事例紹介 ニューヨーク市311サービス
米国最大の規模と人口を誇る都市、ニューヨークは、その市政府の大きさと複雑さにおいても米国内で一、二を争います。50以上の行政機関を通じて、900種類以上のサービスを800万人の住民に提供しているのです。
ニューヨーク市政の課題
現在のニューヨーク市長、マイケル・ブルームバーグは就任時に、重点取組事項の1つとして、行政サービス水準の引き上げを掲げました。とりわけ、住民がサービスに関する情報を得たり、苦情を申し立てたり、問題の解決方法を問い合わせたりする際に、市の様々な機関に連絡を取るためのシステムやプロセスの簡便化が急務とされていました。当時、住民は市に何らかの支援を求めたければ、電話帳で14ページにわたる4,000以上の項目から該当する番号を探さなければなりませんでした。また市の方も、市民からの問い合わせの電話をしかるべき部署に繋ぐために40ヵ所以上のコールセンターを設置しており、ここに多くのヒト・モノ・カネが注入されていました。そこで市長が描いたビジョンは、あらゆる目的に利用可能な中央管理されたハイパフォーマンス・コールセンターを作るというものです。このコールセンターは「311」という覚えやすい番号をかければつながり、昼夜を問わず24時間、機械ではなくオペレーターが電話を取って、必要な情報や支援が得られるように素早く案内してくれます。こうした単一の総合的コミュニケーション・チャネルがあれば、緊急時以外のあらゆるサービスや問い合わせに対応できると考えられました。
「311市民サービスセンター」は、ブルームバーグ市政が初めて取り組む大型プロジェクトでしたが、行政組織が開設する市民サービスセンターとしてはかつてないほどに力の入った包括的なものでした。市はその設計、開発、および立ち上げを推進するため、カスタマー・リレーションシップ・マネジメント(CRM)に関する高いケイパビリティ、大規模なインテグレーションに関する豊富な経験、および大胆なソリューションを短期間で実現する能力を兼ね備えた一流のパートナーと手を組む必要がありました。そしてニューヨーク市が選んだのはアクセンチュアでした。経営コンサルティングと技術サービス、ならびにアウトソーシングを手がける世界でも一流の企業との評価があった上、多くの注目を集めるニューヨーク市の311プロジェクトを監督し、リスクを抑えながらそれを素早く遂行するためのスキル、経営資源、そして経験を持つと考えられたためです。しかもアクセンチュアは、同市の重要な技術プロジェクトの成功に貢献した実績もあり、ニューヨーク市の技術インフラを深く理解していました。
アクセンチュアの支援
アクセンチュアは、市の情報技術通信局 (DoITT:Department of Information Technology and Telecommunication)ならびに複数のハードウエアおよびソフトウエア・ベンダーと密に協力し合いながら、新しい市民サービスセンターと311ホットラインを迅速かつ効率的に立ち上げるため、自社とDoITT双方のプロフェッショナルで構成される4つのチームを編成しました。これらのチームはそれぞれ以下の業務を担当しました。
- 市、州、国の行政サービスに関する検索可能な情報データベースの作成と分類:アクセンチュアとDoITTのチームは、企業コンテンツ管理技術を利用してCRMツールに情報を入力し、市民サービス担当者が電話での問い合わせにすばやく回答するための基本情報構造を確立しました。こうして、市政に関する7,000以上の側面を扱った包括的なデータベースが出来上がりました。
- 全く新しい総合的コールセンター・オペレーションの構築:アクセンチュアは、最大450人の市民サービス担当者と支援技術インフラを収容する施設建設の指揮を執りました。このインフラは、Sunの「Solaris」をプラットフォームとして稼働するOracleの「Siebel CRM Call Center」(バージョン7)が中心となっています。このソリューションの重要な構成要素としてはその他に、Genesys Telecommunicationsによるコンピュータと電話のインテグレーション、NortelのPBX(構内交換)システム、およびCISCOのデータ・ネットワーク・ルータなどがありました。新設された4万5,000平方フィート(約4,200㎡) のオペレーションセンター兼テクノロジーハブは、年間1,500万件の電話を処理することができます。この数はニューヨークに次ぐ規模を誇るシカゴ市のコールセンターの年間処理件数の3倍に当たります。
- 多数の新しいオペレーション・プロセスの導入:アクセンチュアは提携先であるOracleのカスタマー・コンタクト・アプリケーション・シリーズ「Siebel CRM」と、Interwovenのコンテンツ管理ツールを活用しました。Interwovenが開発した企業コンテンツ管理プラットフォーム、およびSiebel CRMとの接続アプリケーション「Connector」を利用すれば、よくある質問への回答集、資料、および様々な行政機関やそのサービスに関するその他の情報といったコンテンツの編集、作成および分類、ならびにSiebel CRMを通じてそれらの公開が可能になります。つまり市民サービス担当者は、コンテンツの作成、管理、承認、およびSiebel CRMへの登録を単一のシステムによって実行できるのです。これにより、コンテンツの管理・配信体制が大幅に改善されると同時に、市のコールセンター・アプリケーションに提供される情報とウェブサイトに掲示される情報に一貫性が保たれるようになります。
- ニューヨーク市警の100を超える警察管区と「311」の連携:アクセンチュアは、ホットラインを通じて寄せられた日常生活に関する苦情の解消に役立てるため、ニューヨーク市の全122の警察管区と311システムのデータベースをネットワークで結ぶ作業を指揮しました。市民サービス担当者は、緊急でない通話のデータを該当する警察管区のコンピューターに送ることができます。これにより警察は、市民生活の問題をより迅速に分析し、最も効果的な対応を判断することができます。
この統合されたワンストップショップ型ソリューションは、市にとって全ての住民、来訪者、および企業と接触するための統一窓口となると同時に、ニューヨーク市が変革を率先して推進し、ハイパフォーマンスを追求していることの証となりました。これを通じて行われるサービスには次のようなものがあります。
- 市の行政機関の電話番号、所在地、業務時間を含む連絡先情報の提供
- 特定の手続きや公示事項に関する照会の回答
- 道路や街灯の補修から、出生証明書の発行、汚物収集の手配といった幅広いサービスの要請への対応
- 日常生活の問題や苦情の情報をニューヨーク市警へ報告
- 大規模災害発生時の市民に対する直接の情報伝達
- 公共政策に関する住民意見の収集
このプロジェクトは、大幅な組織改編、業務手順の変更、およびコンテンツの考案と収集作業を伴い、新しいコンピュータと新しいシステム、ならびに最新技術の独創的な組み合わせによって実行されました。ニューヨークの311サービスは、以下のような付加価値のあるメリットをもたらすように設計されています。
- 行政機関の情報やサービスをできるだけ利用しやすくする
- サービスをできるだけ効果的、効率的に遂行する
- サービス提供のインパクトをできるだけ大きくする
- 市政への負担を最適化する
- 市民の安全をできるだけ向上させる
ハイパフォーマンスの実現へ
アクセンチュアの支援を受け、ニューヨーク市はCRMのベスト・プラクティスを利用してサービス提供体制を変革し、ハイパフォーマンス組織へと変貌を遂げました。現在、ニューヨーク市民は「311」に電話すれば、昼夜を問わず市民サービス担当者と直接会話して、様々なサービスに申し込んだり、アムハラ語からズールー語に至るまで171もの言語による情報を取り寄せたりすることができます。この統合システムのお陰で利用者は、よりカスタマイズされたサービスを受け、より素早く問題を解決し、豊富な知識に基づく支援をより簡単に受けられるようになったのです。「311」の利用者の実に85%が、1回の通話ですぐに求めていた答えを得ています。
アクセンチュアはその後もアプリケーションの開発、保守、およびシステム・サポートに携わり続けましたが、2003年8月にこの新システムにとって究極の試金石となる事態が発生しました。全国的な停電により、市全体の機能が殆どマヒ状態に陥ってしまったのです。「311」には2日弱の間に15万件以上の電話が殺到しましたが、技術インフラは途中で停止することなく稼働し続けました。また311システムは非常に柔軟性が高いため、アクセンチュアのチームは受け付けた電話に優先順位を付けて対応するべく、ただちに補助オペレーターの緊急拠点を設置することができました。ニューヨーク市は既に様々な機関のコールセンターを統合することでコスト削減を達成していますが、長期的にはさらに何百万ドルもの削減ができる見込みです。またこの新サービスにより、ニューヨーク市警への911番通報の数は13年ぶりに減少しました。
311プロジェクトの実行は、明確なビジョンを持つ行政の構想がサービスを変革し、ハイパフォーマンス・ケイパビリティをもたらすということを如実に示す例です。ニューヨークの311市民サービスを見れば、同市がどのように業務に取り組んでいるかがよく分かります。たとえば、道路にできたくぼみに関する苦情が2,000件以上寄せられたことを受け、市は「NYC道路補修プロジェクト」を立ち上げました。何百万件もの電話から得られた総合的な情報によって、市は限りある活動資源をより効果的に管理することができます。問題に対応し、傾向を把握し、自発的に問題解決に当たるにはどう人材を活用すればよいかを分析できるのです。
マイケル・R・ブルームバーグ市長は「これはただの市民サービス・ホットラインではありません。ニューヨーク市政府が今まで作った管理ツールの中で最も強力なものです。もはや、これ無しで市政を執ることなど考えられません」と語っています。
サービス開始までの時間の短さも特筆すべき点です。市長が市政の利便性を高めると宣言してから僅か9ヵ月という早さで、この野心的な市民サービス・プログラムを開始するために、アクセンチュアの貢献が役立ちました。サービス開始から「311」は5,000万件以上の電話を処理し、世界で最も大規模で最も洗練された市民サービス・システムの1つとなりました。「311」は平日には平均4万5,000人以上からの電話を受けますが、その大部分は3分以内に処理されます。アクセンチュアはニューヨーク市の市民サービス提供能力の向上に引き続き協力しており、現在は311コールセンター用のインフラとアプリケーションの支援と改良を担当しています。DoITTが「311」のインパクトを評価するため住民に調査を行ったところ、次のような結果が得られました。
- 市民が市と接触することが多くなった。
- 支援がより速く受けられるようになった。
- 質の高いサービスが受けられるようになった。
- 市政府が役に立つと感じている。
2004年3月、ニューヨークタイムズは「311システム導入から1年、ニューヨークの悪しき官僚主義を和らげるか」という見出しの記事を掲載しました。この記事でニューヨーク大学トーブ都市研究センターのミッチェル・モス局長は、こう述べています。「これでようやく、ニューヨーク市民が本当に困っている問題の実態が掴めた。また市民はここで、余計なものを挟まずに市と直接コミュニケーションを取ることができる。ニューヨークのような大都市では、困った時にまずどこに相談すればよいのか、それが分からなくて困っている人が大勢いる。『311』がこれほど急速にニューヨークの文化に溶け込んだのは、驚くべきことだ」
このプロジェクトもまた、企業や行政機関のハイパフォーマンス達成に貢献するアクセンチュアの革新的ソリューションを示す事例のひとつです。
さらに詳しい情報については、ウェブサイトwww.accenture.comおよびwww.nyc.govをご覧ください。
公共サービスに関するアクセンチュアのサービスその他の詳細は、 お問い合わせフォームをご利用ください。
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