BPO連載
「グローバル展開に成功する企業、失敗する企業
~第1回日本企業のグローバル展開を阻む落とし穴とは?~」
第1回 日本企業のグローバル展開を阻む落とし穴とは?
2008年の金融危機から数年が経過し、世界経済は回復基調にあります。これを牽引しているのは、新興国の力強い発展です。IMFによると、2010年に3.9%成長が予測される世界経済の中で、新興国・途上国は6.0%の成長が見込まれています。

「新興国の勢いは今後も続きます。とりわけ中国とインドの成長力は強く、2025年には米国とともに世界の三大経済大国になると言われています。このような新しい経済環境に対して、日本企業はいかに向き合うべきでしょうか。アクセンチュアの調査によれば、日本企業の経営者の多くが『いままでのオペレーション・モデルではいけない』と感じています」
アクセンチュア 経営コンサルティング本部 戦略グループ エグゼクティブ・パートナーの内田亮は、そう語ります。
では、「いままでのオペレーション・モデル」とはどのようなものなのでしょうか。グローバルに展開する日本企業においては、「現地に任せる」というスタイルが主流でした。現地に派遣した日本人の社長が、現地の状況を見ながらローカル最適の組織や仕組みを運営するという形態です。
つまり、海外展開する日本企業の多くは、「ローカル組織の集合体」だったと言えるでしょう。各国の現地法人は独自に組織体制を組み替え、ITを構築してきました。例えば、日本本社と米国子会社、欧州子会社で別々のERPパッケージが使われているというケースは珍しくありません。業務プロセスも国ごとに異なり、標準化はあまり進んでいませんでした。
欧米中心のグローバル展開の時代には、こうしたローカル最適のアプローチがマッチしていた面もあります。欧州と米国ほどの市場であれば、それぞれ管理部門を含めてフルセットの機能を現地法人に置けるだけの規模があります。各市場で最適な仕組みをつくり、ローカルでの収益を高めるというアプローチも有効でした。しかし、現在では状況は大きく変わってきています。
ローカル最適からグローバル最適へ
かつて“製品供給基地” だった新興国は、日本企業の重要なマーケットとして注目されています。ただ、消費市場として台頭しているとはいえ、新興国を個別に見ると、その規模は欧米に比べるとはるかに小さいのが現状です。例えば、BRICs諸国にそれぞれバックオフィス機能を置いて、そのコストを十分吸収できる企業は多くはないでしょう。
バリューチェーンでも同様のことが言えます。以前は、各国内で完結するサプライチェーンを考えることもできましたが、いまではモノの流れは非常に複雑です。中国とインドネシアのサプライヤーから運んだ部品をタイの工場で組み立て、それを世界中に輸出するといったモデルは当たり前になりました。そんな中で、多くの日本企業はグローバルサプライチェーンの最適化に取り組んでいます。
ITにも、ローカル最適の課題があります。各国ごとにシステムを構築・運用していたのでは、そのコストは増大するばかり。ローカル単位のサイロ型システムを、いかにグローバル最適化するかは重要なテーマでしょう。
また、リージョン体制の現状を見直す必要に迫られている企業も少なくありません。例えば、国内事業と海外事業というようにグローバル市場を2分割してマネジメントしている企業もあれば、日米欧とその他市場の4極体制を敷いている企業もあります。それぞれの企業によって、望ましいリージョン体制は何通りもあるでしょう。
企業が最適のリージョン体制を選択するためには、グローバル市場の状況を見極める必要があります。新興国市場が勃興しつつある現在、既存のリージョン体制が企業戦略と整合しているかどうか。言い換えれば、組織のストラクチャーを維持すべきか、それとも再構築すべきか。これも、グローバルなオペレーション・モデルを考える際には避けては通れない問いです。
先に内田が言及したように、こうした現状に対して日本企業の経営者は危機意識を持っています。同じアクセンチュアの調査では、次のような結果が示されました。
- 経営陣の47%は「自社が販売する商品やサービスのコストが上がったのは、不十分なグローバル・オペレーションの結果」と感じています。
- 経営陣の31%が「不十分なグローバル・オペレーション戦略の結果、ターゲットとする新市場において成長を達成できなかった」と考えています。
- アジア太平洋地域の重役210名のうち61%は「リーマンショク後に実施した自分たちのコスト削減プログラムからは、短期的な効果の一部しか得られなかった」と認めています。
では、こうした課題をどのように解決へと導けばよいのでしょうか。「日本企業が得意な継続的な改善は有効です。ただ、それだけでは十分とは言えません。継続的改善と全社的な構造改革の両輪を回すことが重要です」と内田は言います。この両輪を駆動させることで、グローバルなオペレーショナル・エクセレンスへの道を走ることができます。次回は、そのための具体的なアプローチについて考えてみましょう。
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