SFAがもたらした弊害と次世代SFAの展望
製造・流通本部 パートナー
関 一則
経営コンサルティング本部 戦略グループ マネジャー
網野 知博
次世代SFAの方向性
前回は、次世代SFAの基本コンセプトはセルフマネジメントであり、そのためには自らが気づきを得られる仕組みが必要であることを説明した。また過去SFAは単純な情報インプット、蓄積、情報アウトプットの仕組みであったが、これからはデータ分析がSFAの主役になることを紹介した。
過去のSFAにもアラート管理など本人が気付くための仕組みはあったが、根本的な発想はセルフマネジメントとは異なる。何かが起こった事をシステムが知らせるのではなく、「MR自ら全体像を俯瞰し、シナリオを追ってドリルダウンし、気づきを得られる」ことが望ましい。そのため、エンドユーザーが自ら考えきれないような解を分析やシミュレーションより短時間で導き出すことや、意識していない情報までも先読みや予想によりタイムリーに促すような仕組みが必要となる。

データ分析やシミュレーションの活用
ジェネリック医薬品の台頭に伴い、ドクターの薬剤選定要因が多様化している。全てのドクターに同じ資材で訪問していては効果が薄いが、個々に資材を作るのは効率が悪い。前回触れたように、消費財業界では当たり前に使われている統計分析を用いて、ドクターのタイプに応じて攻め方を変える手もある。クラスタリングによりドクターのタイプ分類を行い、プロファイリングによりドクターの行動様式を認識し、各人に適した攻め方を考える。デシジョンツリーを用い、自社商品のシェアの違いにおいて、病院やドクターの決定要因の差異を把握する。共分散構造分析により、潜在変数間の因果関係を定量的に構造化して、決定要因の主因を把握するなどがあげられる。
HPの訪問規制に伴ってGPを効率的に訪問していくことがより重要になり、また代替調剤が進むことにより、薬局のカバーも今後は重要度が増すと考えられる。結果的に、現在と比べて訪問先が飛躍的に増える可能性があり、効率的に訪問する事が鍵となる。
今はMRが各HPやGPの重要度に応じて月に何回行くべきか訪問計画を立てる企業は多いが、その後の具体的な訪問を最適化している企業はほぼ存在しない。訪問計画に従い、訪問回数や訪問頻度・間隔、訪問可能時間など制約に応じて最適解を算出すると、担当病院が100件の場合に訪問パターンは約4×10の51乗通りにもなる(詳細図は、掲載媒体「医薬経済3.15 2009」をご参照ください)。
もはや人間では計算不可能なレベルであり、この訪問の効率化にはシミュレーションなどのITが非常に有効となる。最終的にMRが見やすいように地図ソフトを入れる事もあるが、そもそもの発想が、地図ソフトを入れて営業支援をしましょうということではない。この手の仕組みを説明すると、MRは半年も立てば訪問先の場所が頭に入るため地図ソフトの仕組みは必要ないと誤解される方がいる。確かに訪問先の地図を表示するだけならSFAの機能としては大して役には立たないが、もはやスーパーコンピューターがチェスのチャンピオンを打ち負かす時代なのだ。実に4×10の51乗にも及ぶシミュレーションならコンピュータに軍配があがる。
蛇足ながらこの考え方を応用すると、営業先の訪問頻度や場所などをベースにシミュレーションを行い、「拠点をどこに置き、その拠点に何人のMRを配置すべきか」と言う事も判別可能になる。本社から見れば最適な人員配置を科学的に行えるため非常に有用ではないか。
意識していない情報も先読みや予想
WebやECの世界で当たり前に行われている、「パーソナライゼーション」や「リコメンド」がある。B2Cの世界では、いかに顧客に商品を買ってもらうか、より長い時間(ページ数)サイトに留まってもらうかを必死で検討している。SFAもいかにエンドユーザーに活用してもらうか、言い換えれば「コンバージョンレート」を向上させることが鍵であり、B2Cに学ぶべき点は多い。エンドユーザーが意識していない情報を先読みや予想によりタイムリーに促す仕組みは最たるものであろう。
イギリスの携帯事業者O2社は、「非常に小さい携帯画面からコンテンツを選択するのは大変で面倒」と言うユーザーを引き止めるために、利用者が希望するコンテンツを優先順位の高い順にメニューの上位に表示している。AI(人工知能)によりデータ分析を行い、加入者の好みや行動パターンを把握し、本人が気づかないうちに利用者が希望するコンテンツを事前に察知している。SFAの世界でもMRに画面の小さいPDAを持たせることが多いため、限りある画面ではこのようなパーソナライゼーションが有効になる。
最近はECサイトで買い物をすると、クロスセル(ついで買い)のお勧めをされることが多い。SFAも同様の仕組みを活用し、使いやすさが増すと考えられる。何かの処理をした際に、通常行う他の処理も一緒にするようにお勧めする、その処理をワンクリックでできるようにするなどである。
セルフマネジメントを推進するには、エンドユーザーが好んで使うような仕組みを構築する事が必要不可欠であり、そのためにもシステムの見た目や表現には非常にこだわる必要がある。機能を増やす、複雑にすることにテクノロジーを使うのではなく、エンドユーザーが使いやすくなるためにテクノロジーを使うことが次世代SFAに求められる要件である。
以上3回にわたって次世代SFAの考察を行ってきた。過去のSFAの失敗を振り返り、新たなマネジメントスタイルであるセルフマネジメントの考え方を共有し、そして次世代SFAの必要要件を推察した。本稿で紹介した内容が今後の営業高度化、効率化の一助となれば幸いである。
出展:医薬経済3.15 2009 (第3回)
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