事例紹介
プロモントリー・インターファイナンシャル・ネットワーク
お客様名
プロモントリー・インターファイナンシャル・ネットワーク
お客様ウェブサイト
http://www.promnetwork.com/
プロジェクト
金融サービス:インフォメーション・テクノロジー
エグゼクティブ・サマリー
米国の銀行は、連邦預金保険会社(以下、FDIC)の定める「一預金者当り10 万ドル(約1千100万円、1ドル=110円換算・以降同じ)まで填補する」という制限に長い間苦しめられてきた。今日、新しいメカニズムによって、銀行は効果的に保険適用額を引き上げ、競争に有利なスワップ預金ができるようになった。
PDFダウンロード
全文をダウンロードする:「面倒なことはお任せ」 [PDF, 310KB]
面倒なことはお任せ
チャールズ・ウォード
白熱灯の発明家の一人、ジョセフ・ウィルソン・スワン卿をご記憶だろうか。スワンとトーマス・エジソンはそれぞれ特許を申請した。しかしその後1年以内に、この新発明が商売になると認識し、その可能性を実現させたのはエジソンだけだった。スワンは科学への貢献によってナイト爵を叙されたが、エジソンの多くの会社は数百万人もの顧客を手に入れた。結局のところビジネスにおいては、二番手で市場に参入して成功にたどり着くことは非常に稀なのだ。
同様に、銀行業界のリーダーで構成されるグループは、グループに参加する米国の銀行で銀行預金保険を共有・拡大することができ、最強の競争力となりうるような政府支援のネットワーク・メカニズムを作るアイデアを思いついた時、自らの銀行がすぐにでもそれを実現・実行したいと考えた。このコンセプトは、9,500行ある地域銀行が数十年間に渡り抱えていた問題、すなわち連邦預金保険会社の制度により一預金者当り10 万ドルまでは填補しなければならないという問題を、スワップ取引を可能にして金額の上限を廃止することで、地域銀行が解決の糸口を探れるよう手助けをすることだった。全国に広がる地域銀行が、より多額の預金口座をもつ顧客に、連邦預金保険会社の制度に従って預金保険を支払える方法を手にしたのは、恐らくこれが初めてだ。
「このアイデアは、他の人も素晴らしいと思うに違いないと考えた」と、米連邦準備制度理事会(the board of governors of the Federal Reserve System)の元副議長であり、現在は新しい企業であるプロモントリー・インターファイナンシャル・ネットワーク社(以下プロモントリー社)の副社長であるアラン・ブラインダー氏は振り返る。「自宅の庭で発見した油田は、来年もそこにある。しかしアイデアとは、そういうものではない。」
このような危機感から、プロモントリー社はたった20カ月の内に計画、設立、創業された。元米国通貨監督庁長官(US Comptroller of the Currency)でありバンカース・トラスト社の副社長であるユージーン・ルートビヒ氏と、米国通貨監督庁およびFDICで元上級職員であったマーク・ヤコブセン氏、そしてブラインダー氏がこの会社を組織した。
このような人々からなるグループは、自らの銀行業界の知識と、開発パートナーとしてのアクセンチュアがもつテクノロジー分野での専門能力を組み合わせることにした。その成功は明らかだった。一瞬にして規模、市場初参入、および信頼を獲得した。なぜならプロモントリー社は、企業を創出しただけでなく、預金口座証明登録サービス(Certificate ofDeposit Account Registry Service:CDARS)という独自の市場カテゴリーを創出したからだ。
CDARSには、明らかな市場のニーズがあった。米国中の銀行家は、FDICの定める10万ドルまでという保険料の制限を緩和するよう、何年間も議会に求めてきた。それ以上の預金額をもち、それに対する補償を必要とする顧客は、複雑きわまる手段を強いられてきた。例えば、10万ドル以上の預金がある個人預金者の中には、複数の金融機関に預けるという実に大きな労力を強いられる人も多くいた。そのため、ある特定の銀行にロイヤルティを持つことは非常に難しいことだった。また、地方自治体は、無保険の資金には担保として抵当をとるよう銀行に求めることが義務付けられていた。これは銀行にとってコストばかり発生し、地方自治体にしても銀行から見込める収益は小額というものだった。非営利団体、信託、および個人退職金積立制度も同様に、やむを得ず10万ドルの制限の対象となっていた。確実な流動性を必要とする企業は、ときに完全に銀行を無視し、財務省短期証券や他の手段を選択することで、自社の現金管理ニーズを満たしていた。
大規模なマネーセンター銀行や投資銀行の運営する金融市場における投資信託の劇的な成長が、小規模な銀行の顧客占有率を蝕んでいった。米国保険金融会社における技術革命は、マネーセンター銀行に大きな効果と規模の経済性をもたらした。したがって、地域銀行や地方銀行からはさらに多くを奪うことになった。米国におよそ9,500行ある小規模な銀行は、2002年の預金高3兆ドル(約330兆円)以上を保持したが、その数字は総預金額のたった25%であり、1975年の預金高の半分に過ぎない。
問題は市場占有率だけではなかった。実際には、預金が地域外へ流出することが問題だったのだ。国内の資本市場が、地域銀行の金融安定性を脅かすことになった。「地域銀行では、基礎的預金は貸出しするほどなく、極めて悪い状態だった」とプロモントリー社会長兼最高責任者のルートビヒ氏は言う。地域銀行はサービスを提供するその地域になくてはならない存在だ。地元の小規模事業者や消費者への貸出しを流動的に提供する存在だからだ。
プロモントリー社の新しい金融サービス「CDARS」は、こういったすべての条件に応え、複雑さを排除する対応策として開始された。加盟銀行は、数百万ドルの預金保険をFDICに申し入れることが可能になった。銀行がプロモントリー社のネットワークに加入すれば、その顧客は預金証書のポートフォリオをつくることができる。預金証書は、それぞれ10万ドル未満で他のネットワーク銀行に配布される。受取銀行はCDARSを通して同額の資金を送金する。CDARSは、親銀行が預金として記帳し、全処理ができるようにする。顧客は、CDARSのサービスを提供する銀行をネットワーク銀行の中から選択することができるが、取引はCDARSのネットワークの中でシームレスに行われる。つまり、機密金融情報が他の銀行に伝達されることはないので、顧客との関係は主要取引銀行だけに限られる。
銀行が資金を繰り入れるには、地元の預金を集めるのがもっとも経済的な方法だ。参加銀行は、他のあらゆる預金証書と同じように、CDARSの利率を地方の条件に基づいて決める。そして、プロモントリー社のサービスを利用する分だけその対価を支払う。したがってCDARSを利用する顧客は、保証と利便性を得ることになる。銀行は、安定した資金と顧客関係を得られる。またその地域は、地元でより多額の資金借用ができるようになる。「公共政策およびマクロ経済学の視点からすれば、これは経済を円滑にする手助けとなる。我われの望むところだ」とルートビヒ氏は言う。
CDARSが利益になるアイデアだったことは、創業者たちには自明のことだ。しかし、地域銀行に固有の保守的な性質を受け、プロモントリー社は、金融システムの安全性、健全性、そして完全性について証拠を挙げて説明しなければならなかった。そのため、銀行業界と当該規制自治体から、経験豊富で完全性を備えた著名な人物を揃える必要があった。ルートビヒ氏、ブラインダー氏、ヤコブセン氏の他に、プロモントリー社には、FDICの元会長であるウィリアム・シードマン氏とウィリアム・アイザック氏の2人、そして連邦準備制度理事会知事を最近引退したエドワード・ケリー・ジュニア氏、前米国上院議員ウォレン・ラドマン氏が加わった。
さらに、ルートビヒ氏は、銀行からCDARSのアイデアについての意見を積極的に求めた。地域銀行は各地に分散しているため、特殊なビジネス経験、組織構造、顧客の内訳を持つ銀行の意見に対しては、サービス開始前の貴重な意見として特に耳を傾けた。プロモントリー社は、その役員構成、目を見張る努力とCDARSシステムの事前試験が役に立ち、2003年初期にアメリカ銀行協会の支持を得た。
同様のプロジェクトを数多く手がけてきたアクセンチュアに、プロモントリー社から声が掛かったのは2001年8月のことだ。プロモントリー社の資金提供パートナーである世界一の手形交換組合銀行の1つも、FXallという電子外国為替ポータルの立ち上げを管理したアクセンチュアの実績を評価していた。アクセンチュアにはまた、IntercontinentalExchangeというB2Bの商品取引を行うプラットフォームを、わずか半年で構築した実績もあった。
十分に練り上げたプロモントリー社の事業計画に基づき、アクセンチュアのパートナー、チップ・ツァンテス率いるチームは、10カ月以上の時間をかけてCDARSのテクノロジー基盤を設計した。詳細な計画がひとたび完成し、資金が調達されると、プロモントリー社とアクセンチュアはシステム開発を開始した。プロモントリー社は技術力を持たないため、新システムについては、調達、カスタマイズ、構築、そしてテストまでの全過程がアクセンチュアに一任された。
ゼロからのシステム構築
わずか26週間のシステム構築段階(設計、構築、テスト、導入)を経て、CDARSは2003年1月にスタートした。「我われが全く何もないビルに入居した6カ月後には、実際に最初のCDARSの処理をするまでになっていた」とアクセンチュアのツァンテスは言う。「幸運にも、B2B取引の情報交換を基盤にしてシステムを構築できたことは、実に贅沢な経験だった。」
CDARSのプラットフォームは、一般的な帳票やサインオンなど既製のコンポーネントを使用する部分と、核となる処理、帳票、セキュリティや会計処理といったシステム統合用のカスタマイズされたソフトウェアから成る。中でも、セキュリティはシステムを左右する部分であり、顧客と参加銀行の両者にとって、データの安全性とプライバシーに関する最重要事項だ。サービス提供の対象となる銀行が事業を開始するにあたって、もう1つの関心事は信頼性だった。そのためC D A R S のテクノロジー・プラットフォームは、冗長性を盛り込んで設計された。
プロモントリー社のネットワークは、メンバー数が増加するとともに評価が上がり、あっという間に十分なメンバー数に達し、飛躍的な普及を遂げた。アクセンチュアは、テクノロジーの導入とあわせてトレーニング、運用、そしてマーケティングのモジュールを開発し、顧客と直面する問題と社内で抱える問題との両方に取り組んだ。その結果銀行は、その日のうちにオンラインでネットワークに加入することができるようになった。また、システムはすべて簡単に使えるように設計されている。「銀行は、信頼性とセキュリティの面で常に最高のものを要求する。しかし、同時に使い易さも追求するものだ。つまり、すべての銀行の既存ガイドラインを超える最新のテクノロジー・システムと、使い易さの両方を実現しなければならない」とプロモントリー社の社長兼最高執行責任者のヤコブセン氏は言う。
プロモントリー社がサービス提供の対象とする銀行は、9,500行ある。今日、事業開始6カ月となるが、そのうち500行以上の銀行が、CDARSネットワークに加入している。プロモントリー社が対象とする銀行の資産をすべて合わせると、米国最大規模の銀行と同等になるであろう。
CDARSサービスが普及して、地域銀行は2つの競争優位性に着目できるようになった。FDICの預金保証と地域関連性である。特に株式市場が高水準に達した2000年3月以降、投資家は、家庭でも企業でも、より確実な安全性を求め、結果、セキュリティの強化だけが強調されるようになった。「結局のところ、地域銀行は関係金融機関であり、預金保証の過程を担うものではない。CDARSは、経済界における地域銀行の足跡を取り戻すための支援を目指している」とルートビヒ氏は説明する。
チャールズ・ウォード
ニューヨークを拠点とするビジネス・ライター。
金融に関するアクセンチュアのサービスその他の詳細は、お問い合わせフォームをご利用ください。
トップへ