日本国内におけるe-HR事業化に向けて~健診・保健指導情報管理基盤としての活用
官公庁本部 パートナー 井形 繁雄
これまで、当コラムの弊社担当回において3度にわたりe-HR(エレクトロニック・ヘルスレコード)の海外諸国の動向、共通する戦略アプローチ、情報技術活用の方向性について述べてきた。 今回はより具体的かつ現実的な日本国内におけるe-HR事業化の例を考えてみたい。
[e-HR事業化の視点] 事業化に向けて持つべき視点を5つあげる。 - 情報基盤づくりを行う地域の単位(エリア)の識別。
- 情報化重点テーマとその当事者(プレイヤー)の識別。
- プレイヤーを跨るワークフロー、提供サービス、データ連携手法を検討。あわせて、補助金なしで事業として継続するための原資創出に向けた「ムダの削減」や「効率化」のポイント識別。
- 上記を支援するIT基盤の概念設計と導入計画策定。
- 当該計画/構想を実現するための変革コミュニケーションプログラム立案。
[具体的取組の例] e-HRは、広義には生涯にわたる健康情報全体を視野に入れた検討がなされるが、ここでは「予防にかかわる健診・保健指導情報」にフォーカスして考える。 つまり、将来的には、取り扱う対象データを生涯健康情報全体へ拡張することを考慮するが、まずは、厚生労働省が推進されている政策(例:標準的健診・保健指導プログラムの導入)に沿い、対象領域とプレイヤー(保険者中心)を限定し、タイムリミットを設定して行う現実的アプローチとする。 以下に、上記事業化の視点を踏まえた取り組みの考慮事項を述べる。 - 都道府県単位で都道府県がイニシアチブをとる基盤づくり。
平成20年4月から実施される上記プログラム(特定健診・特定保険指導実施)においては、保険者に健診・指導の実施義務が課せられ、健診結果の保管管理義務も生ずる。また、都道府県が保険者に対し健診実施の状況を監督し、その効果に関する評価・分析・とりまとめを行う責任者となる。都道府県単位で、都道府県のイニシアチブにてデータ管理基盤の用意に着手されることが望まれる。
- 健診結果等のデータ管理業務のBPO(ビジネスプロセスアウトソーソング)。
補助金による実証実験と異なり、基盤運営はデータ管理サービスと一体となった事業としての継続が前提である。原資創出のためには、現状の保険者によるデータ管理業務のまとまった単位(広域保険者連合など)でのBPO化が有効である可能性があり十分な検討行うことが望まれる。
- 都道府県が政策進捗を検証するための統合データベース用意。
レセプト情報と健診・保健指導情報をあわせて管理し各種用途に応じたデータ活用・分析が可能な統合データベースが必要となる。都道府県は、これを活用し、予防効果・医療費適正化を見据えた検証を行い国に報告する。
- 住民および各プレイヤーへ情報提供するポータル機能を用意。
強固なセキュリティ施策整備の上で、住民(組合員・被扶養者)が自らの健診・保健指導結果を参照できることはもちろん、医師・医療機関、保健師等より必要に応じた情報参照を可能とする仕組みとすることが望まれる。 各健診機関からの健診結果の標準化指導と、XML/HL7によるデータ取り込みは必須となる。 また、必要に応じて、健診・指導結果を、慢性疾患向け専門医療機関(糖尿病専門病院など)とシェアする地域連携パスの検討を行うことが考えられる。
- コミュニケーションプログラム策定と関係者啓蒙。
国の施策の方向性の理解と、それを都道府県単位で事業化していく必要性を関係プレイヤーによく理解いただく啓蒙プログラムが必要。平成20年4月まで2年を切る。基盤構築と運用準備は来年度中に行われるべきで予算化のタイムリミットは近い。
自治体の健康増進政策に対し、住民から厳しい目で見守られる時代である。e-HR基盤を住民から見てわかりやくすく、かつ国の方向性とマッチした施策とするために、まずは予防に関する健診・保健指導情報管理から取り組むことは現実的である。 (株)日本医療企画 発行 「Phase3」 2006年10月号より転載 トップへ
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