輝きを放つアイデア
シュテファン・ショルティセック
広報誌「アウトルック」日本語版 2011 October
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イノベーションは、世間の関心も高いハイテク企業同様に、基幹産業においても成長のドライバーとなっている。しかし、効果的にイノベーションを実践していると考えているエネルギー企業や資源企業が多い一方で、イノベーションを市場での成功に結び付けるという課題を完全に克服した企業は少ない。
エネルギー・資源業界は、わくわくするような技術で時代の先端を行くような業界ではない。パイプが運ぶのは原油と天然ガスであって、データではない。エコシステムを構成するのは母なる自然であって、多数のアプリケーション開発企業ではない。しかし、アップル、グーグル、フェイスブックといった刺激的な企業と共通するある特徴を、この業界は持っている。それは、継続的にイノベーションを実践することが企業の存続にとって不可欠であるということである。
エネルギー・資源業界にはソーシャルメディアや最新のスマートフォンのような華々しさはないかもしれないが、イノベーションの重要性は恐らく他の業界より高い。なぜなら同業界は世界経済の成長に不可欠な燃料や原材料を供給しているからである。しかし、同業界の企業の多くは、イノベーション能力に欠けており、多極化世界における競争力を損なう結果となっている。
欧米の国の多くが高い失業率、低成長、回復力が弱い市場に苦しんでいる一方で、かつて低成長に悩んでいたブラジル、中国、インドなどの国が好景気に後押しされて資源獲得の動きを加速し、その活動は石油から鉄鉱石、ウランに至るまで広範囲に及んでいる。したがって、自国市場の縮小に直面するエネルギー・資源企業にとって、成長を世界の舞台に求めるのは当然の動きだ。
しかし、業界を取り巻く環境にも変化が起きている。石油業界を例に検証しよう。新興国の国有エネルギー企業の競争力は向上しており、欧米企業が互角に勝負をするためには今後ともイノベーションを継続する必要がある。さらに、新興国の現地企業は採算性のよい、採掘しやすい石油やガスの鉱区を自国で取り込んでおり、欧米企業に回ってくるプロジェクトは、深海掘削、オイルサンド探査、あるいはシェールガス採取などといった、技術的に困難でコストもリスクも高いものである。
こうした業界の環境変化は、石油、ガスにとどまらない。工業用金属からレアアース、またコークスからカーボン・ファイバーに至るまで全てのスポット価格は、自国に資源をあまり持たない新興国が貪欲に買いあさる中で高騰を続けている。
コモディティ化した資源に対する需要が急増したため、それまで資本コストを賄うことができなかった一部の資源業界は難局を回避することができたが、今後を展望すると状況はさらに困難なものになるであろう。供給が需要に追いつき、資源獲得競争が一段落すれば、利益を伴う成長を生み出すことはますます困難になる。また、業界の統合が進む中で、トップ企業にとっては魅力的で新たな買収機会が大幅に減少している。
こうした環境下において、イノベーションは、さらなる成長をもたらす唯一の持続可能で差別化された手段となる。
筆者について
シュテファン・ショルティセック(Stephan Scholtissek)は、アクセンチュア素材・エネルギー本部のグローバル・マネイジング・ディレクターである。同本部で、公益事業、化学製品、エネルギー・天然資源といった業界における大規模な企業変革のサポートを行っている。生化学の分野で博士号を有し、2 5 年以上にわたり様々なイノベーションの分野での業務経験を持つ。また、各種イノベーション賞を選考する審査委員でもある。最も著名な著作にはフィナンシャルタイムズドイツ版でベストセラーと紹介された「New Outsourcing」(2004年)および「Innovation Excellence:Creating Market Success in the Energy and Natural Resources Sector」(2011年)がある。同氏はミュンヘンを拠点として活動している。
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