わせて迅速に対応する。そんな伸縮性が経営とプロセス、ITに求められている。

このような観点で、企業のITは3つの大きな課題を抱えている。沼畑は「IT投資とIT構造、IT活用において、伸び縮みが難しい現状があります」と指摘する。アクセンチュアの過去の調査によると、日本企業のIT投資のうち保守運用などに使われる固定的なIT支出が76%。戦略的なIT投資は24%に過ぎない。一方の欧米企業はこの比率が53%対47%で、伸縮性は比較的高い。「固定的なIT支出が多いことが、日本企業のIT投資の伸縮性を低下させています。日本企業のシステムは非常に可用性が高いと言われています。それは優れた点ですが、一方ではコスト高の要因になっているかもしれません」と沼畑は言う。
次に、IT構造について。メインフレームからオープンシステムへの移行が進んだ1990年以降、システムの構造は複雑さを増した。業務ごとにアプリケーションが多数開発され、それらをつなぐインターフェイスがスパゲティ状に錯綜。新しいアプリケーションを導入しようとすると、他のシステムと接続するインターフェイスづくりに大きなコストを要する。当然、運用も複雑で手間のかかるものになる。
IT活用の分野にも課題がある。ハードウエアはピーク時に合わせてサイジングされているので、通常の時期には利用率が下がる。アクセンチュアの経験した事例では、サーバCPUの利用率は7~15%程度である。一方のアプリケーションについても、有効活用とは言い難い現状がある。自分のPCの中身を思い浮かべると分かるだろう。そこには、ほとんど使われていないアプリケーションが多数収容されているはずだ。企業システムにも、同じことが言える。
包括的アウトソーシングとクラウドコンピューティング
以上で見たITの硬直性は、エラスティック経営の足かせになりかねない。沼畑は「ITのコスト構造自体を変革する必要がある」と訴える。「単価の見直しや工数の見直しなど、従来型のコスト削減手法は短期的な効果はあっても、しばらくするとリバンウンドが起きてしまうことも多いものです。こうした手法も必要ですが、さらに一歩踏み込んで継続的にコストを削減できる方法、しかもITガバナンスを強化できるようなシステム構造改革に取り組む必要があります」
構造改革のキーワードは「持たないIT」である。そのためのアプローチは大きく2つ。包括的アウトソーシングとクラウドコンピューティングである。
包括的アウトソーシングは、システムごとに個別委託されている状態の見直しを意味する。現状でもアウトソーシングは多用されているが、大企業になると何十社もの委託先がシステム単位で運用を担っている。運用体系は乱立し、運用の中身がブラックボックス化しているケースも少なくない。
包括的アウトソーシングによって運用体系を整理・統合し、障害発生件数や工数など運用の現状を可視化する。どこに無駄があるのか、何が非効率を生んでいるのかが見えると、その対策も打ちやすくなります」と沼畑。可視化した上で品質やコストの目標と実績を管理しながら、PDCAサイクルを回す。こうして、運用コストを大幅に削減することができる。
次のクラウドコンピューティングは、ユーザーがインターネットを介して様々なITサービスを利用するという形態。企業がIT資産を所有する必要はない。その市場は年々拡大しており、2013年には国内で1000億円を超えるという予測もある。 「クラウドコンピューティングには資産のオフバランス化に加えて、導入までの時間の大幅な短縮、役に立たないサービスはすぐにやめられるといったメリットもあります。ただし、セキュリティや既存システムとの連携といった課題があることにも注意が必要。重要なことは、資産と業務、プロセスの視点から何を内部でまかない、何を外部に委ねるかという見極めです」(沼畑)
ITコスト構造改革に向けて、「持たないIT」は有効な打ち手になりうる。ただし、当然のことだが、すべての領域にそれを適用できるわけではない。どのITを自社保有すべきか、どの業務領域を自社で行なうか、そしてどのITプロセス・ITスキルを内部に置くべきか。内部と外部の境目を明確化するためには、自社のコアビジネスとは何かを問い続ける必要がある。それを冷静に検討し見極めることができれば、今回の不況をきっかけにスリムでエラスティックなIT構造を確立することもできるはずである。
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